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本気になった天才の所業【書籍化作品】  作者: 方丈陽田
七章:破滅神話 前編
290/417

――――後に、【アハトマジノ大戦争】と呼ばれ

タイトル「SF級惑星破壊砲 vs ムカデ砲式エターナルフォースブリザード」で迷ってみたり。


一応、シリアスシーンだから、こっちに。



作詩の才能が欲しい。

何でこんな面倒な発動手順にしたんだよ。(自業自得)


どうでも良い事ですが、某死神の氷雪系最強さんの名前って、八寒地獄の名前から来てたんですね。

八寒地獄の最下層の名前は、「大紅蓮地獄」と言うそうです。

なんとかポエムを捻り出そうと調べてて初めて知りました。

『――――謳え、謳え。旧の神話』


 朗々と、美雲の声が妖しく広がった。

 光も音も、何もかもが凍り付いた暗く静かな世界において、それは何処までも響き渡る。


『――――第八の地平線。遥か最果てに在りし紅き氷獄。咲かせ命の蓮華。身を裂きて、血に染め上げよ』


 光凍る暗き世界に、色が染められる。

 深紅。何処までも不気味な、血の色。

 それが空からぶちまけられ、【白銀世界】を侵食した。


『――――現に在ってはならぬ地平。彼方に消え行く幻想の境界』


 冷気、凍気、寒気。

 漏れ出すは、地獄より吹き荒れし夢幻の吹雪。

 この世には有り得ない筈の何か。

 だから。


『――――消えよ、消えよ。旧の神話』


 掻き消さねばならない。

 封じねばならない。


『――――封絶結界、【第八地獄門】』


 紅き世界が閉ざされる。白く暗い世界と共に。その原因を道連れに。


【――ぬ、ぐっ!?】


 アハトは、自身を縛り付ける力場を認識する。

 まるで、そうまるで全身が凍り付いてしまったかのように、動きを止められてしまった。


「く、くくくっ、足の引っ張り合いは、私も得意なのよ……!」


 戦闘を続けている内に、充分なデータは観測できていた。

 だからこそ、美雲は十全な形でアハトを封じる事に成功する。


 しかし、である。


 お互いのエネルギー量は、まさに天と地ほども差がある。


 パキン、パキン、と、少しずつ美雲の封絶結界が食い破られ、崩壊していく音が聞こえた。


 もはや、手段を選べる段階ではない。


「悪いわね、ノエリアさん。本当は使う気はなかったんだけど……そうも言ってられないみたい」


 刹那が、せっかく作ったのだから、と何かと使わせたがる、四式の最終兵器。

 どう好意的に考えても、大気圏内で使用する類いではないそれを、美雲は起動させた。


 四式の巨体が、纏わり付いた氷を割り砕きながら稼働する。


【白銀世界】は、アハトと共に一時的に封じ込めてある。

 そのおかげで、影響が皆無とまではいかないが、有り余るエネルギー量を最大展開すればなんとか動く事ができた。


 封絶結界の中から、アハトは空に浮かぶ巨城が変形する様を見た。


 八枚の黒剣翼が咲き誇る花弁のように展開する。

 配置に付いたそれらは、装甲を開いて内部機構を露にすると、魔力の光を線にして放つ。

 光の線は黒剣翼の間で行き交い、繋がれ、空に巨大な紋様を描き出していた。


 魔方陣。と、直感する。

 アハトの知らない知識体系で描かれている為に、それがどんな物なのかまでは分からないが、それでもそれが何らかの魔法を放つ為の物だと分かった。


 続けて、本体も展開した。

 まず、針山のように装着されていた砲塔群がパージされる。

 スッキリとした白い円筒のみとなったそれが、縦に割れて広がる。

 幾つもの断片となったパーツが、空に浮かんだ。

 ビーム誘導されたパーツたちは、ゆっくりと動いて定められた配置へと着く。


 砲塔だ。

 それも、巨大であった城塞を丸ごと使用した、尋常ならざる巨砲である。


 巨砲の奥底には、太陽が置かれていた。

 莫大なエネルギーを孕み、構成する部品が耐えきれずに融解して、今にも爆裂しような熱エネルギーの塊がある。


 そして、その照準は、アハトへと真っ直ぐに向けられていた。


 分かりきっていた事だが、諦めるつもりは毛頭無く、逃げる気も無いらしい。


 だから、アハトも迎え撃つ。


 封絶結界により、彼も大きく動く事は出来ない。

 だが、それは向こうも同じこと。


 ならば、真正面から貫いてくれる。


 身動ぎしたアハトは、その長大な身体を真っ直ぐに整える。

 一本の針、あるいは槍のようになった彼の背から、大量の巨砲が崩れて落ちた。


 余計な力を割く必要はない。

 向こうも動けないのだから、一点集中で撃ち抜くのみ。


 凍れ、氷れ、遍く全てに停滞を与えよ。


 アハトの体内に、氷結の魔力が凝縮されていく。


 それは、絶対零度にして永久凍土へと至る力。

 完全なる停滞をもたらす神威の顕現である。


 対するは、星穿つ文明の結晶。


「――キャノンバレル、全展開(フルオープン)


 解き放つは、《砕月》ではない。

 四式は、マジノラインという兵器の完成形に近い設計をされている。

【凡才の巨人】というコンセプトに忠実に。


 だから、刹那という唯一無二の存在を必要とする《砕月》は、搭載されていない。


 もっと相応しい物が、組み込まれているのだ。


 周囲に展開した立体魔方陣から、光子部品が成型されて射出される。

 展開した四式のパーツだけでは足りない、砲身の穴を補って砲塔の姿を完成させていく。


「耐熱装甲、足りなかったんだね……」

「まぁ、それを補う知恵があるのだから良いではないかね」


 二百年前の地球から拝借した特殊合金、太陽の中に放り込んでさえ長き時を耐え抜く驚異の耐久力を持つそれを、内部には仕込んであった。

 それだけの耐熱性が無ければ、砲身足り得ないのだ。


 しかし、足りない。

 長大な砲身を形成するには、地球上にあった全ての合金を強奪しても足りなかった。


 故に、別の力で補う。


 それは、魔術の力。

 二百年の時で新たに得られたそれは、一時的な砲身を形作るに充分な研鑽を重ねられてきた。


「全出力、集中――」


 四式の全体から、光が消えていく。

 最後の砲撃以外の、全ての機能が落とされているのだ。


 残されるは、華開いた魔方陣と造られた巨大な砲塔の輝き、そして巨砲の底に据えられた尋常ならざる光熱のみ。


「臨界点突破。《マテリアル・リアクター》、暴走開始。

 ――さぁ、破滅の時よ」


 明かりの落ちた暗い艦橋の中で、美雲は最後の発射スイッチへと手を掛けた。

 と、その前に、彼女は刹那へと一つだけ文句を投げる。


「弟君、ネーミングが安直だわ」

「分かりやすくて良いと思うのだが……」


 何はともあれ、アハトの方も準備が出来たようである。


「凡才の意地、受け止めなさい」


 美雲は、スイッチを押し込んだ。


「《ステラ・ブレイク・キャノン》、発射――――!!」


 地球に止めを刺したオーバーテクノロジー、《マテリアル・リアクター》。

 その全ての熱量を一点に集中して解き放つという、ただそれだけの兵器。


 充分だ。

 それだけで、世界を、星を滅ぼすには充分過ぎるエネルギーとなる。


 数多の只人が、幾星霜という時間と億千万の命を捧げて作り上げられた叡知の炎――星を穿つ滅亡の炎が、今、解き放たれた。


~~~~~~~~~~


 放たれる滅炎に応じるは、停滞の凍気。


【――諸共に打ち砕いてくれよう】


 肉体を砲身に、極限まで圧縮された氷結の魔力が放たれる。


 最後端に集められた魔力が、加速して動き始めた。


 同時に、無数にある節足が順に炸裂していく。


 足からの爆圧は、体内の砲身へと押し込まれ、通過する魔力砲弾へと更なる加速を与える。


 多段加速砲。


 足の数だけの加速を与えられた砲弾は、第一宇宙速度を越えて、第二、遂には第三宇宙速度を上回る。


 衝撃波を纏い、発生したそれを置き去りにするそれは、氷砕の災害に他ならない。

 何物をも瞬時に凍てつかせる冷気は、物質に流動する事を許さず、そして直後に来る衝撃波が凍り付いた何もかもを粉砕してしまうのだから。


【――砕け散れ】


 端的な言葉と同時に、アハトの口から絶対零度の氷塊砲弾が高速で放たれた。


 それは真っ直ぐに天へと飛翔し。


 そして、天地の狭間にて、滅亡の炎と激突するのだった。

ようやく、プロローグ……の舞台が出来上がる!

舞台かよって。


この爆心地が、プロローグにて仲の良い()多種族混成パーティが突入していた魔物領域の場所となります。




書いててセルフツッコミを入れるのだが、停滞エネルギーを加速させるって意味分かんない。

それ、停滞エネルギーの純度下がってない? とかって。


ま、まぁ、ええんや。

なんとなく凄そうなら、ノリと勢いでスルーしてしまえばええねん。

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