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本気になった天才の所業【書籍化作品】  作者: 方丈陽田
七章:破滅神話 前編
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飛行機事故=大惨事

 その光景に、ノエリアの人々は呆然とせずにはいられなかった。


 機械の塊が空高くから勢い良く落下し、何のクッションもなく固い大地に叩き付けられる。

 その結果として、大破し、内部機構に火が着いて盛大に炎上した。


 この様な光景は、地球人類にとっては容易に想像できる範疇であろう。

 飛行機の事故がその典型であり、実際に見る事は稀であろうが、生きていれば何処かしらでその現場映像や痕跡、あるいは人伝の噂であっても、どうなるのかという事を一回は耳にする筈だ。


 しかし、それは機械文明が身近に存在する者たちの常識でしかない。


 機械文明を持たないノエリアの住民にとっては、ただ金属の塊が降ってきただけの事なのだ。


 言ってしまえば、剣やら盾やら、それらを地面に勢い良く叩き付けた様を、規模を大きくしただけに過ぎない。


 だから、衝撃にひしゃげて大破するまではともかくとして、爆発炎上を伴う事は、想像の範囲外の事だった。

 しかも、大した魔力を内蔵していた訳でもないのだから、余計に想像できない事である。


「っ……! 魔動障壁を稼働させろ! 突っ込んでくるぞ!」


 地面にぶつかって、それで終わりではない。


 燃える塊は、慣性に従って転がり、僅かな部品と火の粉――と言うには些か派手だが――を撒き散らしながら、しかしその大部分の質量を保ったまま、都市外壁に向かってきていた。


 一足早く我に返った警備隊の者が、警戒の声を飛ばせば、それに応じて現実に戻ってくる者が増える。

 彼らは、日頃の訓練の成果を発揮すべく走り回り、都市防壁に備えられた魔力式障壁機構の起動スイッチを入れた。


「間に合え間に合え、間に合えっ……!」


 スイッチを入れれば、瞬時に障壁が張られる訳ではない。


 魔力タンクから非常用魔力が放出され、防壁に仕込まれた各種魔法陣へと供給、それらが連結稼働する事で、ようやく魔動障壁となるのだ。

 緊急用の装置であり、その起動は一般的に流通している物よりも、ずっと速い。


 だが、呆然としていた時間と、何よりも危険が迫りくる速度があまりにも速過ぎる。


 タイミングとして、ギリギリだと見る。


 故に、祈るような気持ちでその瞬間を待つ。


 激震。


 結果は、僅かに、ほんの一歩だけ、危険の方が速かった。


 魔動障壁が起動する一瞬前に、一番手前を転がっていた金属塊が都市防壁へと衝突し、大きなひび割れを入れた。


 その直後に、魔動障壁が起動し、都市を守る強固な壁が築かれる。


「っ!? まずい!?」


 しかし、そこで更なる想定外が発生した。


 丁度、現場の、接触する箇所の魔動障壁だけが、不具合を起こして出力低下していたのだ。

 手順を間違った訳でも、日頃の整備を疎かにしていたのでもない。


 原因は、最初の一発だ。


 それが都市防壁の奥深くにまでひびを入れた事で、内部に仕込まれている魔法陣の幾らかがエラーを吐き出しているのだ。


 そうした時の為の非常用魔法陣も、あるにはある。


 だが、今から起動させたのでは、もはや間に合わない。


 警備隊たちは、異常事態にすぐに対処すべく動き出すが、間近に迫った脅威は、その猶予をくれなかった。


 再度の激震。


 二発目の金属塊が激突して、更に大きくひびを刻み込み、


「あぁ~~~~れぇ~~~~」


 比べると一際小さな人影が、間抜けな声を上げながら最後に衝突する。


 それが決定打となった。

 たかが一人の人間大の存在だが、その速度はバカに出来ないものであり、何よりもそれが身に宿す硬度故に、都市防壁への痛打となり得ていたのだ。


 ひび割れていた外壁が、僅か一角とはいえ崩れてしまう。


 霊鬼種との戦争が一応は沈静化して以降、初めての惨事であった。


 だが、安堵したのも束の間、それで終わりではない。


 動力である電気の外部供給が途絶えた時に備えて、エンジンの中にはある程度の燃料と発電機が仕込まれている。

 その燃料に、遂に引火したのだ。

 宇宙用の、大出力を賄う高性能燃料である。

 それが引火した際の爆発力は、推して知るべし。


 大爆発が起きる。


 ちょっとシャレにならないレベルの黒煙が高く立ち上ぼり、衝撃波が周囲を席巻していく。


 大地が揺れて、大気が震える。


 その異常事態は、国境を挟んだ霊鬼種側からも観測できたのだとか。


 当然、それだけの威力に晒されて、当の都市が無事に済む筈もない。


 都市外壁は、一角と言うにはあまりにも大き過ぎる範囲で崩れ去り、その影響で魔動障壁も機能を喪失。

 守るための鎧を失った事で、被害は内部にまで及び、都市の約五分の一が機能を喪失した。


「…………おいおいおい、マジか。

 よくやった……じゃねぇ。

 えぇっと……よくやった」


 下手人が墜落した時点でブレーキをかけて停止していたソゴウは、そのあまりの惨状に、ついつい本音を漏らしてしまう。


 霊鬼種と獣魔種は仲が悪いのだ。

 だから、相手が勝手にダメージを受けてくれたのなら、割りと手放しに喜んでしまう所がある。


 常識として不謹慎だと良識が言う。

 一方で、まぁ天災ならともかく、人災だしな、と言い訳もする。


 しかも、霊鬼種には何の落ち度も無いのだから、やはり諸手を上げて喜ぶしかない。


「……あぁー、ひとまず救助活動に手を貸すかね」


 これで言い訳も完璧。

 完全に無関係な良い人である。


 そう自分に納得させながら、彼は何食わぬ顔で事故現場へと貨物列車を寄せるのであった。

入れようと思ってたけど、いまいちねじ込めなくて没になった刹那と俊哉の会話です。

一応、この作品って元々は学園ものなんですよ?

今じゃ宇宙に飛び立ってるけど。




トッシー「そういや、俺たちが消えてから時間が経ってんだよな?」

せっちゃん「そうだね」

トッシー「なんか、事件とかあった? いや、一応、魔王じゃん? 責任とか、感じちゃう訳よ」

せっちゃん「安心したまえ。地球はいつもの通り、慌ただしくも平穏だよ」

トッシー「……そっか。安心」

せっちゃん「まぁ、強いて言うのならば、高天原で血の雨が降ったくらいだろうね」

トッシー「いや、それはいつもの事だし。あー、でも原因次第でもあるか。テロとかだったら問題だよな」

せっちゃん「原因は、体育祭だとも」

トッシー「あっ、じゃあやっぱりいつも通りだな。通常運行だぜ」

せっちゃん「ふっふっふっ、そう安心していられるのも今の内だよ」

トッシー「んだ? なんかあったのか?」

せっちゃん「うむ。なんと、今年の体育祭は、初の生存者ゼロを達成したのだとも!」

トッシー「うお!? マジかよ!? つーか、何でだよ!? 去年がはっちゃけ過ぎて閉会式を生き残ったのが一桁だったから、今年はマイルドにするって話だったじゃねぇか!?」

せっちゃん「うむ。その通り。去年は豪華にしようと種目も多かったからね。故に、脱落者多数だったのだと反省し、なんと今年は三種目しか行われなかった」

トッシー「量より質か」

せっちゃん「その通り。第一種目に騎馬戦を置き……」

トッシー「いきなりビッグタイトルだな」

せっちゃん「そして、続けて銃撃戦と打撃戦を行った」

トッシー「……いや、悪質だったな。高天原らしいけども」

せっちゃん「企画段階では、第四種目に狙撃戦も入れるつもりだったらしいのだが、それは流石に死者がヤバいと気付いて泣く泣く取り止めたという話だね。あれは、ヘッドショットが基本だから仕方ない」

トッシー「意外と懸命な判断が出来るじゃねぇか。まぁ、それでも生存者がいないんだが。……何があった? あの、矢鱈としぶとい高天原の学生を全滅させるなんて」

せっちゃん「まぁ、色々とあったがね。騎馬戦ではリネット嬢が盛大に蹂躙して一気に生存者が減ったりもしたが……」

トッシー「あの人も容赦ねぇなぁー」

せっちゃん「とはいえ、決定打は閉会式だろうね。その時点で生存者は三桁はいたのだが、学園長が生き残りに止めを刺した」

トッシー「……何したん?」

せっちゃん「うむ。閉会の言葉を、一週間ぶっ続けで行ってね。万全な状態なら耐えられたのだろうが、競技で消耗している状態では炎天下に放置されるのは堪えたようだ。一人、また一人と熱中症やら何やらで倒れていった」

トッシー「学長先生も大概に酷いなぁー」

せっちゃん「その結果、閉会式を乗り越え、無事に体育祭を突破できた者は一人もいなかった、という訳だよ。ちなみに、一番の重傷者は当の学園長だ。もう老い先短い老体だというのに、若者に張り合って無茶をするから。一ヶ月ほど、生死の境を彷徨ったらしい」

トッシー「あの先生、本当にアホなんじゃねぇの? いや、高天原にまともな奴なんてほとんどいないけども」




閑話とかで、体育祭とか文化祭とか書きたいですねぇ。

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