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本気になった天才の所業【書籍化作品】  作者: 方丈陽田
七章:破滅神話 前編
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怪猫の怨み節

唐突に思い付いたので、舞台が地上に移る前に挟み込んでみたり。

いや、本当に思い付きで入れる予定なんて無かったんですけどね。


思い付きだから、ウルトラ短いです。

 あぁー、もぉー、こやつらはどうしてくれようかの。


 やり直しをさせてくれる機会を持ってきてくれた事は、素直に感謝したい。


 万全な状態ならば、色々と面倒な制約はあるものの、時間と手間を惜しまなければ時の遡行を行う事は出来たじゃろう。


 しかし、非常に残念な事に我の力は大きく削れておる。

 万全には程遠く、本体たる星自体が陥落しておるせいで、回復する目処も立たない。


 故に、諦めていた選択肢ではあるのじゃが、ふとその機会が巡ってきた事は、心から喜ばしい出来事であり、それをもたらしたこやつらには、感謝してもしきれない程の恩があると言えた。


 連中の目的が予定調和の歴史を紡ぐ事である以上、根本的な変革は許されないのじゃが、それでも何も救えなかった過去を、僅かばかりの救いある過去に変える事は出来る。

 何の気紛れか、それだけの手段を用意してくれたのじゃ。


 それは、どれ程に我の心を慰めてくれるであろうか。


 嘘偽りなく、心から感謝しておるのじゃ。


 じゃと言うのに、素直に感謝させてくれないのは、どういう了見なのじゃろうか。

 いや、まぁ、そういう芸風の連中という事は、痛い程に理解はしておるのじゃがなぁ。


 何故に、無用に犠牲を出そうとするのじゃ、こやつらは。

 人の心という物を持っておらぬのじゃろうか。


 ……まぁ、持っておらんのじゃろうなぁ。


 我の知っておる人間種とは程遠い物なぁ。

 いや、それを言い出したら、こやつらに限らず地球の人間どもが全て当てはまってしまうのじゃが。

 上から目線で押さえ付けてくる者に、中指立てて笑顔で喧嘩を売りに行くような精神性は、ノエリアの人間種には無いものじゃからなぁ。


 もしも、地球人類をノエリアに持ってきたらどうなるじゃろうかの。


 …………まず間違いなく大戦争が起きそうじゃの。


 躊躇なく宣戦布告するし、なんなら悪知恵働かせて容易く下していくじゃろうな。

 地球人類ども、意味分からんのじゃもの。

 あやつら、悪意と害意の権化なんじゃなかろうか。


 我ら精霊種とあやつら天竜種は、まぁ俗世間から外れておる故に、ほとんど関わらないじゃろうが、この二種を除く十種の頂点には立ちそうじゃの。


 おほん。


 ともあれ、その人類史の結晶とも言える二人には、感謝しつつもいまいち素直に感謝できない複雑な感情を持っておるのじゃ。


 特に、刹那の輩には、のぅ。


 当時は気付かなんじゃったし、最近まで考えもした事も無かったのじゃが、あの時、我の邪魔してくれよったのは、間違いなくこやつなんじゃよなぁ。

 おかげで色々と後手に回る羽目にもなったしの。


 つい最近になるまで想像だにしておらなんじゃったがの。


 当然じゃろう。

 見た事もない怪生物が、まさか人間種じゃとは思うまい。

 しかも、それが人間種しかおらぬ地球からの刺客とも想像する筈もあるまいて。


 目の前で、鉄身から脱皮するように新たな身体へと変わっていく生き物が、仮にも人間だとは誕生から今までを知っている現在でも、信じられない気持ちなのじゃからの。


 ……………………。


 ……嗚呼、確かにこんな姿じゃったな。

 あの時、我を殴って颯爽と去っていった弩畜生は。

 あの時は非常時故にスルーしてしまっておったが、今にして見ると、何処までも()()()()()()()外見をしているのじゃ。

 取り敢えず、あの時の借りを今こそ返しても良いのではなかろうかの。


 まぁ、あれじゃ。

 言える事はただ一つじゃの。


「これで勝ったと思うではないのじゃぞッ!!」

「バーカ、何度でもかかってきやがれ。返り討ちにしてやるよ」


 焼き猫にされて羽衣で簀巻きにされた我は、感謝の代わりに負け惜しみを叫ぶのみであった。

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