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時を越えて

若干、R18G、かも?


直接的な描写や具体的な描写はしていないのですが、想像力次第では……。

 デブリで覆い尽くさんばかりの、衛星軌道上。

 空間――、否、時空を引き裂いて、遂にそれが完全に姿を現した。


 巨大。

 まさに、その一言に尽きる。


 全長60km弱。

 円筒形をしており、直径でさえも5kmに届くだろう。

 二つの円筒を連結した構造をしており、ひたすらに巨大なヌンチャクのようにも見えなくもない。

 黄金色の装甲をしており、全体にエネルギーの流れを示すように白く輝く流線が走っている。


 それが、各所から爆発を発生させながら、出現した。


「時空間航行、終了ー。

 表層装甲各部で融合爆発が起きてるけど、まぁ大した事ではないわね。

 基幹部にまでは届いてないわ」


 けたたましいアラートの響く操舵ブリッジにて、美雲はのんびりと報告する。


 空間転移の場合、転移先の空間状態には気を付けねばならない。

 見た目には穴を開けてトンネルでも潜っているように見えるだろうが、実際には、言葉通りに〝転移〟なのだ。

 何らかの物質が転移先に存在していれば、座標が重なって融合現象が発生してしまう。


 今回は、事前に小規模な穴を開けて、デブリを吸い取って掃除してから転移した。

 だが、それでも元々の量が多かった事と、時空間航行が初めての試みである事から、用意が不充分になってしまった。


 結果、装甲部にて融合爆発が生じて、現在のアラートに繋がってしまっている。


「ふっ、上々な結果だね。

 この程度なら掠り傷に等しい。

 流石は私が造っただけの事はある」


 無事ではないからアラートが鳴っているのだが、刹那は気にせずに自賛した。


 巨大構造物――マジノライン終式は、生存性のみを追求した代物である。

 攻撃能力は皆無に等しいが、代わりに防御性能と耐久力は頭がおかしいレベルとなっている。

 少し表面に穴が空いたくらいでは、ビクともしないのだ。


 とはいえ、本来であれば、アラートが鳴っている現状通り、無傷で無事とは言えない状態であっただろう。

 表層近くとはいえ施設も配置されており、それらを管理している人員だっていた筈なのだ。

 ちゃんとした運用をしていれば、その者たちが犠牲となっていたに違いない。


 尤も、今は〝ちゃんと〟運用していないので問題ないのだが。


 これ程に巨大な代物であるが、動かしているのは実は雷裂三兄妹のみなのだ。

 刹那の念力を四方八方に伸ばす事で強引に。


 何故、そんな無茶な事をしているのかと言えば、誰も付いて来なかった為である。


 ぶっつけ本番で時空間航行?

 事故る未来しか見えないから嫌だ。


 端的に言えばそんな理由で、誰もが乗船を拒否してしまったのである。

 おかげでオートメーション含めても満足に動かせないので、刹那の能力によって力業で解決している次第だ。


 現在は、美影が飛び出していってしまったので、更に人員が不足した訳だが、ひとまずは姿勢安定と防御に徹していれば良いので、然程の問題はない。


 さっきからミサイルやらレーザーやらがバカスカ飛んできているし。


「シールド展開。

 空間断層壁、出力20%にて安定稼働。

 ……見た限り、威力は高いけど空間干渉系の攻撃はないみたいね。

 これなら充分に耐えられるわ」


 見た目通りに素早い機動など出来ないマジノラインである為、差し向けられた攻撃の全てを受けるが、その全てを空間を断絶させる事でやり過ごす。


「全天走査。ピンを打つわよ」

「うむ、派手に打ちたまえ」


 あらゆるレーダー・センサーを起動させて、全力で周辺を走査する。

 単なるレーダー波であり、間違っても攻撃ではないのだが、周辺にあった廉価な人工衛星は破損して地上に落下していった。


「あらら、ごめんなさいね~」


 出力がバカみたいに高いのである。

 巨体を十全に動かす為に、エネルギー炉からエンジンまで、採算性を度外視したハイエンド品を積み込んでいる。

 そこから出力される力は、ただのレーダー波でさえも凶器となる程であった。

 実は、大気圏をも貫いて直下の地上にも脅威を撒き散らす程の出力であったのだが、そこには雷裂の者たちと俊哉たちしかいなかった為、被害者側も含めて誰も気にしていない。


 意図せずに生んでしまった結果に、適当に謝りながら美雲は映し出された画像に眉をひそめた。


「……うーん、やっぱりジャミングが凄いわねぇ。

 科学式探査は、どんな物でもほぼ真っ黒だわ」


 ノイズばかりでほとんど何も見えない。

 流石は科学全盛の時代であり、同時に凄惨な戦争の時代と言った所だろう。


「でも、魔術式は綺麗なものね」


 一方で、魔術による探査結果は、非常に鮮明な画像を見せてくれる。

 当然と言えば当然だが、この時代には魔力のまの字も無いので、ノイズとなる要素がまるで存在しないのである。


「ふむふむ、いや面白い時代だね。私は好きだよ」

「そう? 面倒だと思うけど」

「いやいや、ここには喰うか喰われるか、弱肉強食の掟しか存在しない。

 実にシンプルで素晴らしい。

 フフフッ、廃棄領域にいた時代を思い出すね」


 何処まで行っても本質は野生児である刹那は、凄惨な時代の方が生きやすいと語る。

 彼にとっては、暴力で解決できない社会の方が息苦しいのだろう。

 それでも人に紛れるのは、愛する姉妹がいるからというだけに過ぎなかった。


「……ふぅん、そう」


 納得したと頷いた美雲は、次いでジットリとした責める様な視線をくれる。


「ところで、美影ちゃんの言ってるの、何の事? ねぇ、弟君?」

「ああ、それかね」


 刹那は、特に隠す事ではないと白状した。


「先日の私の誕生日にな、愚妹が全裸にリボンのみを巻いた姿で私の部屋に侵入してきてね。

 プレゼントは己だと言ってきたのだよ」

「で、貰ったわけ?」

「うむ。

 据え膳食わぬは男の恥、とも言うし、何よりも女性に恥をかかせるべきではないと美味しく戴いた。

 食欲的意味合いで」


 比喩でも冗談でもなく、文字通りの意味で骨の髄までしゃぶり尽くしたのである。


「あれは素晴らしい時間だった。

 愚妹の足先から頭の天辺まで、余すこと無く味わえたとも。

 いやいや、あれ程に贅沢な食事は久しく味わっていないね。

 彼女と廃棄領域で出会った時以来だろうか」

「…………はぁ、何処から矯正したものかしらね」


 至福だったと言う刹那に、美雲は頭痛がするとばかりに眉間に皺を寄せていた。

 その様子に気付いた刹那は、何が悪かったのか、と考えてすぐに思い至る。


「安心したまえ、賢姉様」

「何を安心しろと?」

「愚妹の貞操は無事だ。

 全身の外側と言わず内側に至るまでしっかりじっくりねっとり味わい尽くしたが、唯一、膣や子宮、卵巣といった生殖器官には触れていない。

 彼女の純潔は守られている」

「…………そーゆー事じゃないのよねー」

「違うのかね?」


 はて、ならば何が、と再度の思考を経て、彼は答えを出した。


「ああ! つまり、妹ばかりがずるいという!

 安心したまえ、賢姉様!

 貴女が望むのならば私はすぐにでも……!」


 笑顔で振り返った先には、圧縮状態から展開された銃口があった。


 銃声。


 一切の躊躇無く引き金は引かれ、飛び出した弾丸は、見事に刹那の額に穴を空けた。


「バカな事を言わないで? 勝手に食べたら嫌いになるわよ?」

「それは困る。自重しよう。

 しかし、私の口と胃袋は常に空いている!

 その気になったならばいつでも飛び込んで――!」

「い・き・ま・せ・ん」


 再度の銃撃。

 今度は心臓に穴を空けた所で、美雲は嘆息してライフル型デバイスを降ろした。


「全くもう」

「フフッ、賢姉様はシャイだね」

「……もう一発、行っとく?」

「賢姉様にならば喜んで!」

「これだからなぁー。

 取りあえず、みっともないから額に絆創膏でも貼ってなさい。

 心臓は服で隠れるから良いとして」

「おっと、これはお恥ずかしい所を」


 溢れる血と脳を拭って、刹那はペタリと差し出された絆創膏を貼り付けた。


(……これでも純愛なのよねー、本人たちは)


 盛大に性癖が歪んではいるのだが、本人たちは相思相愛でお互いを尊重し、清いお付き合いをしているつもりなのだ。

 現実として、時折、おかしな性癖と行動が差し込まれる以外は、確かにその通りである。


 美雲は、吐息する。

 個人の好き好きであるので、彼女としては口を差し挟みたくないのだが、自分が巻き込まれる可能性がある以上、そうも言っていられない。

 矯正の必要性と困難さに、彼女の悩みは尽きなかった。


「さて、愚妹はどうかな、と」


 話題を変えて、彼は望遠映像に映し出される美影を見る。

 美雲も、それに従って映像を見た。

 注目するのは、妹と言うよりも、それと対峙する一人の老人だ。


「……あれが、神裂御劔。最強と謳われる戦士ね」

「中々に興味深いマッチングとは思わないかね?」

「……そうねぇ」


 何でもありならば、美影の勝ちは揺るがない。

 二百年の時によって得た新たな力は、過去の神裂でさえも敵わないと確信している。


 しかし、一方でそれを封じたならば、とも考えた。

 鍛えた肉体と磨いた体技のみで競ったならば、とも思う。


 確かに、美影は至宝と呼ばれる程だ。

 身体能力においても、蓄積されている体技の練度でさえも、自分達の時代にいる雷裂では、誰一人として追い付けない。

 例外的に、体技に限っては雷裂以外で追随する怪物も美影の同僚にいるが。


 だが、過去の英雄ならば。

 あるいは、自分達が最強と信じる者の牙城を崩せるのではないか。


 そうも思う。


「…………うん、楽しみね」

「で、あろう?」


 頷きあった直後、時代を越えた最強同士が激突した。

タグにカニバリズムを付けるべきかと思い始めました。


ここら辺は性癖だし直接的描写はあんまりないけど、次章の予定だとなぁ。

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