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名乗り

「っ、これは……なんという……!」


 降り注ぐ黒雷。


 それを見上げて、御剣は驚愕を顕わにする。


 大いなる雷雲。

 まさに大自然の偉大さが具現化したかのような圧が、空の彼方に出現していた。


 今まで戦っていた俊哉と比べても、その差は圧倒的だ。

 彼も猛火の如き圧を持っていたが、自分たちに比べればそう大きく変わるほどでもない。


 しかし、空のそれは、比較する事が馬鹿馬鹿しい程である。

 あるいは、本物の神でも現れたかと思わんばかりだ。


 極大の黒雷は、分厚い暗雲を吹き散らす。

 あらゆる人類の業を含んだ毒雲が消え、久しく見ていない空が見えた。


 蒼穹。

 そういえばそうだった、と、思い出す美しい色。


 その向こう、遥かなる宇宙の高さにて、世界が歪んでいた。


~~~~~~~~~~


(……おいおい、マジかよ)


 俊哉は、空の向こうに見えている光景に呆れ果てる。


 空間歪曲。

 軌道衛星上にて起きているそれが、肉眼で視認できているのである。

 目の前でそれが起きていたとしても、余程に大きく派手で無ければ肉眼視などできないというのに、だ。


 どんな規模で空間が歪んでいるのか。

 惑星でも転移してくるのではないかと、疑わずにはいられない。


 空間歪曲の中心からは、黄金の構造物が顔を覗かせている。

 全貌は分からないが、見えている分だけでもキロ単位になるだろう大規模構造物だ。


(……何を持ってきたんだか)


 とは思うが、答えは大体想像が付く。


 マジノラインだろう。

 俊哉の知る中で、あれ程の巨大さを誇る代物は存在しない。

 いや、彼の知るマジノラインも流石にあんなレベルではないのだが。


 どうせ新型でも造ったのだろう、と悟りの境地に至った彼は、あまり気にしなかった。


 それよりも、気にすべき問題は巨大構造体ではない。

 たった今、出会い頭の災害を降らせた存在の方が大問題である。


(……いる。めっちゃいる)


 強化した上でも、俊哉の視力では軌道上の人間サイズなど判別できない。


 だが、しかし確かに分かる。

 黒雷を放った時点で確定的だが、それが無くとも彼女がいる事は、放たれる圧倒的存在感が教えてくれている。


 俊哉は、神裂の者たちが呆けている内に、即座に身を翻した。


「トシ」

「ああ、逃げっぞ」


 巻き込まれては堪らない。

 そうと考えた彼は、雫を拾ってその場から離脱を図る。


 神裂の者たちも、その動きには気付いていた。

 気付いてはいたが、止める事は出来なかった。


 目が離せない。一瞬たりとも。


 天空から放たれる存在感が、彼らの足と瞳を縫い止める。


「ぬうぅぅぅあああぁぁぁぁ!!」


 そして、地からも、絶大な圧が発生した。

 神裂の長にして最強の戦士、御劔が、本気の気血法を発動させたのだ。


 不思議ではない。

 そうしなければいけない、と、誰も彼もが本能で感じ取っていた。


 どれ程の時間が経っただろうか。

 それも分からない内に、仰ぐ天の中にポツンと点が生まれた。


 それは少しずつ大きくなり、詳細を見せてくる。


 少女である。

 年は十を少し越えた程だろうか。

 墨を垂らした様な純黒の髪を頭の上で結った、ショートポニーにしている。

 何処かの学生服らしい、半袖のシャツに黒いベスト、それにプリーツスカートを身に付けている。

 手には、黒い拳帯(セスタス)を巻いており、そしてそれだけだった。


 年端もいかない女の子が、何の器具も用いずに生身のままで衛星軌道上から落下してきていたのだ。

 異様な光景である。


 しかし、納得も出来る。

 彼女なら可能だろうと。


 何故ならば、先程から彼らを押さえ付けている威圧感が、あの少女から放たれているからだ。


 少女の視界が、地上を捉える。

 その矛先は、一点に集中した。


 見据えられた御劔は、少女の正体を朧気ながらに看破した。


(……そうかいのぅ。こやつかいのぅ!)


 自らと同じ血と肉を持つ者。

 裏にちらついていた神裂の系譜だと。


 それを証明するように、少女が拳を握って背後に引き絞る。


 神裂流体技《天降竜神》。


 重力加速度を一点に集めて放つ超人技だ。

 単純明快で複雑な事など何一つ無いが、その特性上、上空から地面に一切の減速無く叩き付けられてしまう。

 まさに、超人の肉体を持つ者にしか許されない荒業であった。


 挨拶代わりとでも言うように、彼女はそれをする。


 躱す事は容易だった。

 空にいる少女と、地に足を付けた御劔。

 どちらの方が機動力に勝るのか、考えるまでもない。


 御劔が躱した事で、攻撃は大地へと吸い込まれる。


 破砕。


 体躯に見合った小さな拳。

 それが、広大な大地を大きく割れ爆ぜさせ、盛大に揺り動かした。


 至近に降り立った少女を見据えながら、御劔は誰何する。


「娘、貴様、何者かいのぅ?」


 彼女は、大地から突き刺さっていた腕を引き抜きながら、問いに答える。


「名前? 僕の名前が知りたいの? ならば名乗ろう!」


 なんとなくカッコいいポーズを取りながら、少女は高らかに名乗りをあげた。


「姓は雷裂! 名は美影!

超人の末裔にして、至宝なる者!

 最近のお気に入りは、耳から触手突っ込まれて脳みそチューチュー吸われるプレイなごくごく一般的な女の子だよっ!!」


 雷裂美影、降臨。

 一般的かどうかは多大な疑問の余地があるが。

プレイ内容をノクターンに載せるべきかと少し悩む今日この頃。


中身は、Gが付く類いだけども。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最近のお気に入りが触手な女の子かわいい。。 [気になる点] これから、神裂と雷裂の人物が交じるシーンが増えるかと思いますが、この2つの苗字の違いで人物を判断しているので、間違えると混乱しそ…
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