プロローグ:カミの夢
ごめんなさい。
遅れたくせに、クソ短いです。
理由は、まぁ、遊んでたり別のもの書いてたりで。
適当に書いたエッセイに、意外なほどに反応があって驚いてみたり。
なんとなく四章開始です。
どんな内容かは、もう章タイトルで分かりきってますね。
彼は夢を見ていた。
救いを求める声をかき集めた、何処までも下らなくて、何処までも他力本願な、何の意味もない夢だ。
鬱陶しいとしか思わない空間だ。
こんなどうでもいい声に、願いに、何で応えてやらねばならないのだと。
救われたいのならば、自ら努力するしかないのだ。
その果てに、力及ばずに死ぬというのならば、潔く運命だと受け入れてしまうべきである。
それが自らの限界なのだと、そう定めた神や世界を呪いながら。
わざわざ他人を頼らないで欲しい。
救う義務も、意味も、自分は見出せないのだから。
だって、お前たちだって、自分が助けてくれと願っていた時に、誰も助けてなんかくれなかったじゃないか。
〝――それが貴様の本心か〟
「偽らざる心の声というものだね。
私は正直者だからな」
〝――力無き者の悲哀を知らぬ、愚者が〟
「よくよく知っているさ。
力無き悲哀など、身に沁みるほどに。
だから、私は力が欲しいと願った」
〝――分かっていながら、人々の願いを黙殺するか〟
「自助努力というものだよ。
自らを助く者を天は助くという奴さ。
ただ手が差し出される事だけを待つだけの豚共を救いに行くほど、私は酔狂でもなければ暇でもないのでね」
〝――……貴様は間違っている〟
「これは心外な事だ。
私は何一つとして間違っていない。
私は自らの幸福の為に常にベストを尽くしているとも」
〝――貴様は相応しくない〟
「はて、何かに選ばれた覚えはないのだが……」
〝――貴様に人の願いを託すべきではない〟
「おや、おかしいな。
私は行事は大切にする派なのだが。
七夕では彦星と織姫を天の川を超えて融合合体させてあげたし、クリスマスではサンタを襲撃して、奴の代わりに私がプレゼントを届けてあげた事もある」
〝――――〟
呆れた様な意思が伝わってくる。
そういう事ではない、とでも言いたいのだろう。
人の世に慣れて、少しは空気というものが読めるようになってきた。
しかし、読めるだけだ。
彼は、それを行動に反映するつもりはない。
彼は躊躇わない。
自らの選択に迷いを持たない。
誰が、どんな想いで、どんな訴えを叫ぼうと、彼は揺らぐ事すらない。
彼の道を曲げられる、そんな例外は、この世にたったの二人しかいないのだ。
〝――貴様は、相応しくない〟
「何度も繰り返さずとも良い。
何が気に入らないのか、はっきり言いたまえよ」
〝――貴様は、《救世主》に相応しくない〟
「そんな胡散臭い物になった覚えはないのだが、それで?」
〝ーー貴様より《救世主》の資格を剥奪する!〟
「クッ……」
彼は、身体を折って、堪えられぬ声を口から漏らした。
それは、苦悶の類いではない。
それは、愉悦の笑みであった。
「クックックッ、クハハハハハッ!
そうか! それは良いな!
是非ともお願いする!」
あまりに予想外の言葉。
もしも本当にそれが為されれば、己がどうなってしまうのか、分からぬ訳がない。
だというのに、そうと理解して、彼は笑っているのだ。
〝ーー貴様は狂っている〟
「よく言われる」
〝ーー後悔してからでは遅いのだぞ〟
「知っている。
だからこそ、言ってやろう」
彼は、刹那は、堂々と集合無意識に言葉を放った。
「カミよ、憐れなる傀儡よ。
私を後悔させてみろ!
できるとは思えないがな!
フハハハハッ!」
〝ーーーー〟
高笑いと共に、世界が遠退く。
そして、彼は夢の中から弾き出されるのだった。
~~~~~~~~~~
閉ざしていた瞼を持ち上げると、そこは見慣れたいつもの空間。
雑多に物が積み上げられた刹那専用の研究室だった。
「クックックッ、頑張りたまえよ、お互いにな。
相手にするのは、存外に厄介なものだぞ」
カミと名乗る傀儡に向けた、だけではない激励。
今回ばかりは、ピンチの瞬間に都合よく自分はやってこられない。
最後の手段として、当てには出来ない。
それを理解している為に、刹那は自らが撒いた種たち、美影を筆頭とした者共にも、応援を送ったのだった。
順番、前話の「出戻り」をこの後に持ってきた方が良いかな? と思うので、次回更新時に入れ換えます。
今更のようにリ・クリエイターズを見始めた作者は、もしも自作で同じような事が起きたらとつい妄想してしまう。
とりあえず、土下座一択ですわな。
それで、許してくれる奴と許してくれない奴が見事に別れそうですが。