コードネーム『NSD』
書いていて思うこと。
俺、何でこんな話書いてんだろ。
いや、本当に何で書いてんでしょうね。
「すぅー……、ふぅー……」
一人の男が、精神を集中させる。
彼の前には、小柄なマネキンが一体。
実物を模した服装をさせており、一見した場合、服飾関係の人間か、もしくは変態か、その二択に可能性は絞られるだろう。
「……ふっ!」
男が瞬発する。
指先に小さな鈎爪の様なデバイスを発現させ、マネキンへと襲い掛かる。
相手が動かぬ人形である、という事を差し置いても、その動きは驚くほどに洗練されており、彼が超一流の使い手である事を伺わせる。
「まぁまぁな出来ですね」
標的の無残な姿、哀れな事になったマネキンを見て、それを成す為に必要とした時間を感じ取り、自らの技の冴えに満足げに頷く。
彼はデバイスを圧縮し、待機状態にした後、近くに置いていた封筒を手に取る。
飾り気のないそれは、彼に届けられた仕事の依頼書である。
「ふっ、上官殿もタイミングが良いですね。
まるで見定めていたかのようです」
趣味と実益を兼ねた仕事。
依頼がなくともやろうと思っていたというのに、その準備が整ったタイミングで仕事を回してくるのだから、見張られているかのような錯覚を覚える。
「まぁ、あの方ならば、何の不思議もありませんか」
男は薄く笑い、ナイフを手に取る。
手の中で少しばかり弄んだそれを、彼は壁に向けて投げる。
その鋭い切っ先が、張り付けられていた一枚の写真を貫き、壁へと突き刺さった。
「ふふふっ、可愛らしい……青い果実。
この私の手で」
写真には、真黒な髪を長く伸ばした、眠たげな眼をした少女が描かれていた。
~~~~~~~~~~
「そろそろ、動き出す頃かなー。
それなりに名前も売れてるし、狙われる事だろうなー。
多分、やられちゃうんだろうなー。
あんなの、予想してないだろうしなー」
刺客の出現を予測した美影は、一人で薄く笑う。
「あーあ、かわいそ」
命には関わらないだろう故に、彼女は何もしないのだった。
~~~~~~~~~~
夜の道。
そこを、一組の男女が歩いている。
「トシ、トシ、見てみろ、です」
前を行く少女――雫がくるりと回る。
彼女の動きに合わせて、ふわりとスカートが揺れる。
「新しい服だぞ、です。
可愛いか? です」
今日の雫は、上半身に薄桃色の前袷の和装をしている。
白の花びらが散った模様があり、華やかな意匠だ。
袖は和服の例に違わず、大きく広がっているが、肩の部位が繋がっておらず、二の腕の半ば辺りで留めてある。
一方で、下はスカートを履いていた。
きちんとプリーツを折った黒いミニスカートである。
裾に赤いラインが引かれており、それがワンポイントとなっている。
足には同じ黒のニーソックスを身に着けており、白い肌の絶対領域が魅惑的だ。
「おぉー、可愛いぞー」
後ろを行く少年――俊哉は、雫から視線を逸らしながら、平坦な口調で答えた。
その頬は僅かに紅潮しており、僅かばかりの劣情と照れが混じっている事が窺える。
それもそうだろう。
彼とて、十代半ばという思春期真っ盛りな年齢の、健全な男子である。
異性に対する興味は相応に持っているし、素直に好意を寄せてくる雫に対して恋心に近い親しみを抱いてもいる。
何よりも、彼女が身を回した事で広がったスカートが問題だ。
そうする事で短いスカートが持ち上がり、その下に隠されたものが見えそうになっている。
それなりに一緒にいて、それを見た事のある俊哉ではあるが、ヘタレな彼はそれを直視する事にいまだに慣れないのである。
「本当か? 本当か? です」
目を逸らしながらも、短くもきちんと褒める彼に、雫はぴょんと跳びつく。
腕を取られ、彼女の温もりが伝わってくる。
ついで、ふわりと漂う芳香が、俊哉の嗅覚をくすぐった。
(……うぬぅ)
理性を麻痺させるような、魅力的な香りだった。
香水のようなものではないが、一方で単なる体臭や石鹸の匂いとも思えない、不思議な香りである。
これが雫の匂いなのだとすれば、彼女は自分にとってどれほどに相性の良い相手なのだろうか、と考えてしまう。
同時に、彼女の幼さを多分に残している容姿を見て、己はロリコンであったのだろうか、と割と真剣に悩まずにはいられない。
(……まぁ、将来性に期待という事で)
腕には、既に膨らみ始めた女性の柔らかさが、ほのかに感じられる。
自分と同年齢でありながら、まるで膨らみのない何処かの電撃鬼娘とは大違いだ。
遺伝子解析はしていないので何とも言えないが、将来的にはもっと女性的なスタイルとなるだろう。
(……うむ。古き和の文化、光源氏計画という奴だな。そう思っておこう)
目を逸らしておける現実ならば、棚上げして後回しにしておくに限る。
悪化する可能性もあるが、今回の問題は放置していれば解決できるかもしれない。
それに期待だ。
数年もすれば全てに答えが出る。
結論として、ロリコンの誹りを受けざるを得なくなれば、覚悟を決めようと心の中で誓った。
そうして二人は触れ合いながら帰路を進んでいると、目の前にふらりと人影が現れた。
闇の中、僅かな街灯の下にいつの間にか現れた。
一般人だとはとても思えない。
目の前にいるというのに、見逃してしまいそうな気配の薄さも理由の一つだ。
だが、なによりもその姿が異様だった。
細身の長身を全身にぴったりと張り付くような黒のライダースーツに身を包んでいる。
それだけならば、まだ何処にでもいるだろう。
珍しい部類だが。
それよりも、目を引くのは頭を覆っている装備だろう。
ズダ袋だ。
目の辺りにだけ小さな穴が開いており、それによって視界を確保しているのだと分かる。
怪しい。
とても怪しい。
怪し過ぎるにも程がある。
俊哉は、雫の腕を振りほどき、彼女を自身の後ろに隠す。
「《六天魔軍》が一人、碓氷雫ですね」
合成された声で、男が目標を語る。
その声は、男とも女ともつかない機械的な音で、そこから素性を辿れそうにはなかった。
「人違いだぞ、です」
甘い戯れの時間を邪魔された雫は、不機嫌な声で即座に否定する。
面倒そうな事には、関わらないに越した事はないのだ。
しかし、怪しい男は気にしない。
「本名を名乗れぬ無礼をお許しください。
便宜上、コードネーム『NSD』とお呼びください」
「おい、トシ。
あいつ、人の話を聞かねぇぞ、です」
「みたいだな。
……そんで? 何の用があって来たんだ?」
警戒を高めながら、一応、訊ねる。
九分九厘ないと思われるが、もしかしたらファンとしてサインでも求めに来た可能性もある。
なので、確認は必要なのだ。
「ふむ。目的、ですか。
そうですね。
端的に言えば、雫様の大切なものを頂戴しに来ました」
「ひぅ」
「……成程。やっぱり刺客か」
こんな情勢下であっても、足の引っ張り合いという物はなくならない物だな、と俊哉は逆に感心したくなった。
雫の能力は危険極まりなく、一方で本人には戦闘能力がほぼ存在しないという極端な性質をしている。
瑞穂の戦力を下げるという目的において、彼女は狙い目であろう。
そんな時の為に、俊哉は彼女の近くに常に配置されているのだ。
彼は高めた戦意に魔力を載せて、即座にNSDと名乗った男を制圧せんと一歩を踏み出した。
だが、それよりも彼の行動の方が早かった。
彼はその場に膝を突き、深く頭を下げたのだ。
「お頼みします!
貴女様のパンツをお譲りください!」
「「…………はっ?」」
あまりにもおかしな言葉が聞こえた気がした。
踏み出した俊哉も、後ろに下がっていた雫も、首を傾げて停滞してしまう。
戦闘が目的ならば、意表を突く事に大いに成功しているだろう。
長過ぎる停滞は大きな隙であり、この瞬間ならば俊哉の護衛を抜いて雫を抹殺する事も容易かった筈だ。
しかし、NSDは頭を下げたままである。
魔力を高める事も無ければ、戦意や悪意を顕わする事もなかった。
彼は、腰の後ろに手を回してそこに提げていた物を前に押し出した。
大きく膨らんだ封筒と、何らかのビニール袋だ。
口の開けてある封筒からは札束が見えており、ビニール袋の方は分からないが、質感からして何かの布が入っているように見える。
「こちらに、謝礼と、代わりの下着を用意してあります。
無論、更なる増額を望まれるのでしたら応じますし、下着の方も店員の方にお願いして袋詰めして戴き、私は指一本触れておりません。
ですので、何卒。何卒ッ!」
あまりにも力の籠った嘆願。
俊哉は色々と困った。
男としては、まぁ理解を示せなくもない。
なるべく損害を与えない為に相手へ配慮しようという気持ちも感じられる。
根本的に間違っているが。
しかし、その願いを聞き届ける事は不可能なのだ。
どうあっても、彼の願いが叶う事はない。
その理由を彼は良く知っている。
一応、処遇を訊ねる為に、背後の雫へと視線を送る。
「…………ぎるてぃ、です」
首を掻き切るジェスチャーと共に、判決が下された。
「……ああ、ほんじゃ」
そこまで危険性もなさそうなので、殺すまではしない。
とはいえ、自らの欲望の為に危害(?)を加えようとした事も確かなので、動けなくなる程度には痛めつけようと思う。
低い位置にある頭を正面から蹴り飛ばした。
「へぶっ!」
「ぬ?」
手応えはあったが、ダメージを逃がされた感触もあった。
意識は刈り取れていないし、行動不能にもできていない。
わざとらしい程に大きく吹き飛んだ彼に、追撃を仕掛けようとするが、それよりも向こうの方が早かった。
ゆらりと起き上がったNSDは、怪しげな笑みを漏らす。
「ふ、ふふ、ふふふっ。
痛い、ですねぇ。
これはもう……戦争です、よねぇ!?」
バチリ、とNSDの身体に電光が走り抜けた。
瞬間、彼は目にも止まらぬ速度で動いた。
油断していなければ、既に歴戦の強者の領域に入りつつある俊哉ならば、充分に対応できただろう。
しかし、あまりにも馬鹿げた一幕に、完全に気を抜いていた。
俊哉へと飛び掛かりながら、デバイスを展開するNSD。
指先に、ごく小さな武器が顕現する。
自身に向かって折り曲げられた、内側にのみ刃の存在する、鈎爪の様な異形の武器だ。
「な!?」
「ふっ……!」
NSDが指先で彼の身体を撫でる。
その結果、彼の服が容易く綺麗に斬り裂かれた。
怪我はない。
本当に、衣服を斬っただけだった。
「はぁ!?」
ほんの一瞬の驚きの隙を突いて、NSDは俊哉の脇をすり抜けて背後へと抜ける。
「くっ……!」
即座に追撃に移るが、彼は瞬発力に長けた雷属性術士だ。
短距離を走る上で、彼に追い付ける物ではない。
そして、雫には戦闘技能はない。
魔王の魔力を持っており、それによって為される身体強化は強大な物だが、突発的な事態に的確に動く事は彼女には出来ないのだ。
案の定、何の反応もできないまま接近を許してしまった雫に、NSDは彼女の服に手をかける。
「ひっ!?」
「なっ!?」
そして、彼は俊哉にそうしたように、雫の服も綺麗に斬り分けて、彼女の下着を奪取しようとした。
だが、彼はそこで止まってしまった。
目的の物が、ない。
彼女の服の下には、下着という物が存在していなかった。
今度は逆に意表を突かれてしまったNSDに、背後から追いついた俊哉が蹴りを入れた。
「うぶあっ!?」
「悪いな。雫はノーパン派なんだよ」
大きく打ち上げられた彼は、暫しの滞空の後に落下した。
彼は衝撃を受けたように、這いずった姿勢で呟いた。
「馬鹿な……。そんな……。
最初から私の目論見が破られていたなど……」
「……道化って称号をお前に送ってやろう。
ついでに、お縄に付かせる」
更なる追撃を加えようとするが、しかし彼は地面を転がって回避した。
NSDはすぐさまに態勢を整えると、何かを地面に叩き付けた。
勢い良く広がる煙幕。
魔力を含ませているのだろう。
魔力探知も撹乱されてNSDを一時見失ってしまう。
その中で、彼の声だけが聞こえてきた。
「作戦の練り直しをしましょう!
では、さらばです!」
「こんなもの……!」
俊哉は風を起こして煙幕を吹き飛ばす。
その時には、既にNSDの姿はなかった。
「なんて逃げ足の速い奴だ!
雫ッ! 大丈夫か!?」
斬り裂かれた衣服を掻き抱いて、うずくまっている雫へと駆け寄る俊哉。
「うっ、ふぐっ……だいじょぶ、だぞ……です」
傷はないようだ。
変態の鑑のように、本当に下着だけを狙ってきたのだろう。
無事な事に安堵しつつ、彼は謝る。
「……すまん。油断していた。
護衛失格だ」
「……許さねぇぞ、です。
だから、しっかり慰めろ、です」
「ああ、本当にすまん」
雫は涙をこらえながら、暫く俊哉の胸に顔を埋めて心を落ち着かせる。
彼は、そんな雫の頭を優しく撫で続けるのだった。
~~~~~~~~~~
「ぶわっはっはっはっはっはっはっ……!」
高等部生徒会室に、爆笑する声が響き渡っていた。
美影だ。
「おい! 笑ってねぇでなんか知らねぇのか、です!
あのクソ変態野郎の事!」
「いやー、ごめんねー。
でも、クククッ、あいつにしてやられるとか……。
ふひ、ふひっ。
あー、予想通りとはいえ、本当にウケるぅ」
腹を抱えて使い物にならない美影に代わって、雫は美雲へと視線を移す。
「ミク、知ってねぇか? です。
NSDとかいう男だ、です」
彼女の問いかけに、美雲は苦笑いを漏らす。
「ええ、知ってるわよ。
通称、『NSD』。
正式名称は、『能動的下着ドロ』。
名の通った女性魔術師の下着を狙う、まぁ変態よ」
「常習犯なのか!? です!」
「まぁ、ねー。
何度も逮捕されてるんだけど、その度に速攻で釈放されちゃうのよねー」
「何でだ!? です!」
「そりゃー、権力者の部下だからね!
上からの圧力って奴だよ!」
美影が説明を引き継ぐ。
「権力者!? です!?
それ、誰なんだ!? です!」
「《六天魔軍》第三席、ナナシさんよ」
「あいつ!?」
「うん、あのクソ黒子。
あいつ、ほら、諜報部でしょ?
ああいった変態を飼い慣らして、情報収集の手駒にしてんだよね、自腹で」
《六天魔軍》のやたらと多い給料の全てを使って、独自の情報網を築いている仕事人間である。
特に意味のない情報だろうと、何に使えるかは分からないので取り敢えず集めてみる、という性質をしている為、変態を飼い慣らすというちょっと頭のおかしい選択すらしている。
「少しでも名の通った術者なら、誰か一人くらいは変態なファンがいるからね。
特にそいつは、女性相手なら誰でも行けるから、使い勝手が良いみたいだよ?」
「うえぇ……です」
嫌な奴に目を付けられたと、雫は心底から嫌そうな声を漏らした。
「……ミカとミクも、狙われた事があんのか? です」
ふと気になった事を、雫は訊ねた。
名の通った女術者、というのならば、彼女たち姉妹は、雫よりも遥かに先達だ。
とうの昔に目を付けられていてもおかしくはない。
その予想を、彼女たちはあっさりと肯定する。
「うん。あるわね。
私は普通に取引に応じてあげたんだけど……」
他人の嗜好に拘らない性質な美雲は、変態の要求にも慈愛の皮を被った無関心の心で軽く応じていた。
一方で、とことんお堅い貞操観念な美影の方は、というと、
「僕は襲い掛かってきた所を真空飛び膝蹴りで迎撃してやったね。
全治二カ月だったってよ」
普通に断り、その後は暴力に訴えていた。
「おう。まぁ、予想通りだな、です」
首の骨が見事に折れていたらしく、即死しなかったのは奇跡のような怪我だったらしい。
憎まれっ子世に憚るとはまさにこの事だと実感した経験である。
けらけら、と笑っていた美影だが、突然、豹変するように表情を改める。
「でも、油断をしていたからって、雫ちゃんに接近を許すなんて、本当に護衛失格だね」
「今回はあれが相手だったから良かったけど、本当に刺客だったら危なかったわ。
美影ちゃん、頼んで良い?」
「うん。ちょっと鍛え直してくる」
ごきり、と指を鳴らしながら彼女は退出していった。
宣言通り、俊哉を鍛えに行ったのだろう。
美雲は墓場の手配をした方が良いだろうか、とちょっとだけ思った。
思っただけだった。
「まぁ、雫ちゃんも忘れちゃいなさい。
犬に噛まれた位に思って、ね」
「うぬぬぬ、です」
「どうせ、目的を果たせなかったんだから、また現れるでしょう。
その時に、きっちりと復讐してあげなさいな」
「……うぬぅ。仕方ねぇな、です。
うちも、もう少し自衛できるように鍛えるべきだな、です」
実際、彼女の魔王魔力を過剰投与すれば、Sランク以外の魔術師は基本的に必ず殺せるまさしく必殺技となる。
わざわざ格闘技能などを学ぶ必要もなく、ただ突発的な事態に反応できるようになるだけでも、彼女の自衛能力は格段に上昇する。
俊哉は強い。
だが、上には上がいるし、不意を打つ手段だってある。
そうなれば、己は殺されるしか道はない。
今回は運良く変態が相手だったから、少しばかり羞恥を感じるだけで済んだが、あれが本当に命を狙った刺客であれば、既に彼女は死んでいただろう。
さりげなく迫っていた死の恐怖に、今更のようにふるりと身体を震わせた雫は、自衛の必要性を感じて、俊哉と美影の下へと去って行った。
「……タイミングが良いのか悪いのか」
誰もいなくなった部屋の中で、美雲は小さく呟く。
直後、扉が開いて一人の青年が入ってきた。
生徒会副会長をしている、眼鏡をかけた金髪の男子生徒だ。
何故か、首にコルセットをはめており、薄手の夏服の下からは包帯が巻かれている事が窺えた。
彼は、湯飲みを載せたお盆を手にしながら、生徒会室内を見回す。
「おや、既にお帰りになられてしまったのですか」
「ごめんなさいね、天雷君。
せっかちな子ばかりで。
せっかくお茶を淹れてくれたのに」
「いえいえ、大した手間ではありませんのでお構いなく」
彼はせっかくなので、美雲の分だけはきちんと彼女に渡しておく。
「ありがと」
「どういたしまして」
温かな湯飲みを揺らしながら、美雲は静かに問いかける。
「それで?
その怪我の原因を言ってくれないかしら?」
「実は、昨晩、少々乱暴な方に襲われまして。
かなりの勢いで頭と背中を蹴られて、ついでに中々の高さから落とされてしまったのです。
いやはや、未熟の極みですね」
「ふぅん。まぁ良いんだけど。
……成果は上げられなかったみたいだけど、まだ続ける気なの?
かーなーり、恨んでるみたいだから、次は見敵必殺で殺されるわよ?」
「ならば、私も相応に対策を練るまでです。
しっかりと目的を達成するまで、私は諦めませんので」
「そういうとこ、本当に血を感じるわねぇ」
《NSD》天雷仁。
生徒会副会長をしており、瑞穂変態情報機関の構成員である。
そして、その名からも推測できるだろうが、雷裂家の分家に当たる血筋を持っている、ある意味、大変に雷裂の性質を受け継いでいる人材だ。
彼は自らの欲望を満たす為には諦めない。
今現在の目標は、ノーパン派な雫の使用済み下着を頂戴する事である。
雷裂の血と変態の名に懸けて。
ちょっと間が開いていた理由?
なにかと話題になるけど、全く内容を知らないDODの内容をまとめ動画で見ていたからです。
1、2の割と真面目に鬱なストーリーから、何故3はこんなに愉快に鬱な内容になっているのか。
疑問は尽きない。
一番好きになったのは、3なんですけどね。