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闘争の目的

懐古厨をこじらせた結果、作者を二次元の海に堕落させた戦犯作品「ギャラクシーエンジェル」を久し振りに起動させてしまった。


今やっても面白く感じるのは、思い出補正なのか、それとも完成度がそれだけ高かったのか。

20年前でこのCGは凄いと思うんですよね。


ブロッコリー様! Project G.A.の再開を今でも期待しております!

 巨星と人間、あまりにスケール差のある人外決戦は、矮小な人間の一撃から始まった。


「取り敢えず、こんがりと焼いてみようか」


 宇宙から光が消えた。

 降り注ぐ太陽光を、刹那の念力が捕まえて捻じ曲げているのだ。


 一個の太陽から放射される全ての熱量を圧縮し、一直線に解き放つ。


 星を一個焼き払うには充分な熱量が、光速で惑星ノエリアへと突き刺さった。


 念力をそのまま放っては、喰われてしまう。

 相手は星を主食にする生き物なのだ。

 星のエネルギーを使った攻撃など、捕食対象にしかならない。


 故に、一工夫が必要となる。


 思い返せば、確認してきた他の星喰いの生物の中には、恒星を食べている個体がいなかった。

 同じ星には違いないというのに、全ての個体が見向きもしていなかった。

 この惑星ノエリアを捕食した生き物も、目の前に盛大に自己主張している恒星があるというのに、食べようという気が見られない。


 偶然なのか、何らかの理由で食べられないのか。

 それは分からないが、試してみるだけの価値はあるだろう。


 そうと思考した刹那は、太陽光線を束ねて叩き付けてやったのだが。


『GYYYYYYYYYYYYY……!!??』

「……おお、思いのほか、ダメージを受けているな」


 宇宙に、魔物の悲鳴が木霊する。

 耳に聞こえる訳ではないのだが、身悶えしている姿を見れば痛みを感じていない訳ではない事は明白だ。


 ギョロリ、と視線を感じる。


 全ての獣の相を持つと言わんばかりに取り留めのない姿をした魔物。

 それが持つ全ての眼球が刹那を睨んでいた。


「良い敵意だ。心が躍る」


 最近で、ここまで強い敵意を向けてきたのは、それこそ義妹しかいない。

 魔物が食欲に根差した敵意なら、美影は性欲に根差した敵意である。

 妹は隙あらば兄の貞操を狙っているのだ。

 微妙な気分にならざるを得ない現実だが、それが事実なのだから仕方ない。


 意識が別の世界に旅立っていた刹那に向けて、その間に魔物の触腕の一本が唸りを上げて振るわれていた。


 触腕、と一口に言うが、相手は巨星そのものなのだ。

 その太さや質量は、まさに大陸そのものである。


「おぶっ……!」


 真正面から叩き付けられる。

 鱗や棘などに覆われた触腕は凶悪であり、質量と速度に裏打ちされた威力は、それだけで頑強な巨大隕石の衝突に等しい。


 そこに、更に惑星ノエリアから搾り取ったエネルギーと、魔物自身の捕食能力が付加される。


 念力バリアを捕食された後、思いっきり引っ叩かれてしまった。

 ノエリアが星の力を持ち逃げしたとはいえ、搾りかすや生き残りの生物たちのエネルギーをかき集めれば、それなりの量になる。


 相応に強化された一撃に、刹那の身は堪らずに無数の肉片へと砕け散った。


「まぁ、それで死ぬような身ではないが……些か面倒だな」


 逆再生でもされるように、即座に復帰する刹那。

 防御が意味を為さない、というのは非常に面倒臭い相手だと彼は思う。


 パン、と柏手を打つ。


 世界が罅割れる。

 空間が引き裂けたのだ。


 宇宙空間に生まれる衝撃波。

 空間が裂けているのだ。

 たとえ、真空の闇の中であっても衝撃波くらい発生する。


 指向させた威力を束ねて、再度、振り下ろされる触腕を迎撃する。

 砕け散る巨大なそれだが、しかし魔物に痛みを感じている様子はない。


「ただの末端だしな」


 刹那にしたところで、手足を捥がれた程度では痛みすら覚えないのだ。

 魔物もそうだった所で、何の不思議もない。


 彼は、今も太陽光線集中照射を続けている。


 ダメージを与えている手応えはあるのだが、焼失と再生を繰り返して、いまいち致命傷に繋がっている感触が無い。

 刹那もそうだが、保有するエネルギー量が莫大に過ぎるのだ。

 表面を焼いた程度では、すぐに再生してなかった事になってしまう。


「何千年か続ければ、死にそうな気もするが……そこまで付き合うほど私は暇ではないのだが」


 二年後からは、愛しの姉妹と淫らで爛れた日々を送る予定なのだ。

 そんなに待っていられる訳がない。


「今回は貴様を抹殺する事が目的ではない。

 故に、少々強引な手で行かせて貰おう」


 殺す事が目的ならば、万全を期して準備をして臨む。


 だが、今回は違う。

 女怪を正気に戻す為に、仕方なく殴りに来たのだ。

 完全に殺しきる必要はない。


 よって、力押しで一気に殴り倒して、とっとと退散するに限る。


 命系統超能力《命付与(ライフメイク)混沌(カオス)》及び《身命融合・存在変換》。


 混沌エネルギーを作り出した刹那は、無限の漆黒に命を付与し、続けて自らの魂魄にまで融合させる。


 刹那の身体が、輪郭を失う。

 全体が靄のようにぼやけ、何とか人の形を保っているだけの、黒い何か。

 見ているだけで正気と理性を失いそうな背徳的で冒涜的な存在感が、それからは放たれていた。


 あれは世界の敵だ。

 見る者へとそんな印象を抱かせる怪物が、そこにいた。


 その中心に、三日月のような弧を描く笑みが浮かぶ。


『ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ――』


 人の声、ではない。

 明らかに、獣の唸り声だった。


 突如、出現した魔人へと巨大な触腕が群れとなって襲い掛かる。


 靄が大きく広がる。

 無数に枝分かれした靄は、数多の触腕を掴んで止めた。


 そして、その頑強な触腕と同化し、浸食する。


『GYYYYYYAAAAAAAAAA……!!』


 捕食される、という今までに経験した事のない事態に、魔物は雄叫びを上げて触腕を振り回した。


 幾らかの靄は振り払えたが、幾らかの触腕は千切り取られ、靄の中へと取り込まれる。


 見る見るうちに巨大化していく不定形の黒い靄。

 大陸の如き触腕を幾つも取り込み、小惑星ほどにまで成長した靄は、恐怖を抱いた魔物を嘲笑う。


『キャッキャッキャッキャッキャッキャッ!!』


 耳障りなそれに、魔物は今までにない感情を抱いた。


 すなわち、怒り。

 次いで、喜悦を得た。


 魔物は、捕食されるだけの羽虫に馬鹿にされた事へ、堪えられぬほどの憤怒を抱いた。

 そして、己が食欲以外に由来する感情を抱いた事が、とても楽しくなっていた。


 魔物は、この際、感情に任せてこの生物に付き合う事にする。

 捕食ではなく、殺害へと意識を切り替えたのだ。


『GUUUUUOOOOOOOOOOO……!!』


 雄叫びを上げる。

 より戦闘に適した形へと変形していく惑星ノエリア。

 黒き魔人もまた、自らのエネルギーを糧に更なる巨大化を果たしていく。


『ヴェァアアアアアアァァァァァァァァ……!!』

『GYUAAAAAAAAAAAAAA……!!』


 不定形の黒き靄で出来た魔人。

 全ての獣の相を持つ捕食の王。


 端から見ると、単なる仲間割れにしか見えない争いが始まる。


~~~~~~~~~~


 二体の怪物の戦闘は、お互いの存在の食い合いだった。

 両者ともに、生存本能を第一にしている生命体だ。


 捕食。


 これは、生物が生きる上でしなくてはならない、必須の行いである。

 それ故に、彼らは他者を食い散らかす事を至上としている。


 魔物の捕食能力は、わざわざ口に運ばなくとも、触れさせるだけで発動する能力である。

 そして、刹那の混沌エネルギーもまた、触れる端から同化して溶かして、取り込んでしまう物である。


 彼らが激突すれば、食い合いになるのは当たり前の事であった。


 現状では、刹那の方が一手有利である。

 彼は今も太陽光の照射を行っており、魔物はそれによって焼失した部分の再生にエネルギーを割かねばならない。

 その分、エネルギーの消費は大きく、刹那を食べて補充できる分量との釣り合いが取れていないのだ。


 今はまだ、魔物の方が総エネルギー量では上回っているが、いずれ天秤が逆転する事は目に見えている。

 よって、状況を覆す一手を打ったのは、必然的に魔物の方だった。


 刹那も巨体となっているが、それでも魔物の方がまだまだ巨大である。

 それ故に、一度に食らい付ける場所には限りがあり、手隙となってしまう触腕も存在する。


 その触腕の先端に、光が宿った。


 破滅を齎す極光である。


『ガアアアアアアアアア!!』


 魔人が咆哮する。


 極光の危険度を感じ取ったのだろう。

 射出を阻止せんと、猛進を開始した。


 しかし、そう動くなど、魔物にとっては手に取るように分かる。

 自分でもそうするだろうから、相手がそうしないなどとは全く思っていない。


 魔人に食らい付いていた触腕を総動員して、その行く手を遮る。

 魔人は触腕を引き千切り、食い破り、じりじりと歩を進めるが、その速度はあまりにも遅過ぎる。


 やがて臨界に達した極光が、放たれた。


 光速度限界さえも突破した、必殺の光線が無数に放たれる。


『ギッ……! ガッ、カッ……!』


 穿たれる、無数の風穴。

 捕食ではなく、消滅を与える攻撃に、さしもの魔人も痛苦の悲鳴を上げる。


 だが、魔人も黙ってはいない。


 彼が吠えれば、世界の動きが鈍くなる。


 時間の流れが遅くなったのだ。

 これにより、光速度さえも突破していた滅光がギリギリで見える速度にまで落ち込む。


 見えてしまえば、対処をする事が出来る。


 最初は、念力によって受け止める、それが出来ずとも軌道を歪ませようとした。


 しかし、一瞬すらも耐えられずに貫通してしまう。


『ギャッ!?』


 更に大きく削られる魔人の体躯。


 もはや穴だらけである。

 総質量では当初の半分程度だろう。

 これ以上の損失は、本当に命に関わってくる。


 判断ミスを認めた魔人は、しっかりと滅光の射線とタイミングを見定める。


 一瞬の狂いすら許されない。


 魔人は、亜光速で飛来する滅光の一寸先の空間を、叩き割った。


 空間断層。


 繋がっていなければ、そもそも届きはしない。


 全ての滅光を亜空の彼方へと丁寧に飛ばしていく。


 一瞬すらも遅れてはいけない。

 ここは、惑星ノエリアの圏内なのだ。

 惑星ノエリアそのものである魔物の方が空間への操作権限は強い。

 もしも反応されてしまえば、せっかく作った空間断層が修復されてしまい、滅光を防ぐ術を潰されてしまう。


 五分へと持ち直したように見えるが、魔人がここまでに受けた被害は大き過ぎる。


 全存在で捕食を行う両者は、質量がイコールで捕食能力の高さに直結してしまう。

 半分以上を削られてしまった魔人の捕食速度は大いに落ち込んでおり、とてもではないが五分とは言い難い状態だ。


 それでも、彼に諦めるという言葉はない。

 そんな言葉を知らない。

 知った瞬間が、自分の命が終わる時だと理解しているから。


『グゥゥオオオオオオオオ……!!』


 一瞬でも弱気になってしまった自分を叱咤するように咆哮を上げると、彼は猛攻を開始した。

 少しでもダメージを与えようと、念力を始めとした様々な超能力が乱舞する。


『GAAAAAAAA……!』


 魔物は、自分を僅かなりとも傷つける攻勢を前に、しかしまるで慌てない。

 太陽光線や空間衝撃などと違い、それらは捕食できる攻撃だったからだ。


 僅かばかりのダメージこそ受けるものの、それを上回る量のエネルギーを捕食できている。

 砕かれた身体を順次再生しながら、魔物は魔人の捕食を続ける。


『ジェアアアアアアアアッ!!』


 最後の抵抗だろう。

 一点に集中させた太陽光線が放たれる。


 魔物の巨躯を貫通する光の槍。

 背後まで貫き、宇宙の彼方までを照らし出す。


 そして、それだけだった。


 致命傷とはならず、巨体から見ればあまりにささやかな穴が開いただけである。


 小惑星ほどにまで小さくなった魔人を、魔物は触腕の全てで包み込む。


 完全に包囲した魔物は、全力でそれを捕食しにかかった。


 内部で激しい抵抗が起きる。

 時折、触腕を砕き、破壊力が漏れ出るが、その穴もすぐに塞がり、魔人が脱出する事は叶わない。


 やがて、抵抗が消えた。

 魔物が触腕を解けば、中には何も残っていなかった。


『GYAAAAAAAAAAA……!!』


 巨大な勝鬨を上げる魔物。

 正直、あまり食べた気がしなかったが、きっと破滅の光撃によってエネルギーが消えてしまったのだろう、と適当に己を納得させた。


 所詮は前座である。

 メインディッシュを喰らう為のつまらない外敵を排除できたのだ。

 それをこそ喜ぶべきだろう。


 そうして、未だ繋がっている異界門へと視線を巡らせた直後。


 巨大な魔物の身体が真っ二つに、叩き割られた。


「いやはや、粉々にしてやるつもりだったのだが……実に硬いな」


 割れた魔物の中心から、比べればあまりにも小さ過ぎる影がふわりと浮いて出てきた。


 簡素な造形をした短槍を片手に持った刹那である。


 彼はもう片方の手に、特にどうという事のない、何処にでもありそうな塊を載せていた。


「さて、惑星ノエリアの星核(スターハート)、確かに頂戴した」


 その正体は、星の心臓とも言うべき物体だ。

 正確には、その断片だが。

 今はこの様なみずぼらしい姿をしているが、それは守護者ノエリアがエネルギーを抽出した為であり、しっかりと適合するエネルギーを注ぎ込めば、美しい輝きを放つ宇宙の宝である。


 それを見て、魔物は察する。

 全ては、最後の太陽光線に繋げる為の布石だったのだと。

 己の奥深くに隠していたその抜け殻へと辿り着く為に、これまでの戦いは仕組まれていたのだと。


 刹那は手の中で星核を軽やかに躍らせると、颯爽と身を翻した。


「それでは、さらばだ!

 アデュー、アディオス、アミーゴ!」


 目的は果たした。

 刹那は、長居は無用だとばかりに、異界門へと飛翔した。


『GAAAAAAAAAA……!!!!』


 逃がしてはいけない。

 逃がす訳にはいかない。


 咆哮を上げた魔物は、全力で触腕を伸ばす。

 様々な権能を駆使して、空間を歪ませ、物理的な障壁も用意し、刹那の行く手を遮らんとする。


 しかし、彼はその全てを掻い潜っていく。


 あまりに、刹那は小さ過ぎたのだ。


 正面から戦うのであれば、彼我のスケールの差は魔物に有利に働く因子だった。


 だが、逃げ回るのであれば、別だ。

 あまりに小さい、砂粒のような刹那を、ピンポイントで捉える事は非常に困難だった。


 大雑把な阻害しか出来ない魔物の追撃を掻い潜った刹那は、悠々と異界門へと到達する。


「では、最後に礼だ。

 あまり、自分を過大評価するなよ」


 異界門を潜り抜ける直前、刹那は魔物へと振り返る。


 門の向こうへと短槍と星核を放り投げた彼は、両手を合わせて構える。


 その手の中には、極光が生まれていた。

 破滅の光撃。


 混沌の魔人を殺す決定打となっていた力が、そこにはあった。


「暫く、寝ていたまえ」


 一切の躊躇も容赦もなく、刹那はそれを撃ち放った。


高潔な騎士でも何でもないのですから、わざわざ正面対決をしてやる義理など無いのです。

刹那「勝てれば満足だ!」


用事があって、日曜日の更新はできません。

申し訳ありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お互い優先順位があるからね。 それが違えば取る手段も違うのは当然至極。 [一言] 女径が復活したらまず損害賠償の話だな。 魔物を引き寄せた、戦争を起こさせた、未成年誘拐と洗脳。 同盟なんて…
[良い点] 投稿の件了解しました。 [一言] せっちゃんが初めから、【破滅の呼び水】だったかな? を出さなかったのは星核ごと消しかけるかもしれないからかな? ふと思ったけど女怪もこれを使える訳だけど魔…
[一言] GAはゲームはやらなかった。アニメ版のおちゃらけはすきだったけれど
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