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各国の状況――オセアニア大陸

昨日のあとがきは、二重の意味で嘘だ。


いや、単に書き忘れていただけなんですけどね。

 異界門が世界中で開通してから、幾許かの時間が経過した頃。


 瑞穂統一国の各地から、幾つものロケットが発射された。

 より具体的には、各地にある雷裂の研究所から。


 それらは雷裂が個人的に保有している私兵を乗せて、空を飛翔する。


 目指す地は、遥か南方。

 オセアニア大陸だ。


~~~~~~~~~~


 オセアニア大陸には、それ程、有力な国家が存在しない。

 というのも、過半以上の土地が廃棄領域として残っており、人が住める環境という場所自体がほとんどないからだ。

 必然的に拡大できる国家の大きさにも限界があり、故に存在する戦力も比例するように控えめな物だった。


 よって、異界門とそこから湧き出す異形たちに対して、全力で迎撃して猶、ようやく主要都市を辛くも守れる、という程度にしかならなかった。

 ペース配分を考えない迎撃によって大幅に戦力を削られた各都市は、既に陥落寸前の有様となっていた。


 もはや蹂躙されるのは時間の問題、という頃になって、異変が空から降ってきた。


 それは、幾つものロケット。

 太く造られており、兵器ではなく、何らかの輸送装置なのだと見て取れる代物は、しかしその勢いを落とさぬままに大地に突き刺さる。

 推力を切って慣性航行だったとはいえ、それでも亜音速程度はあった落下速度。

 そんな勢いで硬い地面に激突すれば、どれ程に頑丈な代物であっても無事では済まないだろう。


 とはいえ、衝撃と爆音を響かせて着弾したそれらに興味を惹かれたのか、近場の異形たちは無警戒にロケット輸送弾へと近付いていく。


 それが彼らの判断ミスであった。

 もっと警戒心を持って、迂闊に近寄るような事をしなければ、異形たちはもう少しだけ長く生きていられただろう。

 尤も、最終的に迎える結末は何も変わらなかっただろうが。


 ロケットの装甲が軋みを上げて剥がれ落ちる。


 中に見えたのは、怪しく煌めく鋭い無数の眼光。

 獣の息遣いが唸りとなって周囲にばら撒かれ、全周囲に向かって圧倒的で純粋な殺意が、お前を殺して喰ってやるという野生の本能がまき散らされる。


 さる、サル、猿。

 猿まがいの、猿もどきの、群れ。


 ロケットの中には、無数の猿のような形をした別の何かが所狭しと、詰め込まれていた。


「ウキッ」


 最前列にいた、三面六手の阿修羅猿――シュサが、号令を下すように一声鳴く。


「「「ウキャ――――――ッッ!!」」」


 それを合図に、無数の異形を成した猿もどきたちが異界の異形たちへと躊躇なく襲い掛かっていった。


 その動きは俊敏そのもの。

 明らかに生物としての構造や限界を無視して、彼らは蠢動する。


 廃棄領域に住まう猛獣たちは、その過酷な生存競争に勝ち残る為に僅かな時間で驚異的な進化を遂げている。

 身体能力の強化だけに留まらず、通常では持ち得ない多種族が持つ特殊能力を身に付けたり、毒物や損傷を物ともしない驚異の回復能力など、その潜在能力は既存の常識では計り知れず、魔王と呼ばれる者たちですら迂闊に手を出せないほどの生命体だ。


 その事実を考慮しても、彼らの運動能力は桁外れだった。

 まるで、魔力で自身を強化している魔術師たちの様に。


 その印象は、当たらずとも遠からずである。

 彼らは確かに超常の力で自らを強化している。


 その証拠に、火や風を起こし、岩や水を生み、幻に紛れ、雷を落とすなど、怪物性に拍車がかかっている有様だ。


 但し、使われている超常は、魔力ではなく、超能力であるが。


 そうであるが為に、異界の異形たちは戸惑いを隠せない。

 魔力を使っていないにもかかわらず、異常能力を発揮する地球の異形たちは、理解の及ばない怪物だった。


「キャ――――ッ!」


 シュサが雄叫びを上げて跳躍する。


 彼の超能力は、《身体強化》。

 超能力にはデフォルトで付随している能力であるそれを、極端に強力にしただけのもの。


 だが、その倍率は恐ろしい物となっている。

 刹那の右腕として、古くから超能力を得て活動してきた彼の力は、刹那の念力にも勝るとも劣らない練度へと達している。


 音さえも置き去りにしたシュサは、味方ごと地上を焼き払おうとしていた竜の首に手をかけると、勢いそのままに簡単に折り曲げる。


 掴んだ首をパンでも千切るように簡単にねじ切った彼は、巨大なそれをボールを投げるように他の竜へと投げつけた。


 剛速球。


 強度も重量も充分なそれは、激突と同時に対象ごと粉砕した。


「ウキャッキャッキャ!」


 愉快だと言わんばかりに手を叩いて笑ったシュサは、跳躍を繰り返す。

 大物狙いな性格をしている彼は、空を飛ぶ巨大な竜の間を飛び回って、その悉くを力任せに引き千切っていく。

 実に野性的で、荒っぽい戦闘だった。

 いや、もはや戦闘ではなく、一方的な狩りである。


 だが、その動きは単調な物。

 少しでも学習能力があれば、すぐに対応される直線的な動きだった。


 故に、タイミングを合わせて振るわれた一撃を受けて、彼は地面へと撃墜されてしまう。


「キャー!」


 すぐに粉塵の中から復帰するシュサ。

 その姿に、傷らしい傷は見受けられない。

 硬く強化された肉体は、地面などという柔らかい物では傷つきはしない。


 彼の事を脅威だと判断した異形たちが殺到し、憤怒の雄叫びを上げているシュサを押し潰さんとする。

 それを四本の腕で迎撃しながら、シュサは残った二本腕を組み合わせ、鉄槌を作り上げた。


 大地に向かって振り下ろされる人智を越えた一撃。


 激震。


 大地が波打ち、めくれ上がり、割れ砕けていく。

 振動が収まる頃には、周囲には何もなくなっていた。


 仲間たちは身を弁えて遠くへと避難しており、知らない敵勢は巻き込まれて粉砕された大地に飲まれて消えた。


「ウキキ。ウッキッキッキッ」


 シュサは、楽し気ににやにやと笑う。


 ボスのメスに、口を酸っぱくして全力で戦うなと言われている。

 上下関係に厳しい野生に生きる彼には、その命令を破るという選択肢はない。


 だが、それは不満がないという意味ではない。

 何の制限もなく、自分の力を思う存分に発揮できないという状況は、シュサの心に鬱憤を貯めていた。


 そんな中で、今回は何の手加減もしなくて良いという。


 シュサは、その命令を確かに聞き、我慢する事を止めた。


 阿修羅という鬼神の姿に見合った力を、力一杯振るい始める。


 戦闘が終わるのが先か、大陸が砕け散るのが先か。

 森の愉快な仲間たちの進撃は止まらない。

明日こそ予告通りの筈です!

間に合えば……。

これから書きますし。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやいやペース早過ぎ。 書き溜めって選択も有るんよ? 身体壊さぬ程度に。
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