プロローグ
週一ペースで投稿していく予定です。
21世紀末。
薄氷の様な頼りなさで保ってきた、絶妙な平和のバランスが崩れた。
今となっては、始まりが何だったのか、あまりに情報が錯綜し過ぎて分からない。
ただ一つ、分かり易い事実がある事は確かだ。
第三次世界大戦、勃発。
先進国も後進国も、大国も小国も関係なく、あるいは国どころか武装勢力としか言いようがない物まで含めて、全世界で血で血を洗う、命を命とも思わない凄惨かつ苛烈な闘争が繰り広げられた。
やがて、それは行き付く所まで行き付く。
条約で禁止されていた筈の兵器の解禁に始まり、悪意を煮詰めて殺意で彩ったような新兵器の登場、更には核兵器すらもが平然と降り注ぐ、地獄の戦場が地球上の各地で見られるようになった。
このままでは、地球は死の星となる。地球人類は絶滅の運命を辿る。
誰もが、それを悟っていた。
だが、止められない。
敵がまだいるから。
抵抗の手段がまだあるから。
未来が消えると理解していても、現在を失う事を恐れてそれを止められないのだ。
刻一刻と近付く滅びの時は、しかしある日、突然、力業で悠久の彼方に延期となった。
後に、『始祖魔術師』とも『救世の魔術師』とも呼ばれる者の出現。
その者は、世界に登場すると同時に、摩訶不思議にして圧倒的な力で各地の武装勢力を叩き潰した。
人は死なない程度に、兵器は復元できない程に。
世界中で同時に起こったそれは、明らかに物理法則に即していないそれは、まさに悪夢か奇跡としか言いようがなく、あらゆる勢力の悪意と殺意がその者に向かった。
だが、その全てが返り討ちに遭った。
使用された全ての兵器の悉くがまるで歯が立たないまま、気付けば立つ事すらままならない程に痛めつけられているのだ。
世界が恐怖に沈み、やがて悟る。
勝てないのだ、と。
ならば、恭順を示すしかない。
武器を捨て、戦いを止めれば、理不尽と不条理の魔の手は、自らを守る守護と救済の手へと変わった。
荒廃した土地は、毒素が消え去り、緑溢れる豊饒の大地へと変わる。傷病者は瞬く間に癒えていく。
戦争は、終わった。
だが、その者による変革は、ここからが始まりだった。
その者は、自らの奇跡の力、後に『魔術』と名付けられた技術体系を世界にばら撒いたのだ。
世界中は沸いた。
奇跡の救世主が、自分たちで作れるのだ。
それを欲しない筈がない。
世界各国で『魔術師』の育成に熱狂し始めたのだ。
第三次世界大戦からおよそ二世紀。
時は、24世紀初頭。
熱狂はいまだ収まらず、むしろ長年の研鑽が実を結び始めた事で更に加熱の一途を辿っている。
世界は、まさに英雄の時代。究極の個によって全てが左右される時代へと――
「ならば、その邪悪、我が力で砕いてみせよう……!」
世界は、一人の天才を起点に、激動の時代へと落ちていくのだった。
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