プロローグ
19歳の時、私は死んだ。
趣味はゲーム。日本生まれの日本育ち、普通の大学生だった。
ある日、大学に遅刻しそうで急いでいたら、うっかり車にはねられて、そのまま死んでしまったのだ。
しかしどうした事か、私はもう一度生まれた。所謂転生、という奴だろうか。
幼いころはまだ記憶が混乱していて、自分の状況が掴めていなかった。
しかし成長するにつれて、奇妙な既視感を感じるようになった。この景色、この世界、何処かで見たことがあるような。
周りの人にそれを言っても首を傾げられるばかり。自分では解決出来ない違和感に戸惑うことも多かった。
その理由に漸く気付いたのは、15歳の時。
ふと鏡を見ると、そこには銀髪の少女が映っていた。見慣れた自分の顔……その筈なのに、感じる既視感。
もっと、ずっと前から、この顔を知っていたような。
それも、もう少し成長した姿……今の私が知るはずもない……。
次の瞬間、私の頭に激しい痛みが走り、前世の記憶が蘇ってきた。
それまでのような漠然としたものではなく、私が送ってきた人生や思い出、好きだったもののことまで鮮明に。
それと同時に、とんでもない事にも気が付いてしまった。
この姿に見覚えがあったのは……。
これが、私が好きだった乙女ゲーム『愛憐ルナティック』の登場人物だったから。
名前はコレット・フィリアベール。銀の長い髪は、確かサイドで一つにまとめていた。
今は細身の体つきだが、あと数年でなかなか豊満といえる身体に育つ。
……私の記憶が確かなら、私……『コレット』は……。
主人公をことあるごとを虐める、悪役令嬢だ。