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リーンの日常  作者: Irene
32/40

もてなしは心を込めて!


「………で、これは何だ?」


「かわいいサンタさんの顔のクッキーです。」


「お前ほんとに俺の娘か?どう見たって化け物だろ。」



失礼な。正真正銘貴方の娘ですよ。

その髭をそったら顔そっくりなんですから。




「で、なんでこの、かわいい顔のクッキー(トラウマクッキー)を作ってんだ?」


「クリスマスイブゆえ!村を回る子供たちにお菓子あげるのです!!」


「ついでにトラウマも作る気か?!もういい渡せ!!俺がチョコペンで絵を描くから!!」


「あ、じゃあこっちのやつアイシングするので、もみの木とサンタクロースと天使。よろしくです!」


「お前最初っから俺にさせるつもりだったろ?!」



やだなーソンナコトニャイデスヨー

別に、早朝にいい匂いがしたらつまみ食いに来るでしょうとか。

そして私のデコレーション見てびっくりするでしょうとか。

最終的には協力してくれるでしょうとか。



………オモッテニャイデスヨ?




「お、珍しいな。教会型のクッキーとか。」


「ああ、ほら、確か24日はコンスタンデイヌーポリのアギア・ソフィア大聖堂ができた日でしょう?

それにちなんで作りました!」


「へーじゃあこの歪な奴はラジオか?なんか煙っぽいのあるけど。」


「煙じゃないです。電波です。世界初のラジオ放送を実施された記念に作りました。」


「レジナルド・フェッセンデンが泣くぞ。むしろ呪われる出来だぞこれ。」


「多分そこまでひどくないですからね?!」




た、たぶん。

いや、確かに長方形ですし?ほら、ラジカセをイメージして作りましたからね?

上にちゃんと電波拾うアンテナも付けましたよ?

ちょ、ちょおおっと焦げちゃいましたけど!

あと物足りないので電波をイメージしたパーツも付けましたよ!

………なぜか煙っぽくなりましたけど………

あ、うん。




「お父様画伯、よろしくお願いします!」


「てめえ後で俺のためだけにクロカンブッシュ作れよ!味は色々で!シュー生地もいろんな色だと直良し。」


「いやいや今日は子供たちの演奏を聴くゆえ………」


「それも昼までだよなあ?」


「勘弁してくださいあれ作るのめんどくさいんですよ!?」


「そういや、他の国でのイブはこことあんまり変わんねえけど、日本はすっげえ違ってて驚いた覚えがある。」


「唐突に話しそらさないでください?!って、日本はキリスト教じゃないんですから当たり前では?」


「キリスト教じゃないのに祝ってるあたりでびっくりだがな。

恋人と過ごす日って認識で面白かった。

クリスマスケーキがすごい凝ってて食べ比べしたなあ。

その点、フランスとかでは俺らと同じで家族で過ごしたりするし、

ドイツではクリスマスマーケットがあるじゃん?

グリューワインを片手に、クリスマスの雑貨や熱々のソーセージなどの屋台を巡るのは楽しかったなあ。」


「仕事と言いつつ堪能してるちゃっかりさんなお父様が大好きです。

お土産は今でも飾ってますよ。

シュトレンのレシピ送り付けてきたときはどうしようかと思いましたが。」


「やっぱり娘の手作りが食いてえじゃん。帰る日付と一緒にレシピ送るのは普通だろ?」


「ある年はクリスマスプテイングとミンスパイのレシピでしたねえ。確かイギリスに行ってた時でしたっけ。」


「そうそう、取引先の奥さんにもらったんだよな。サンタにお菓子あげる風習って斬新だったんだよ。

村に帰った時こっちの風習になってたのも驚いたが。」


「一生懸命作る子供たちはかわいかったでしょう?

………結果はともかく。」




普通に物体Xとかできてましたもんね。

それを根性で食べきって寝込んだサンタパパは数知れず………

愛ですねえ。



「お前が小さいころにフィンランド行くことになって、サンタへの手紙預かったなあ。

内容が

《今年こそ捕まえるので覚悟してください!今回の罠は自信作なんですから!!》

だったもんでおやじに全力で土下座したくなったよ。」




遠い目はやめてください、しょうがないじゃないですか。

うちの村での一大イベントといってもいいんですから。

あの頃は純粋にサンタを信じて捕まえようとしてたんですから。

さすがに最後の年はやりすぎましたが。

おじいちゃんがサンタだと知ってたらもっと手加減してましたよ。




「とりあえずその年はユールシンカ(豚肉のハム)を持って帰っておやじに捧げたなあ。

今となってはいい思い出だ。」


「ハハハ。そういえば中学ごろでしたっけ?ポマンダーの作り方教えてもらったのって。

オレンジとかにクローブを刺すだけだったんですけど、あの作業が楽しくて楽しくて!」


「今じゃあ毎年作ってるよな。ルッセカットはもう作らないのか?」


「パンを作るのは苦手なのとサフランの味が苦手なので………

おじいちゃんはたまにこっそり作ってますよ?今度頼んでみては?」


「マジか!今度頼もう!そういや今年のクリスマスのお菓子なんだ?」


「今年は定番のメロマカロナとクラビエデス。あとはブッシュドノエルとパネトーネです。」


「で、追加のクロカンブッシュだな!」


「忘れてはくれないんですねちくしょう。」


「淑女たるものそういう言葉使いはだめだと思うぞ?ん?」


「申し訳ございませんでしたー。」


「よろしい。さて、わが娘よ。デコレーションが終わったぞ。」


「今ラッピングして盛り付けますねー。あと、作りすぎたので玄関にあるテーブルまで持ってってください。」


「………」


「お父さん?」


「はにかんで言う俺の娘がたまにかわいく見えて辛い。」



………普段はかわいくないということですかそれ?

クロカンブッシュの中の一個に特製激辛ソース入れますよ?まったく。




「そういや、小銭の用意はできてるか?そろそろ最初の子供たちが来る時間だぞ?」


「100ユーロ分くらい用意しました!きっと足りると信じてます!」


「俺のダチ去年300ユーロ分使ったって言ってたぞ?」


「あの人お店で使った額を言っただけですからね?!

大通りにあるんですから子供たちがひっきりなしにいくに決まってるじゃないですか?!」


「それもそうだ!っと。どうやら最初の子供たちが来たっぽいぞ?

うちの優秀な犬がチャイム代わりに吠えてる。」


「では持て成して差し上げますかねえ?




後、その手に持ってるハバネロソースはしまいましょおうね?お父様?」



そこ!舌打ちしない!もうすでにジェロキア入りクッキーは仕込んであるんですから!

全部で10個入れましたからだれが当たるのか楽しみですねえ………


と、いうわけでドアを開けてくださいな!




「わ!びっくりした~。」


「ふふ、いらっしゃい、朝早くからお疲れさま。」


「お前らが一番乗りだぞー。」


「やったー。奮発してくださいね?」


「歌次第ですねえ?」




おやおや、自信ありげですね。

二人で目配せして、かわいらしい。




「「いってもいーい?」」


「もちろんですとも!」


「「おはようございます屋敷の主人、

もしもよろしければ、キリスト様の聖なる誕生を告げさせてくださいませ。


本日ビスレエムにてキリスト様がお生まれになります。

空が祝福の歌を歌い、自然が歓びに満ち溢れてます。


洞窟にある馬小屋にて

空の王であり、詩人であるお方がお生まれになりました。


”大いなるお方に栄光あれ”と天使たちが歌います。

そして我らの信仰心はあのお方に(あたい)する………」」


「お二人ともとても素敵な歌でしたよ?

ありがとうございます。また来年お願いしますね?」


「新たな年に祝福あれ!さて、金はどっちに渡せばいいんだ?」


「あ、俺が金担当です!このサンタ帽子に入れてください!」


「じゃあお菓子は貴女にですかね?ちゃんとラッピングしてるから大丈夫ですよー。」


「はい、このおっきいソックスの中に入れてください!」


「「ありがとうございましたー!」」


「気を付けていくんだぞー」




さて、次の子供たちが来るまで後片付けでもしますかねえ?

そして夕方にクロカンブッシュを作りましょう!

今日は忙しくなりますよーー!!




「お父さんそのクッキーは手出し無用です!」


「けちー!!」


例年どうり小銭をかき集めまくってました。

イブ当日も小銭が足らなくなるんじゃないかとハラハラしてました。


最後のやつはイブの朝に子供たちが歌う歌です。


それでは、

感想お待ちしております(ぺこり)

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