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ダウト~偽りの手札~  作者: クロイノ
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1話 謎の封筒

私は中卒で文章力もなく、漢字も苦手です。

ただ書きたいと思って書きました。

誤字や意味の分からない文章があったら、ごめんなさい。


父親は俺の弟が産まれたときに家を出ていった。

俺は2歳だった。顔なんか覚えてない。

離婚した理由も知らない。

そんなやつ覚えてない方がいい。


母親が俺と弟を育ててくれた。

疲れて仕事から帰ってきても、俺たちの勉強を見てくれ家事をこなし凄く尊敬できる優しい母親だった。


あの人の作る甘めの卵焼きが大好きだった。


俺が9歳の時、母親が不慮の事故でこの世を去った。


歩道橋の階段から足を滑らせ落ちたらしい。

その時、弟もそこに居たらしく母親と一緒に落ちたと警察の人から聞かされた。


それから母親に会ったのはとても暗くて寒い部屋だった。

白い布切れを顔に被せられていたから、それを剥ごうとした。

今日の朝まで元気だったのに死ぬわけがない。



布を退かすと、そこにいたのは顔が青白くなったお母さんだった。


『何があっても泣かないで弟を守る強いお兄ちゃんでいてね。約束だよ』


その言葉を思いだしたのに、俺は守れず大声で泣きじゃくった。



親戚の叔父さんが俺にこう言った。


『ゆうひ、弟はまだ頑張ってる。お母さんが、あさひを抱き締めて必死で助けようとしたんだ。あさひの所に早く行ってやれ』


行くと見たことのない弟の姿にまたショックを受けた。


頭には包帯を撒かれ色んな機械に繋がれ、目を閉じたままだ。


また涙が出そうになった。


看護婦さんが近づいてきて『聞こえてるから何か話しかけてあげて』と。


俺は近づいて弟の手を握った。


『あさひ、兄ちゃん1人はやだよ。頑張ってよ、あさひ。頑張れ』


それでもあさひは目を開けてくれず何日も何日も俺は弟に会いに行った。


『あさひ、今日は寒いな。俺の友達の松坂がさ、あさひが誕生日だからって手袋くれたぞ。つけてみろよ!』


何も返事なんか返ってこないけどきっと喜んでるだろう。


『目が覚めたら松坂にお礼言えよ!俺は、叔父さんに夕飯の食材買うの頼まれてるから帰るぞ。叔父さんの料理いつも不味いから、あさひも退院したら食べてみろ(笑)』そう言って帰ろうとした時だった。


機械がウルサク鳴り響いて、頭が真っ白になった。


病室に看護婦さんと先生が走り込んで来た。


見たことのない機械を弟の胸に当てている。


看護婦さんが俺に近付いて『お兄ちゃんは、外で待っててくれる?ごめんね』と言われ病室から追い出された。


また涙が出そうになった。

泣かないよお母さん。

まだあさひは死なない。


そう心で繰り返し思いながら、病室の扉を見つめていた。

あの時、時間が過ぎるのが凄く遅く感じたのを今でも覚えている。


あれから18年の月日が流れ俺は27歳になった。

俺は18になって叔父さんの家を出た。

なに不自由なくこれたのは叔父さんのおかげだ。


普通のサラリーマンになって、

普通に彼女もいて、

普通すぎる生活を送っている。


仕事が終わって帰っているとLINEの通知音が鳴った。


----ゆうひくん!今日は、何食べたい?------


莉奈だ。俺の幼なじみの松坂莉奈。

幼稚園から高校までずっと一緒だった。

あさひの誕生日にも手袋くれたり気が利くいい子だ。

いつも何かあれば話聞いてくれたり、

笑わせてくれたり、こいつには感謝しきれない。


莉奈はたくさんの友達がいて高校を卒業する時も友達の輪の中にいて呼び出す勇気もなく告白できずに俺は1人帰ろうとしていた。


『ゆうひくん!』


離れた所から莉奈が俺の名前を叫んでいる。


『え…』


『ゆうひくん!あたしはゆうひくんの彼女になりたいんだけど!ダメかな?』


『え…』


その鋼の心が欲しい。


『返事は?!』


『ヨロシク、おねがい…します(俺が女みたいじゃん)』


そう返事をした時の莉奈の笑顔がとても可愛かった。


-----今日は、カレーが食べたい--------


そう返事をすると、すぐに


------了解!1500円になります!-----



『たかっ(笑)』


仕事で疲れて帰る重い足が少し軽くなった気がして家に帰るのもあっという間だった。


莉奈が家に着いてカレーを作ってくれる間、俺はニュースを観ていた。


~ニュースです。東京都墨田区での通り魔事件が相次いでいます。犯人は黒の上下のジャージに覆面で顔を隠して………夜の外出を控えるようにしてください~


『ここから結構近いじゃん。こわいね』とカレーの具材を炒めている莉奈の手が止まり不安そうな顔をして俺を見つめる。


『お前もあんま夜出歩くなよ。今日は泊まってここから仕事に行った方がいいよ』


『うん、そうする』


それからカレーが出来上がってコタツに入って食べ始めた。


『やっぱり美味しいな』

『1500円になります』

『だから高いって』

『その値段出せるくらい美味しいでしょ?』

『たしかにそうだけど…』

『じゃあツケにしてあげるよ』

『(笑)じゃあツケで』


このホッコリする時間が幸せだ。


ふと思いついたように莉奈が俺にこう話をしてきた。


『そういえば、あさひくんは元気なの?』


『…実は、連絡ほとんど取ってないんだ』


『いつから?』


『1年前かな?なんかあいつ、したい事があるとか言って俺に手助けとかしてもらいたくないから1人でやりたいからって。自立的な?それから連絡1本もくんねーの、ひどくない?お兄ちゃんなのに。俺が電話しても出ないし。返ってくるのはLINEだけ』


そう言いコタツに寝転んだ。


食べ終わった食器を片付ける莉奈。


『まあ、連絡くれない訳じゃないしね。本当に兄ちゃん子だったよね、あさひくん。』







あさひは、あれから何とか息を吹き返した。

そして数ヵ月後には目が覚めた。

ドラマみたいに俺がいる時じゃなかったけど。

俺は走って、あさひの所に会いに行った。


ドアを開けるときの胸の高鳴りを今でも思い出す。


あさひが戻ってきた。


ドアを開けると座って窓の方を向いていたあさひが俺の方を向いてこう言った。


『お兄ちゃん』


俺は、あさひを抱きしめた。


『お兄ちゃん心配させて、ごめんね』


弟は俺に謝った。


『あさひ、おかえり』


あさひは、事故の後遺症で事故当時の記憶を失っていた。


『お母さんと買い物に行って…そこからなにも覚えてない…』


俺は何となく少しホッとした。

俺のことを忘れないでよかったと。


一部の記憶喪失だけではなかった。

両足も自力で動かずことが出来なくなり車椅子生活を強いられた。


あさひは初めての車椅子に戸惑っていた。


でも弱音は吐かなかった。


上達すると『お兄ちゃん!見て!』と嬉しそうに俺を見つめながら車椅子を走らせる。


お母さん、あさひは凄く強い子だよ。


『毎日リハビリを頑張れば、足も動くようになるかもしれないから望みは捨てたらダメだよ。僕はそういう奇跡を何回か見たことがあるんだ』そう先生から言われた言葉を信じていつもリハビリを頑張っていた。


そして退院する日。


長らく世話になった病院とお別れ。


あさひは泣いていた。

看護婦さん、先生とのお別れが悲しいって。


あさひの車椅子を押しながら俺は微笑んだ。


『あさひ、叔父さんが家で待ってるよ。帰ろう』


流れる涙を、あさひは服の袖でグシャっと拭きとり笑顔で『うん!』って答えた。


あいつの気持ちの切り替えの速さに笑ってしまった。


こうして俺、弟、叔父さん、3人での生活が始まったんだ。3人での新生活。


叔父さんは料理するのは好きだったんだけど、

なかなか上達しない人だった。


彼の初めて作ったカレーの匂い、味を今でも覚えている。


どうしたらあんなものになるのだろうか。


『ぼく、このカレーの味は初めてかも…』とあさひが俺に言う。


『あさひ、これはもはやカレーじゃない』と俺は答えた。


叔父さんは『お前ら分かってねぇーなあ!どれ、どれ。……オエッ!お前らよく食べれたな。今月は給料も少し良かったしな、よし、ラーメン屋行くぞ!靴はけ!』


『やったー!』と大喜びしながら出掛けた。


ラーメン屋に行くまで、なにが悪くてあのカレーになったのか叔父さんは、車椅子を押しながらずっと考えてたな。


楽しい思い出。


叔父さんには感謝しきれない。


あさひが退院して一時して生活に慣れてからお母さんが亡くなった事を伝えたんだよな。


叔父さんから、まだあさひには言うなって言われてたし俺も、あさひが悲しむのは見たくなかったから黙ってた。


ある日、叔父さんが座ってテレビを観てる時にあさひを呼んでこう言った。


『あさひー、肩もんでくれ。』


『いいよー!』


あさひが叔父さんの肩を揉み始めた。


『うまいねぇー。そうそうそこそこ』


『マッサージ屋さんですから』と、微笑むあさひ。


叔父さんは目を閉じた。


『なあ、あさひ。お前の母ちゃんのことだけどな』


『お母さん帰ってくるの?やっと迎えに来てくれるんだね!?』


『いや、そのことなんだが。…それ嘘なんだよ』


『え?』


あさひの手が止まった。


『あさひにすぐ言うと混乱すると思ったしな。あのな、お前たちの母ちゃんはな、もうこの世にはいないんだ。もうな、会えないんだよ。天国に行っちまった』


『なんで?僕のせい?』声を震わせ、そう問いかけた。


『お前のせいでも、母ちゃんのせいでも、ゆうひのせいでも、誰のせいでもない。ただ、そうなっちまったんだ。』



『お母さんに会いたいよ』


叔父さんはその言葉を聞くと振り返り泣いているあさひにこう言った。


『子供には見えないんだがな、今母ちゃんお前の横にいるぞ?母ちゃんは毎日お前の傍にいるし、ずっといてくれるらしいぞ?だから泣かないでって言ってる』


『お母さんがいるの…?』


『悪いことしたら母ちゃんがゲンコツするって言ってるわ(笑)』


『僕いい子でいる…』


『今日は、もう遅いから寝るんだよ。また用事がある時、叔父さんに伝えてもらうから頑張るんだよって。』


『…わかった』


『叔父さんがお前らを立派な人間に育ててやるからな!任せとけ!』


ゆうひの髪の毛をグシャグシャにしながらそう言う叔父さんが凄く頼もしく見える。


隠れて見てた俺もいつの間にか泣いてた。


でも気付かれたら恥ずかしいから、

すぐに部屋に戻ったんだ。


俺は叔父さんが更に大好きになった。








朝の光と鳥の鳴き声。

とても平和な日々だ。


莉奈と目覚め、

ゆっくりと支度をし、

途中まで一緒に歩いて出勤する。


車椅子に乗った男の子が、道路の段差に手こずっているのを発見した俺は、とっさに走り出して声もかけずに後ろから押していた。


『あ、ありがとう…』と戸惑う男の子。


『いきなりごめんね!なんか昔の弟を思いだしちゃって、つい反応しちゃって…。』


『あのね、このお兄ちゃんの弟も車椅子でね、いつも弟の後ろをずっとついて行ってたの(笑)大丈夫か?手伝おうか?ってもう心配症の親みたいに(笑)』莉奈がそう男の子に話すと


『僕のお父さんとお母さんもそうだよ(笑)でも僕は自分でやれるようになりたいんだ』


そうだ。あさひもそう言ってたよな。


『ごめんな!今度は、何もしない!お兄ちゃん応援する!』



そう言うと嬉しそうに『うん』と頷いて手を振り、細い腕で力強く車椅子をこいで男の子は去って行った。


『本当、昔から何も変わってないね』


『ああ…だからダメなんだよなぁ。』

とため息をつきながら会社に向かった。



会社につくと、すぐさま課長が現れた。


『高城!ここの広告の目玉違うじゃねぇか?』

イライラした顔で広告を指差し俺に近づいてくる。


『すみません!すぐやり直します!』焦って俺はその広告を貰いすぐに作り直そうと自分のデスクに向かった。


出勤早々、叱られメンタルも下がる。

最近よく簡単なミスをしてしまう。

もっと責任感を強く持たなくちゃいけないのに。


書類を持ったまま大きなため息をした。

周りを見渡すといつも通りの光景。

俺の職場は変わった人が多い。


例えば、今課長に書類を渡して話してる男、成瀬亮平。

何人もの彼女がいると有名で毎日遊びまくっているプレイボーイ。

この世の女性たちが退屈そうだから俺がみんなを笑顔にしてあげないとっていつも言ってる。


そして俺の目の前の席でブツブツと独り言を言いながらパソコンと睨めっこしているオカッパの女性、西村ともこ。

あまり話したことはないが会社内のメールでよく誘いのメールを俺にしてくる。どうしたらいいのか分からず悩み中だ。


『なに、ボォーっとしてるの!』


『あ、安部さん。すみません。またミスで広告に不備が…』


そう俺に話しかけてきたのが安部かなえというお局様だ。

シングルマザーで俺の母親に何となく重なる部分がある。



『ミスしない人なんていないわよ!今日、課長だって片方の靴下履き間違えて来てるのよ。ウサチャンついてたの(笑)あれこそ恥ずかしいミスよ(笑)』


『ギャップですね(笑)』


笑いで和ましてくれるのも、安部さんの優しさ。


『あ、そうそう』


安部さんは思い出したように俺に1通の白い封筒を渡してきた。


『なんかさっき外でね、高城くんに渡してくれって頼まれたの。男の人から』


表にも裏にも何も書いていなかった。


『誰だろう?』


気になって開けようとしたが、課長が俺をまた呼んでいる。


気付けば会議の時間だった。


『いま、行きまーす!』


後で読もうと急いでデスクの引き出しに入れ会議室に走って行った。


その日は、いつもより忙しく封筒の存在をいつの間にか忘れてしまっていた。

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