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転生課  作者: 之園 神楽
第一翔 窓口業務編
27/31

第27羽 雑話は大雑把です

<業務連絡! 業務連絡! 視点がコロコロ変わります。ご注意下さい!>


「サフィエル先輩、休憩上がりました。お次どうぞ」

 わたしは食事休憩から上がり交代すべく、サフィエル先輩に声を掛けました。

「クラリエル、休憩行くでしょ?」

「サフィエルも今から?」

 丁度そのタイミングで植物班のクラリエルさんもやって来ましたのでサフィエル先輩が声を掛けています。

「ええ、一緒に行きましょうか?」

「そうね。んっ?」

「どうしたのクラリエル?」

「ううん。何でもない。サフィエル、先に行っててくれる? もしかしたら少し遅れるかもしれないから先に休憩取ってて」

「分かったわ」

 おや? 何かクラリエルさんの様子がおかしい気がしますが気のせいでしょうか?

「パスティエルさん、リーイン課長が執務室で呼んでるよ」

「リーイン課長が? 何だろう? ありがとうミサリエルさん。すぐ行ってみます」

 あれ? デジャビューでしょうか? 以前にもこんな感じの光景があったような気がフッと心を過りました。

 う~ん、きっと気のせいですね。一先ず、リーイン課長の執務室に行ってみることにしましょうか。


   ◇


  - 何処かの『界』の何処かの部屋にて -


「なあ、ヌコンの周りの奴らが動いてたりはしないのか?」

「知ってる限りだとそれは無いみたいだよ。ボクが嗅ぎ回ってみたところ、幾つかの異世界とのやり取りが活発になったのも一介の天使が出した企画が切っ掛けらしいしね。そのせいでその天使、仕事が増えて危うく堕天しかかったって話だよ」

「ぎゃはは、なにそれ? おもしれえ、ぎゃはは、堕天だって、ぐふふ、馬鹿かよ、うほほ、腸が裂ける!」

「断腸の思いってやつ?」

「ぐふふ、ワンコロてめえ、ちがってんの分かっててわざと言ってるだろ! 俺を笑い死にさせる気か? ぬほほ!」

「ご両柱とも猿芝居はその辺で本題に入っても良いかな

「ああ、わりいわりい。俺っちとワンコロの仲じゃ、何時もの事だ。気にすんな」

「どうでもよい」

「けんもほろろだね」

「……それで、毛玉が何かやってたやつの件だろ?」

「そうだ。あまり悪戯が過ぎると上も良い顔をせんだろうて」

「なら、嘴でも突っ込む気かい?」

「頃合いを見計らってな」

「頃合いねえ。良く言うよ。鵜の目鷹の目ってやつだね。怖い怖い」

「ふん、実際の所は御供え物の油揚げでもかっさらう気だろ?」

「流石に聡いのう」

「こういう事には鼻が効くんだよ」

「ワンコロ、お前じゃあるまいし」

「まあ、何にしろ、儂らはしばらく高みの見物といきますかな」


   ◇


 - 天界のとある一室にて -


「失礼いたします。わたくし『魔式会社 デーモンマネージメント社』日本支部関東地区担当のデビルオーガの魔鬼悪マキオと申します。『誠心誠意を第一に』をモットーに対応させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。魔神の『魔』に、鬼神の『鬼』、悪神の『悪』で『マキオ』と読みます。いやぁ、正に神がかりな名前ですよね。あっ、これ名刺です。よろしければどうぞ!」

「これはご丁寧に。初めまして、総務課課長のキクスです。で、どのようなご用向きで?」

「実はですねヌコンさ……」


   ◇


 - リーイン課長の執務室にて -


「失礼します。天使パスティエル、来ました」

「うむ、楽にしてくれたまえ」

「はい。ありがとうございます」

 わたしは勧められた席に腰を下ろします。

「実はのう。パスティエル君に頼みたいことがあるんじゃがのう」

「はい。何でしょうか?」

 何か嫌な予感がしますね。

「ここ最近、異世界との交流が活発になって来ていてのう」

「ええ、そうですね。今世紀採用のわたしが見ても急激に増えているように見受けられます。まあ、全体数から見れば微々たるものではあるのですけど」

「うむ、そうじゃな。でだ、我が神界も各異世界との交流が少しづつ増えてきたことで、この流れを積極的に加速させてみようかと言う意見があってのう」

「はあ」

 何か雲行きが怪しくなってきました。

「そこでパスティエル君には通常業務とは別に各異世界へ指定した数の魂を特別に選定して、必要な能力や恩恵などを付与して転出させて欲しいのじゃよ」

「それなら通常の異世界への転出手続きとあまり変わりないのでは?」

「テストケースになるのでな、本来同世界へ転生するはずの魂から選出して欲しいのじゃよ」

「良いのですか?」

「うむ、先方とは話が付いておる。じゃが、送られる魂には申し訳がないのでな、一つだけじゃが、要望に添う様にしてやってくれ」

「はあ」

 これ結構手間が掛かる作業になりそうですね。

 ついノリでやってしまいましたがもしかして『炎と鍛冶の神ヘパイストス作 黄金の椅子』のレプリカの一件をまだ、根に持っているのでしょうか?

「あまり送り出すまでに時間が無くてのう。よろしく頼む」

「はい。分かりました。それでは失礼します」

 はあ、残業決定ですね。


   ◇


 - クラリエル視点です -


「それでは今後ともよろしくお願いいたします」

 眼鏡を持ち上げて「キリッ!」という効果音が鳴りそうな姿勢の蒼い肌に角と蝙蝠の様な翼を生やした男性がにこやかに右手を出して総務課のキクス課長に握手を求めている。

 如何にも営業マンと言った感じなんだけど、白いYシャツに赤いネクタイというオーソドックスな上半身の背中から出ている蝙蝠の様な翼が天界の者ではない事を物語っていた。

「こちらこそ。気を付けてお還り下さい」

 それに対し、総務課のキクス課長が同じく穏やかに笑みを浮かべてそれに応じています。キクス課長はあたしがヨーロッパ本部の総務課に在籍していた際の上司で、訳あってこの日本支部に異動となりました。

「では失礼いたします。いやあ、家に還って、お笑い番組の『来年の話』を見ないと」

「……良いお年を」

 あたしはお客が還ったのを見計らってキクス課長に声を掛けてみることにした。

「キクス様!

「んっ? やあ、クラリエル君、久しぶり。また一段と綺麗になったね」

 相変わらずの優しい笑顔。

「……茶化さないで下さい。それよりも先程の方は?」

「んん、ああ、見ていたのかい。『日本神仏界』の『地獄界』の営業担当さんだよ。彼、魔族と鬼のハーフなんだそうだ」

 神と魔は相容れない様に思われがちだけど、魔は神の一面を分離した存在だったり、 他の地域での神が対立勢力側では魔となったり、ある地域で魔だったものが地域を移ることによって受け入れられたり、形質を変化させたりして入れ替わったりするので意外と交流はある。

 直接の関係が薄かったりすると殆ど影響もない。なのでそれ自体は何も問題は無い。

「……そうですか」

「それにしても、転生課はどうだい? うまくやれているかい? まあ、キミの事だから心配はいらないと思うが。君もヨーロッパ本部にいれば来世紀大天使昇進間違いなしと言われていたのにわざわざ私と同時期に日本支部に異動希望を出さなくても……」

「キクス様」

 問題は無いのだけど、何かが引っかかっていて、

「ん、何だい?」

「あまりご無理をなさらないで下さい」

 気が付けばあたしは、キクス様の胸に飛び込んでた。

「……私はそんなに無理をしている様に見えるかい?」

 キクス様が背中に手を回して抱きしめてくれる。懐かしい感覚。なのに何故か不安が募る。何でだろう?

「そういう言い方はずるいです」

 だから、

今はこのままで……。


   ◇


 - 転生課事務室にて -


「さて、どうやって候補を選びましょうかね」

 あまり時間がないと言っていましたし

 書類選考とかしてる時間はなさそうです。

 もっと簡単な決め方はないですかね。適当に物質界の人間社会での決め方を見て見ましょうか。

 ……。

「んっ、サイコロですか。これなんか良さそうですね。早速物質界の日本の人間社会から取り寄せてみることにしましょう」


   ◇


 - 転生神 リーイン課長視点です -


 サホックのやつが異世界の神々との賭け事で負けた分の精算に、物質界の魂を幾つか神の権限において例外的に転出させる事になった。

 パスティエル君には異世界との交流が活発になって云々などと対面の良い事を言ったが、あまり真実は聞かせられんのう。

 まあ、交流による魂の成長を期待するという意味では間違えてもおらんので何とも言えんところなのじゃが……。


 ガツガツガツッ


 新米天使のパスティエル君が行った異世界転生であることは大ぴらに知られても良いのじゃが、いや、むしろその方が良いのじゃがな、その転生者が転出先であまり力的に悪目立ち過ぎ目を付けられては困るので、能力的には多少目立つと言った程度のものにしかしてやれん。

 じゃが、神々の勝手で異世界転生させてしまう物たちに歪では有るが恩恵を付けるべきじゃろうて。

 その辺の指示はパスティエル君にはしておるし、逐次気に掛けて覗いてもおる。

 言っておくのじゃが、疚しい気持ちからでは断じてないぞい。


 ムッシャ ムッシャ ムッシャ


 何やら決めるのに物質界の人間社会で遊戯に使われている『サイコロ』を使うことにしたようじゃのう。

 パスティエル君が選ぶ魂は実はサホックが密かに選び、パスティエルの元に回るように仕組んでるので一応サイコロのランダムでもはずれは無い。

 儂も事前にチェックはしておるので、それにより更にまともそうな者を選ぶように仕向けた。

 がもちろん、バランスを取る為サイコロにも気付かれない様に干渉しておる。

「はっはっはっ、勝負事は始める前に勝てる状況を作っておく事こそが重要なのだよ!」

 食事休憩に儂の執務室に押しかけ、目の前で烏賊墨スパゲティーとサイコロステーキを食べながらスルメイカを齧り豪快に笑うサホックがソファーにふんぞり返っておるわい。

「何じゃその出鱈目な取り合わせは?」

「気まぐれだ、気まぐれ」

「まったく、お主というやつは……協力するとは言ったがのう。何やらキクスも動いておる様じゃし」

「おうよ。ここが勝負どころってな。がっはっはっ!」

 再びスルメ烏賊を豪快に齧るサホックを見ながらため息を付く。

「任せたぞい。他称『賭け事に滅法弱い勝負の神』よ」


 ムッシャ ムッシャ ムッシュ


「最後の音おかしくなかったかのう?」


     ◇


 - 広報課ロムエル視点です -


「はい。お久しぶりです! 広報課のロムエルです!」

 今回は支部内広報誌『天使の見る夢』の企画として『神様インタビュー』と題して神様方からコメントを頂きたいと思っています。

 ですが、新天使では神界の区画に入る事はできませんので、天界に来られる神様に片っ端からお願いしてぶら下がり取材をさせてもらうしかないですかね。

 さて、取材の前にやはり天使関係の発声練習、やっておきましょうか!

「ア・イ・ウ・ル・ラ、エ・レ・リ・オ・ロ」<だから天使関係じゃなくて、点字関係では?>

 ついでに滑舌の鍛錬! 天使の早口言葉いってみよう!

「天使・大天使・権天使、能天使・力天使・主天使、座天使・智天使・熾天使♪」

 よし、それでは行ってみましょうか!


   ~   ~   ~


『支部内広報第1弾!』


「今回は守護課課長で、医療の神であらせられるヤフシス様におこしいただきました。ヤフシス様よろしくお願い致します」

「うむ、任せなさい。では、服を脱いで診察台に横になって」

「……いえ、診察では無くて、インタビューをお願いしたいのですが」

「何だ、それならそうと早く言ってくれれば良いものを」

「……えっと、改めまして、それにしても医療の神様って、怪我は兎も角、神界では病気が無いのに、どうやって病気の事を学んでいるんですか?」

「それは、日々たゆまない人体実っ……」

「有難うございました!」


    ~   ~   ~


  『支部内広報第2弾!』


「今回は、秘書課課長で勝負の神であらせられるサホック様におこしいただきました。サホック様よろしくお願い致します」

「よろしくな」

「勝負の神サホック様にお尋ねします」

「おうよ」

「座右の銘は何ですか?」

「『出たとこ勝負!!!』」

「……」

「あとは、『運を天に任せる』。他には、『苦しい時の神頼み』だな。それかっ」

「有難うございました!」


   ~   ~   ~


 はあ「……うちの神界って、こういう神様ばかりなのかな? 就職先間違えたかも」

「どうしたの? 確かあなた、パスティエル達と同期の広報課のロムエルさんだったわよね」

「あっ、パスティエルちゃんの先輩のサフィエルさんですよね。実はですね……」

 ……。

「ふ~ん、なるほどね」

「こんな神様ばかりで大丈夫でしょうか、うちの神界?」

「意外といるわよ。他の神界にも。例えば、そうねぇ、人間と喧嘩して負けちゃう戦いの神様とか」

「はあ」

「神様はね、ある分野に対して超越した力をお持ちで何かに一途に邁進される傾向が強い方々よ。だから凄い事をされる代わりにそれ以外の事に無頓着になられがちになったりすることも多いのよね。だからこそそれを支えるサポート役として私達天使がいるのよ」

「まるで子供みたいでしょ。でもだからこそ、支え甲斐があるわ」

「クラリエル様」

「クラリエル、何処に言ってたの?」

「うん、ちょっとね♪」


   ◇


「じゃ~ん、メルエルちゃん。と言う訳で物質界から入手してみました。100面ダイスです!」

「ボールみたいですねぇ」

「良く転がりそうなので廊下で転がしてみましょう!」

「そうですねぇ」

「では、いきます!」


 コロコロコロコロコロコロコロコロコロ……


「……このサイコロ、振ったは良いですが」

「本当になかなか止まらないですねぇ」

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