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転生課  作者: 之園 神楽
第一翔 窓口業務編
23/31

第23羽 企みは大迷惑です

<業務連絡! 業務連絡! 今回は転生神 リーイン課長視点です>


 儂はパスティエル君が業務改善案で獲得したローマ・ギリシア神界旅行に行っている間にサホックから真意を聞く為に神界にあるサホックの執務室を訪ねていた。

 神界側にあるそれぞれに割り振られた執務室であれば、天使は足を踏み入れることが出来ないし、他の神にも話を盗み聞きされる心配が無いからのう。

「で、一段落着くまでは待ってほしいと言う事じゃったので試験運用が始まるまではと何も言わず黙っておったが、そろそろ納得のいく説明をしてもらえるんじゃろうのう」

 机を挟んで向かい合うようにソファーに座り、しばらくの沈黙の後儂のほうから話を振ることにした。

「まあなんだ。そう慌てることもあるまい。キクスもまだ来てねえし、もう少し寛いじゃどうだ?」

「……」

 随分待ったと思うんじゃがのう。

 その言葉に 儂はサホックを正面から見据え沈黙で返す。

「ああ、なんだ。パスティエルって言ったか? 可愛い娘じゃないか」

 儂の沈黙に耐えかねたのかサホックが顔を逸らし口を開いた。

「それで?」

「え~と、ほれあれだ。『可愛い娘には無理をさせろ』って言うじゃないか」

「惜しいし、意味も遠くないのかも知れんじゃろうし、(わざ)と言ってるんじゃろうが、一応『かわいい子には旅をさせろ』じゃからな」

「だから今旅行中だろう」

「お主は、まったく……あやうくその旅行に行っておるうちの可愛い新米天使が堕天しかかったのじゃからな。ちっとは反省してもらいたいものじゃが」

「だから詫びに」

「はぐらかすのはそのくらいにしておきませんか。あまり度が過ぎるとリーインの雷が落ちますよ」

 その言葉に扉の方に目をやると、何気ない動作で総務課のキクスが室内に入って来た

 それにしてもいくら気配が取れない造りの部屋とはいえ、中からはある程度は取ることが出来るこの部屋に扉を開けるまで儂らに気配を気付かせぬとは、相変わらず油断のできない奴じゃの。

「おお、それはクワバラクワバラ。それにしてもなかなか良いタイミングだな。立ち聞きでもしてたか?」

 おどけたようにサホックがキクスに向き応える。

「クワバラ? ああ、日本の人間種の雷除けのおまじないでしたか? 現在では魔除けでしたっけ? それにしても立ち聞きとは神聞きの悪い事を言いますね。神でも部屋に入るまで聞こえない造りでしょうに。リーインの態度を見れば大体察しは付きますよ」

 サホックの問いに対し、淡々と返事を返しながらソファーに近づきキクスもサホックの隣に腰を下ろした。

 サホックもキクスが来たことでようやく話を進める気になったのか先程のふざけた様子が少し鳴りを潜め真剣な表情を浮かべている。まあ、あくまで「少し鳴りを潜めた」程度じゃがな。

「実はな、密かに進めていた『ルーンルイエ』とのルートが正式に繋がってな」

「ルーンルイエ?」

「それを今回の『神速連絡便による物資輸送』のルートの中に自然な形で組み込ませてもらったという訳だ」

「まさかヌコンの件か!!!」

「おうよ」


~   ~   ~


「で、今回は何をやって負けたんじゃ? サホックよ」

 業務企画案の説明を終えた天使が退出したのち、次の天使の番まで少しの時間を取ることになり、儂は隣に座っている旧知のサホックに話掛けた。

「いやぁ、『しんけいすいじゃく』でなぁ」

「……冗談のつもりかのう?」

「いやいや本記だ。相手の双子女神が息が有っていてな」

「……お主、それは本当に神経衰弱か? 神経衰弱に息を合わせる必要があるのか?」

「いやぁ、まいったまいった。垂迹(すいじゃく)は俺には向いてないな。わっはっはっ!」

「……」


~   ~   ~


「……あれか」

「おうよ! 負けるが勝ちってな」

 食えない笑顔を浮かべてサホックが豪快に笑った。

「で、ヌコンの所在は?」

「跳ばされた場所が分かった。正確な場所までは分からんが、手がかりは有る」

 その為にいろいろ暗躍していたと?

「はじめにリーインに話すと絶対反対するとおもってな」

「当たり前だ。あまり派手に動きすぎれば相手にけとられる」

「とは言っても下準備は必要だろう?」

「それは解っておる。あやつらにいらぬちょっかいを出させぬように長い間大人しい振りをしておったのじゃからな。じゃがここにきて派手に動くのはマズいのではないかのう?」

「だからこそ、今回の企画が生きて来るという訳だ」

「じゃがな、こんなやり方で進めれば、儂の反感を買うのは解っておるのじゃろう」

「そんな事は充分承知している。それでもエードゥの奴らに悟られずに事を進めんとならん状況だ」

「それにしてもあからさま過ぎやしないかのう?」

「だから他にもカモフラージュとして幾つかの異世界と同時にルートの締結を行った。それにエードゥの奴らも密かに動いている節があるからな。悠長にしていられなくなってきた」

「なんじゃと!それは本当か!!」

 儂は思わず身を乗り出してサホックに問いかけていた。

「ああ、本当だとも。『日本神仏界』からの情報だ。そういう訳で、正にパスティエルちゃんの提案は俺達にとっては『渡りに船』となった訳だ」

「うーむ」

 儂は大きく唸るしかなかった。ここにきて数千年、動きが無かったものが動き出した様じゃのう。

「そう言う事で一介の天使の企画という点を大々的に広報課として宣伝したからな。パスティエルちゃんには大いにカモフラージュとして動き回ってもらわんとならん。今回の旅もその一環だ。思う存分楽しんでもらおうじゃないか」

「その為に私費の旅行ではなく、試験運用のテストを兼ねるという半ば仕事としてかなりの経費まで付けたんですからね」

 それまで沈黙を守っていたキクスが口を開いた。

「うーむ」

 儂はソファーに深く座り込み目を閉じ唸りながら考えた。

「この件に関して、秘書課と総務課は、全面協力すると約束しよう」

「それ以外にも、他の課にも必要とあれば協力するようにこちらからも働きかけますよ」

 しばらくの重い沈黙と思考の時間。

 儂は閉じていた目をゆっくりと開けてサホックとキクスを見据えて短く承諾の意を伝えた。

「仕方あるまい」

「で、リーインの賛同も得られたところで早速なんだが、実績を作らないといけなくてな。賭けに負けた分の取り立てで各異世界に幾つか魂を送らなければならなくなってな」

 儂が承諾した途端、表情をいつももの様に戻し悪びれもせず、サホックが言い放ちおった。

「リーインよ、この通りだ。『苦しい時の神頼み』だ。頼む!」

「はぁ、お主、神が神頼みするでない!」

 儂に向かって手を合わせて拝むサホックを見やり溜め息をつく。片目を瞑るでない。お主がやっても可愛げが無いわい。むしろ逆効果じゃ!

「いやぁ、異世界の神々はどこも賭け事が強い強い!」

「白々しい。はぁ、で、今度は何で負けたんじゃ?」

 そのわざとらしさに思わずため息が出るわい。こやつは「賭け事が何より好きだが滅法弱い神」のイメージを定着させるのに千年以上もの時間を費やしておる。

「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な! て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り!」

「……おい、勝負の神! お主、何処の神に頼るつもりじゃ?」

「運を天に任せる?」

 ……本当にイメージ造りだろうな? 流石に長すぎて儂でも怪しくなってきたわい。

「こやつ、本当に元戦神じゃったのか? お主、日本神仏界の修羅界に口添えしてやるから一遍鍛え直して来る気はないかのう? 管理職研修先にどうじゃ?」

「……そろそろ身体も鈍りだしていたところだ。なかなかに素敵な提案だな」

 一瞬だけサホックがニヤリと笑いおった。


   ◇


  - 何処かの『界』の何処かの部屋にて -


「で、『実験』とやらは成功したのかい?」

「ああ、100匹を数えた辺りで眠くなっちゃったけどね」

「それじゃあ第一段階は成功と言う事で、次に進んでも良いわね」

「しばらくは大丈夫じゃないかなあ。その辺は実験体が自主的に動いてくれるとボクは思うよ」

「毛玉。お前何か仕組んだのか?」

「仕組んだなんて神聞きの悪い。仕込んだと言ってよ」

「違いが解らないのだけど」

「ふん。いつも眠そうな面してやがるくせに、相変わらず油断ならねえ」

「酷い言いようだねえ。ボクは只水面に石を投げ込んだだけだよお。後は勝手に波紋は広がるというものじゃないかなあ。キミも行動したかったら威を借るだけの腹心でも動かしてみたらあ?」

「うるせい毛玉」

「でも他の連中も動いてるみたいだし。……う~ん、私はどうしましょう? う~ん。う~ん」

反芻(はんすう)しているのは良いけど、そろそろボク眠くなってきちゃったよ」

「ほっとけ! こいつは考え出すと長いわ遅いわ。どうにもならん」

「本当、酷い言い様だね『門』の相方に。まあ、しばらくは様子を見ようじゃないか。『夢』と『波紋』は広がるに限るってね」

「ふん」

「眠っているネコンはどんな夢を見ているのかなあ? 楽しい楽しい『夢』の続きを」


   ◇


「そこの薄紫のツインテールがチャーミングなお嬢ちゃん! 浮気性の彼氏に効果覿面! 天罰覿面! ギリシア・ローマ神界の名物土産『アダマスの鎌』のレプリカは? お守りに一つ、どうだい!」

「へえ、面白そうですね。どれどれ」

<ひっ!>

「どうしましたか?」

<いっ、いや別に何でもありません>

「そうですか。では『アダマスの鎌』のレプリカを一つ買って行くとしましょうか……んっ?」

<どうしたの?>

「……何でしょう? 何となく嫌な予感がします

<……そう……だね>

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