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コンビニたん  作者: ウナ
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2日目 【温めますか?】

【2日目:温めますか?】






AM2:15


深夜のコンビニは滅多に客が来ない。

品物の補充やらトイレ掃除やらが終わると基本暇なのだ。


「沼津くん」


珍しく神妙な顔つきで伊東くんが声をかけてくる。


「ん?どうした?」


「ボクは気づいてしまったんだ」


「ん?」


何をだ?時給が安いことか?


「女子高生って素晴らしいよね!!」


「は?」


「女子高生って素晴らしいよね!!」


「いや、聞こえてるから」


普段は死んだ魚の目をしている彼が活き活きとしている。

そう、彼はムッツリ童貞野郎なのだ。


「沼津くんもいいと思わないかい?ミニスカから見えるあの太もも」


「いや、判らんでもないけど、どうしたいきなり」


「ボクがこんな時給の安いバイトを、

 3年も続けているのは何故だと思う?沼津くん?

 仕事終わりに登校中の彼女達に会える、太ももを拝めるからさっ!」


「お、おぅ……そうか、良かったな」


伊東くんは見た目だけならイケメンに分類されるはずなんだが、

この性格のせいか、モテた事は1度も無いそうだ。

しかし、一瞬しか会わないパートのおばちゃん達からは人気が高い。

見た目は某ハリーなポッターだからな。


「ボクはね、将来なりたいものがあるんだ」


「ほぉ、学校の先生とかか?」


学力が高く、女子高生好きの彼の事だ、そんなとこだろう。


「いいや、そんな面倒なものにはならないさ……

 そう!ボクは高校が近い図書館の司書になる!!」


「司書?」


「そう、司書だよ、沼津くん」


「女子高生が見れるから?」


「愚問だね……それ以外に何があると言うのだい」


「だよね、知ってた

 でも、なんで司書なんだ?教師じゃダメなのか?」


俺の問いに、彼は待ってましたと言わんばかりに語り始める。


「いいかい?高校の教師になんてなってみなよ

 クソむかつく野郎達の相手をしなくちゃいけないじゃないか

 それにね、DQNがいたらどうするんだい!ボクは逃げるよ!

 その点、図書館はいい……真面目な人が主な客だしね

 そして、図書館で勉強しているのは女の子が多い!!

 いいかい、沼津くん……ギャルは女子高生にあらず、判るかい?

 女子高生とは化粧っ気がなく、まだ幼さの残る細い髪と、

 色気が備わってきた、いわば完璧の美の存在なんだよ!!」


「長い、一言で頼む」


「女子高生 is 正義(ジャスティス)!」


「なるほど、理解した」


彼は真の女子高生好きと言える男だが、

見ているだけで満足してしまうド変態でもあるのだ。

触れるなんて犯罪じゃないか、と変なところだけ常識人なのである。


そんなくだらない会話で時間を潰していると、1人の客が店を訪れる。


「いらっしゃいま…………せ」


入ってきたのは20代後半の女性1人。

恐らく風呂上がりだろう、ホカホカと湯気が上がっている。


そして……ベビードール1枚しか着ていない。


スケスケすぎて、色々見えてしまっている。

とても目のやり場に困る客だった。


「沼津くん!沼津くん!」


と、伊東くんが耳打ちしてくる。

まぁ興奮するよね、彼なら。


「なんて奴だ、このボクにあんな醜い裸体を晒して……」


あれ?ダメなの?綺麗な女性だよ?


「あんなたるんだ裸なんて見たくないんだよ!」


まぁ……女子高生と比べちゃ若くはない……よな。


「でも初めて生で女性の裸を見た、これは……来るね」


「どっちなんだよ!」


思わずツッコミを入れてしまった。

そして、伊東くんは前かがみになっている、判りやすい奴だ。


「ってか、あれはいいのか?通報した方がいいのかな」


「え、服は着てるからいいんじゃない?」


「着てる……と言えば着てるが、見えてるぞ?」


「そうだね、丸見えだね、丸見えだね、沼津くん」


何故2回言った、大事なことだからか?


「あ、こっち来る、レジやる?」


「任せてもらおう!」


伊東くんはやる気満々でレジに立つ。

他のも立っているが気にしないでおこう。


「いらっしゃいませ」


「可愛い坊やね」


「あ、ありがとうございます」


ピッ、ピッとバーコードを読み取って行き、

合計金額を言ってから伊東くんは聞く。


「こちら、温めますか?」


「私を温めて欲しいんだけどな」


「ははは……からかわないでください」


「残念、お弁当だけお願い」


「はい」


すかさず俺がフォローに入り、弁当を受け取りレンジに入れる。

45秒という時間が妙に長く感じながら、チラチラと客を見てしまう。


「ふふふ、見てもいいよ?」


この客はあれだ、痴女ってやつだな。


「いえ、寒そうだなと思いまして、

 風邪引かないように気をつけてくださいね」


俺は温まった弁当を袋に詰めて手渡す。


「ありがと、また来るわね~」


ひらひらと手を振りながら去る痴女。


「ありがとうございます、またお越しくださいませ」


それを見送る俺と伊東くん。

なんだかどっと疲れた気がした。


「……何かすごい客だったな」


「そうだね……あ、ボクちょっとトイレ掃除してくる」


「……行ってら」



24時間、コンビニは営業中。




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