ルック・オンリー・グッドポイント
「候補者は3名になります。」
フレイヤは厳かに告げた。神は自然と身を乗り出すように聞いている。その3名がこれから自分と苦楽を共にする相棒ともなれば、どんな情報も聞き落すまいとするのも無理からぬことだろう。
「ちなみに、この3名はすでにそれぞれの理由で命を落とした故人です。未練のあるなしは分かりませんが、地球で生活している人間を無理やり転移させるわけではないので、納得して冒険に出やすいでしょう。」
「うむ!つまり今回は異世界転移でなく異世界転生になるのじゃな!」
そのあたりの区別に厳しい神様であった。
「そうですね。赤ちゃんから始めるわけではないですが、新たな生を授かるという意味では転生となるのでしょう。」
「そうさな。転生したらすぐに冒険したいからの。そやつが亡くなったくらいの年齢で転生させるとするか。さすがにじいちゃんばあちゃんはおらんじゃろ?」
「ええ。全員が15~17歳の青年ですよ。」
「素晴らしい仕事っぷり。さすがフレイヤは分かってるの。」
「お褒めに与かり光栄です。」
そんなことで褒められても欠片も嬉しくない。そんな思いを一切感じさせない表情で応える。フレイヤはこう見えて主君を立てる気遣いができる理想の部下であった。
「では早速、候補者の1人目を紹介しましょう。1人目は御剣 聖也16歳男性です。」
「おお!すごい!主人公っぽい名前!!」
神にとってこれは高ポイントだったようで、目が輝いている。神性を封印してからだんだんと幼児化してないか、とフレイヤは薄っすら疑ったが、どうでもいいかと先を続けた。
「主人公っぽいのは名前だけではありませんよ。彼は日本と欧米にある小さな国とのハーフとして生まれましたが、なんと母方はその国の王族にあたる方です。」
「おお!!」
「さらに父も日本古来から存在する伝説の”御剣流”の伝承者です。」
「み、”御剣流”!?」
「はい。世界最強とまで言われる剣術の流派でして、刀が廃れた今となってはまさに伝説と化した存在です。その中で御剣聖也は幼くして父の実力を上回り歴代最強とまで言われています。」
「す、すごっ!!御剣聖也すごっ!!」
まるでテンプレの化身だ、と神様は震えた。主人公になるために生まれたとすら思える。
「さらにハーフだけあってモデルや俳優が裸足で逃げ出すような美青年。困っている女性は放っておけない正義感をもつ心優しい青年。頭の回転も速く、常識に囚われない柔軟さも持ち合わせたハイブリッド仕様。いかがでしょう。」
「盛り過ぎなくらい盛っとるな・・・。逆になんでそんなやつが若くして死んでもうたんじゃ?」
「お付き合いしている女性に刺されました。」
「・・・は?」
一瞬にして周囲の空気が冷めた。先ほどまで彼でほぼ内定くらいの状況だったというのに。
「今申した通り、百年に1人くらいの美青年な上に優しい性格も相まって、非常に多くの女性が彼の虜となりまして。」
「ま、まぁそれはそうじゃろうなぁ。なんたって”御剣流”じゃもん。それも無理からぬことよ。」
流派は関係ないことだろうが、神の中で”御剣流”はかなり高評価だった。今のトレンドワードのトップを飾っているのだ。
「その流れで、彼も射止めた女性すべてに中途半端な姿勢をとっていましたので・・・。」
「その点も昨今の主人公らしいっちゃあらしいな。あまりに鈍感なやつは我は好きになれんが。」
「まぁ彼は半ば理解しつつキープ状態だったようですが。」
「女の敵じゃな。そりゃ刺されても文句は言えんわ。でも御剣流じゃろ?責任とってわざと刺されたんか?」
「いえ。違いますね。一対一だと簡単に刺されるような彼ではありません。女性側もよくそれを知っていたので、思いを同じくする女性同士手を組んだそうですよ。」
「なんじゃ、2~3人でぶすっとやったのか。女の恨みは怖いのう。」
「いや、そんな生半可な人数ではありません。ハーレム全員の共闘によるめった刺しです。」
「怖っ!!!怖過ぎじゃろそんなん!!ハーレムって何人おったんじゃ!?」
「ざっと500人くらいですね。」
「とんだすけこまし野郎じゃ!!」
「で、どうしますか?彼にしますか?」
「却下!そんなやつ却下じゃ!!」
ある意味で主人公にふさわしい規格外かもしれないが、転生した先でも同じような展開になる気しかしない。神様は地雷を避けるが如く、彼の採用を見送った。
「では2人目を紹介しましょう。彼も御剣聖也に負けず劣らずの主人公体質ですよ。」
「おっ!ええのう!どんなやつじゃ?」
「名は我龍院 影丸。17歳男性です。」
「またすごい名前じゃな!名前から厨二病感があふれ出ておるけども!!」
「歴とした実名ですよ。それに、厨二病感が溢れるのはここからです。」
「なんか逆に心配になるのう・・・。」
「我龍院影丸は古くから日本に存在した伝説の最凶暗殺術”月影”の継承者です。」
「また伝説が出た!!」
「ちなみに御剣流の十倍強いです。」
「物語のプロローグでインフレが始まっとる!!」
神様のトレンドワードが御剣流から月影に更新された瞬間であった。
「まぁ御剣流は表の世界で騒がれているとしたら、月影は裏の世界に君臨する頂点。その中でも他の追随を許さないほどの実力を持っているのが我龍院影丸です。」
「なんかすごいのだけは伝わってくるんじゃが・・・。」
御剣聖也も我龍院影丸も設定を盛り過ぎて、今や神の頭はキャパオーバー状態になってしまった。本当に全知であったのか疑ってしまう。
「しかしさすがに暗殺術の使い手はなぁ・・・。頼もしい反面、暗殺者じゃろ?ちと怖いなぁ。」
「その点はご安心ください。彼は裏世界の頂点ということは事実ですが、実はまだ一人も殺していません。」
「なぬ!?それは何故じゃ!?」
「初めての殺しの任務の際、ターゲットになった人物に・・・恋をしてしまったからです。」
「な、なんつーロマンチックな展開!?」
もはや陳腐とすら言えるほどのラブストーリー。しかし、それくらいベタベタな展開が神様の好みだった。
「殺すべきターゲットに恋をしてしまった我龍院影丸。さらにその恋した人物に命の大切さを説かれ、己の人を殺す為だけに鍛え続けた地獄のような生涯に初めて疑問を持ちました。そして悩みに悩んだ挙句、彼はもう誰も殺さなくていいように裏世界に蔓延る人の形をした悪鬼羅刹共を不殺の精神で制することに決めたのです。」
「ねぇそれホントにノンフィクション?フィクションじゃないの?」
「フィクションの原点が何をおっしゃいますやら。」
「失礼なことを言うでないわ!!」
確かに人間にしてみたらフィクションの原点は自分だろうと、とりあえず我龍院影丸の存在を神は信じることにした。
「事実は小説より奇なりとはよく言ったもんじゃなぁ。」
「えぇ本当に。では、彼に致しますか。」
「う~ん・・・。主人公としたら御剣聖也を上回る適役ではあるが・・・。」
神はこの数分のやり取りでひとつ学んだ。うまい話には裏がある。フレイヤのことだ。おそらくまだ隠している情報があろう。神は腹心の部下を疑うことが出来るようになった!全く嬉しくない成長だった。
「・・・フレイヤ、そやつの欠点は何かないのか。冒険をする上で障害となるやもしれぬ要素は?」
「欠点、ですか。神様、人間関係の基本は相手の良い所を見ることですよ?」
「ええぃ!ここに来て急に正論をぶつけてくるでない!!いいから隠している情報を出せ!!」
「はぁ・・・。隠しているわけではないのですが・・・。そうですね。欠点と呼べるかは分からないですが・・・。冒険の障害となりそうな要素ならひとつ。」
「ほれみぃ!!あるではないか!!その要素を申せ!!」
「はい、実は彼は相当な・・・男色家です。」
「は・・・?」
御剣聖也を超える衝撃の告白。神にできることはもはや固まるだけであった。
「実は恋したターゲットというのが、かなり見目麗しい・・・男の子でして。」
「なっ!!」
「正しくは男の娘でしょうか。まぁとにかくその男の娘は裏世界の頂点である我龍院影丸に暗殺依頼が来るほどの人物でした。そこで『何故暗殺の依頼が来たのか』が問題となるわけです。」
「なんじゃろ・・・要人の息子(?)だったとか?」
ありきたりな発想しかできない。全能を失ったからというより、衝撃の情報が多すぎて処理しきれなくなったからだろう。そんなありきたりな答えはやはり違ったらしく、フレイヤはかぶりを振って否定する。
「全く違います。その男の娘は実は・・・裏世界の要人を次々に篭絡した性豪だったのです。」
「せ、せせせ、性豪!?」
どうやら神様は下世話な話に耐性がないらしい。ホントに大丈夫かこの神様、とフレイヤは思いながら更なる情報を告げる。
「我龍院影丸がターゲットに恋した、というのも実は柔らかい表現に変えていました。実際はその男の娘の性技に返り討ちにされ、篭絡されたのです。」
「情けない!!何のための地獄の日々だったんじゃ!!」
見ても聞いてもない訓練を夢想して戦慄していた神様にとってがっかり過ぎる情報だった。とうとう神様的トレンドワードは男の娘に更新されてしまった。
「彼女(?)の虜となった我龍院影丸は、その後彼女(?)に徹底的に性技を磨かれ、その技を使って裏世界を誰も殺さないまま牛耳って・・・。」
「もう聞きとうないわ!!なんじゃその残念すぎる物語の裏側!!月影はどこいったんじゃ!?つーかそれ実質裏世界最強は我龍院影丸じゃなくてその男の娘じゃろうが!!」
「ちなみに我龍院影丸の死因はその男の娘との情事による腹上死です。」
「聞きとうないと言うとろうが!!」
いかに神といえど、年端もいかない(見た目のみ)少女に聞かせるにはRが高過ぎる話であった。
「まぁ体術において裏世界最強であることに間違いはありませんよ。冒険の障害というのも相方が男色家じゃあ神様とのフォーリンラブがないかもな、ということですから。」
「わわ、我は別にフォーリンラブなどせんわ!!」
「じゃあ彼にしますか?」
「却下じゃ却下!!!」
すっかり神様は憤慨してしまった。フレイヤは碌な候補者を用意しない。主人公体質かもしれないがどいつもこいつも一癖あり過ぎる。神様としては、もっと普通な青年がチートを授かって成長していくサクセスストーリーがー・・・
「そうじゃ!!」
「は?何がですか?」
「お前の候補者は主人公体質過ぎるんじゃ!よく考えれば我がチートを授けた時点で強さに心配などないのじゃ。だから元から強い必要などない!!昨今の主人公事情から鑑みても設定を盛り過ぎた主人公は受けが悪い。もっと普通な人間はおらんのか!?」
神様のどうでもいいラノベ事情を含めた要望を聞いて、フレイヤはそれなら、と満を持して3人目を提示する。
「3人目はちょうど神様のご希望に沿った、普通の青年ですよ。」
「おお!!気が利いてるではないか!!はよう紹介せい!!」
「かしこまりました。それでは3人目、名前は望月勇太、15歳の青年です。」
「おっ!!普通!!普通じゃ!!」
一周回って普通の名前に感動する神。もはや感覚がマヒしている証拠だ。
「以上です。」
「早っ!!早いわ切り上げるの!!他になんかないのか!!」
「いえ、前の二人と比べると特筆すべき点が特に・・・」
「ううむ・・・。それも普通たる由縁か・・・。」
「そうですねぇ・・・。容姿は短髪黒髪の醤油顔。不細工とは言いませんがイケメンでもありません。強いて評価するなら2分後に忘れそうな普通顔ってとこですかね。」
「ひ、ひどいのお主。」
「運動も中の中。幼い頃よりサッカーをやっていたそうですが、所謂エンジョイ勢だったようで、対して上手くもない。成績も中の中。得意な教科は特になく、嫌いな教科は英語だそうです。」
「なんじゃその高校生の自己紹介みたいな内容は・・・。他の追随を許さぬ普通ぶりじゃの。適当にそのあたりの人間捕まえてももうちっと凄いこと言うぞきっと。」
「神様もひどいじゃないですか。」
自分勝手でワガママと言われるかもしれないから口には出していないが、実は神様の心中は今不安で彩られている。普通がいい普通がいいと言っておきながら、ここまで普通過ぎると自分が紡ぐ物語も面白味の無いものになってしまうのではないか。
そんな神様の葛藤も、フレイヤには手に取るように分かるらしい。神様の不安を吹き飛ばす情報がまだひとつ残っているのだ。
「あぁ、そう言えばひとつだけ、主人公っぽい要素がありましたね。」
「な、なぬ!!」
「あれ?何か嬉しそうですけど?いいんですか?普通じゃなくなってしまうかも・・・?」
「う、うるさい!料理と同じで少しくらいアクセントがある方がいいんじゃ!早うその要素を教えんか!!」
フレイヤのちょっとした意地悪に真っ赤になって応える。神性を封印したことはやはり間違いではなかったとフレイヤは思った。
以前までの神ならば、ここまで何かに必死にはなれない。必死になる真似をすることはあっても、全知全能は必死になれないというジレンマを抱えていたのだ。
そんな逸れた思考もさっと本筋に戻し、フレイヤは待望の主人公要素を発表することとした。
「アクセントというには小さ過ぎる要素かもしれませんが・・・それは、彼の死因と関係しています。」
「はぁ?死因?何じゃ主人公っぽい死因って?」
今までの2人があったせいで、神様にとって死因はある意味鬼門だ。評価がこれでプラスに転ぶとは到底思え・・・
「トラックにひかれそうな少女を守って、代わりにトラックにひかれて死にました。」
「決定!!!」
「え?即決ですか?よろしいんですか?」
「決定!!主人公はそやつに決定じゃ!!なんじゃそのベタベタな死因!!最近では既に絶滅しつつあるんじゃぞ!!それをそやつは現実で!?しかも少女を守るために!?手垢が付き過ぎて誰も触らんくらいのレベルじゃ!!」
「一切褒めているように聞こえないんですが・・・。」
「馬鹿を言うでない。史上最高の賛辞じゃ!!あーあ、何が御剣流か!何が月影か!!ないない!!どうせそいつらもトラックにひかれたら死ぬわけじゃし!!トラックこそ最強じゃ!!!」
テンションが上がり過ぎてもはや何を褒めているのかもよくわかってない神様。もちろんトレンドワードはトラックに更新され、そのまま殿堂入りした。
「まぁ御剣聖也も我龍院影丸もトラックごとき逆に迎撃するくらいの力をもっているわけですが・・・」
「うっさい!どうでもよいわそんなこと!!それより!!!一応確認するが!!!もうないな!!!!」
「は?ない・・・と申しますと・・・何がでしょう?」
「決まっておろう!!冒険の障害となり得る負の要素じゃ!!!もう後出しはごめんじゃ!!!何かあるなら今申せ!!!」
もうこいつで決定したい。これ以上頭を悩ませたくない。神は天に祈った。天には自分が座していたことも忘れ。
「負の要素ではないと思いますが・・・冒険の障害となり得る要素は一応ひとつだけありますね。」
「あるんか・・・。」
祈りは届かなかった。神は死んだ。そう言っているかのような落ち込みよう。今まで最後に挙げられた要素はそれまでのプラスを覆すほどのマイナスだった。
特にこいつはトラック以外のプラス要素などない。絶望的だ。そんな本人に聞かせられないほど失礼なことを考えている神に最後の情報が届いた。
「その要素は彼の生育環境に関係しています。」
「せいいくかんきょう・・・?」
「ええ。彼の両親は人格者でしたが・・・所謂、サブカルチャーに一切理解のない方たちだったようです。だから彼が育った環境の中には、一切サブカルチャーを匂わすものがなかったとのことです。」
「は・・・?」
「ライトノベルはもちろん、マンガ、テレビ、ゲーム。携帯電話やスマートフォンの類も一切持たせてもらえなかったとか。」
「な、なんじゃその昭和然とした家庭は・・・。」
「おかげで学校では浮きまくり。唯一友達と呼べるのはわずかなサッカー仲間と隣の家に住む妹同然の女の子くらいだったそうですね。」
「お主それさっき普通普通言ってたときに出してもよいくらい目立った情報じゃないか?」
「すみません。前2人のせいで普通って何なのかよく分かんなくなりまして。」
その発言には共感できる部分が大きい。確かに珍しい特徴かもしれないが、取り立てて目立っているわけでもない。それが一体どのように冒険者の障害になるというのだろうか。
「ま、まぁ最近はぼっちを売りにしている主人公も増えて来ておるしな・・・。」
「ぼっち、というとどうなんでしょうね。確かに事実ぼっちでしたが、本人にあまりその自覚がないように思われます。」
「えっ?それだけ浮いているのに?」
「よく言えばあまり周りに流されない人物ということでしょうね。悪く言えば空気が読めないということですが。親の考えにも理解を示していたようで、特に文句も言わず育ったとか。」
「そ、そっか・・・。うむ、まぁ本人が納得しているならよいか。して、この特徴が如何に冒険の障害になるというのじゃ。」
その問いに、フレイヤはキョトンとしている。神様とフレイヤの中で、サブカルチャーの知識が一切無いという要素について認識の齟齬があるようだ。
「いえ、神様は王道といいますか、テンプレ満載の冒険譚をお望みだったようなので・・・。マンガやゲーム、ライトノベルの知識が一切ない彼では、そもそもテンプレが理解できないのではないかと・・・。」
「あ、あぁ!なんじゃそんなことか!!」
そこでやっとフレイヤの意図が伝わったようで、調子のいい神様は急に勢いを取り戻した。
「いいんじゃ!!むしろそれはプラスになる要素と言えよう!!
「そうなんですか?」
「あぁその通りじゃ!!なんてったって我は昨今の『俺、テンプレ理解してます』感のある主人公は好きになれんでな!!」
神はまた世俗にまみれたラノベ事情について触れる。こだわりについて話すと長くなってしまうのは神も人も同じのようだ。
「死んですぐ誰とも知らぬ存在と出会って、『あ、神様ですか』とか。神のミスで死んどいて『いいんですよ。ミスは誰にでもありますから。』とか。嘘つけと!!そんな物分かりいいはずないじゃろ!!普通もっと怒り狂うか泣き叫ぶかするじゃろう!!転生したとたん『あっ、これはもしかして待ち望んでいた異世界転生!?』とか。待ち望むな!!!現実を生きろ!!!魔法やらスキルやらについて今まで誰も気付かなかったような裏技とか法則に気付いて世界の有力者から一目置かれるとか。むしろ先人どもは長い年月をかけて何をしとったんじゃ!!!ぽっと出のどこの馬の骨とも分からん小僧に先を越されて悔しくないのかおのれらは!!!!!」
「神様、神様。落ち着いてください。何にお怒りなのかも分かりません。」
神の荒れようを見て、これが神性を封印した影響ならやっぱり封印するんじゃなかったと、わずか数分で手の平を返したくなるフレイヤであった。
「おお、すまんすまん。・・・すぅー・・・はぁー・・・。よし、落ち着いたぞ。話を戻すと、つまりテンプレを理解し過ぎた主人公は逆に不評を買うということじゃ。」
そんなことを主張していたかなぁ、とフレイヤは少し思ったが、もう話が進まないので気にしないことにした。
「それに、何も知らないというのならきっと新鮮な反応をしてくれるだろうて。なぁに、道を外したならば我が元に戻してやればよいだけであろう。なんたって一緒に冒険するわけじゃから。」
「かしこまりました。そうであるならば、もう私から開示すべき情報はありません。」
「本当か!?なんとか流の伝承者とか、一般には言えない性癖とかもっておらんか?」
「一切ございません。ちなみに、普通に巨乳の女の子が好きだそうですよ。残念でしたね。」
「どういう意味じゃ!!!そもそもフォーリンラブなどせんと言っておろうが!!」
「それは失礼致しました。では、最後に確認致しますが、本当に彼、望月勇太でよろしいですね。」
フレイヤは最後の確認を取る。正直、ベストな選択かは分からない。ひとつの欠点に目をつぶれば、他の候補者の方がよっぽど適任であろう。
しかし、と神は思い直す。この『分からない』をこそ、待ち望んでいたものだろう。全知全能であった自分が、心のどこかで焦がれるほどに欲していたもの。今まではそれが何か分からなかったが、全知全能を封じた今だからこそ分かる。
『分からない』
なんと甘美で危険な果実だろうか。不安か、期待か、あるいはその両方か。どちらともとれぬ感情のせいで、心臓は壊れたように跳ね回っている。
こんな体験ができる自分は、世界一幸せだ。フレイヤが冒険するように言った理由も、きっと自身の倦怠の原因を慮ってくれたからだろう。本当に上司想いの部下だ。
で、あるならば上司であり神である自分は応えねばならぬ。出した答えはもちろんー・・・。
「よい!!望月勇太を、我が紡ぐ神話の主人公とする!!!!」
誰も見てないと思ったから結構適当に書いていましたが・・・。え?見てくれた人いるの?
やだ・・・どうしよう・・・私すっぴんなんだけど・・・。
はい、くだらない冗談でした。すみません。適当に書いているのもすみません。見てくれてる人がいるならもっと推敲いたします。次回もよろしくお願いします。