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カモン・ニュー・ウェポン

そろそろ私生活の方が忙しくなってきたので更新が滞ります。すみません。

「さぁさぁさぁ!!!とうっとうこの日を迎えましたぁ!!皆様お待ちかねのローガリア祭当日です!!天候は雲1つないド晴天!絶好のゴブリン狩り日和となっております!」


「何だよゴブリン狩り日和って・・・。」


「申し遅れました私、ローガリア祭で司会兼実況を務めます”ローガリアに舞い降りた歌姫”ことメロディアと申します!知ってる方はお久しぶり!知らない方は覚えてね!信者の方はお布施よろしくぅ!!」


「「「メロディアちゃぁぁぁぁん!!!」」」


「はい!あなたのためのメロディアです!ファンの皆、コールありがとね!でも今回はアイドルじゃなくてアナウンサーだから大人しくしてないとぶっ殺しちゃうぞ☆」


「「「はぁぁぁぁぁぁぁい!!!」」」


「理解できないよ・・・。」


「ええか勇太よ。偶像を崇拝する、それだけで救われる人間も確かにおるんじゃ。偶像がたとえ小悪魔であってもの。」


「あれどっちかっていうと悪魔に近いと思うんだけど。」


 今、ローガリア祭出場者はローガリア南部に広がる大草原”ローガル平原”に来ている。3日間に渡る祭りの初日を迎えたのだ。


 そして、ローガル平原を見渡せる高台には祭りを楽しむための観客席、出店、果ては特設ステージまで設けられている。その舞台でマイクを握る小麦色の肌をした健康的な美少女がメロディアである。


「どうでもいいことだけどさ。アガルタにもマイクあったんだね。」


「厳密には違うのう。あれはマイクではなく音声魔法”ボイス”が込められた魔法具じゃ。」


「音声魔法なんてのもあるんだね。こういうとき以外に需要なさそうだけど・・・。」


「そんなことはない。厄介極まりない魔法のひとつじゃよ。声なんぞでかくするだけで鼓膜を破れる。三半規管を揺さぶれば立っていることもままならない。また、遠くの仲間と連絡をとる”テレパス”も音声魔法に含まれるのう。」


「・・・あぁ。あれがそうかぁ。」


「うん?勇太は以前に見たことが・・・」


 シロの発言を遮るように、観客席がワッと盛り上がった。目を平原の奥の方に向けると、何やら黒い豆粒のようなものがわらわらと出てきた。


 ローガル平原は広く、遮蔽物がない。高台から平原を見渡せば、数キロ先まで見ることが出来るほど見通しが良いのだ。つまり、それほど遠くに見える豆粒大の物体は、近くにくれば大きくなるということであり、豆粒の実態とは・・・


「皆様ぁ!!!ご覧ください!!現れましたよぉ!この祭りのある意味主賓!!この3日間で根こそぎ刈り取られる存在!!ゴブリンくんでぇっす!!!」


「うわぁ・・・。すごい数いるよあれ。軍隊アリみたいだ。」


「確かにアレをほっといたら街は滅ぶのう・・・。」


 勇太の言う通り、恐ろしい程の数だ。植物の鮮やかな緑で彩られていたローガル平原が、最初はだんだんと黒く、次第に濃い緑へと塗りつぶされていく。最初と最後の緑を比較すると、今の緑は生理的な嫌悪を催してしまう程だ。


「しかしタイミングよく出てきたねぇ。」


「偶然なわけがなかろう。祭りの始まりに合わせて魔物を呼び寄せる餌袋が大量に巻かれたんじゃ。ほれ、高台の下の方を見てみい。」


 勇太が目を下の方にずらすと、麻袋のようなものがいくつも口を開けて落ちていた。別に風上というわけではないのにコレに吸い寄せられているとしたら、ゴブリンの嗅覚恐るべし、と言ったところか。


「ていうか祭りの為にあんな数のゴブリン引き寄せるなんてどうかしてるよ。」


「まぁ計画的な老後よりも楽しい今を優先するようなやつらばっかりじゃからの、基本的に。」


「オブラートに包み過ぎてる表現だよそれ。参加者が全員やられちゃったら街が滅ぶじゃないか。」


「そうならない自信があるんじゃろうの。それだけの実力者が多数参加する祭りということじゃ。勇太、油断ならんぞ。」


「なんだろう。シロがすごく異世界の文化をフォローしてる気がする・・・。」


 そんな無駄話をしている間にも、軍と呼んで過言でない程のゴブリンの集団は、平原の中央辺りまで差し掛かった。このまま行けばあと数分もしないうちにこの高台まで到達するだろう。


「それではこの祭りのルールを改めて確認しまSHOW☆!!参加者には経験値ストックの腕輪が渡されています。その数値をより高めた人物が・・・え?何?時間ない?ルールの説明まだだよ?参加者の皆が困っちゃうんじゃ・・・本人の責任?説明は参加の時に・・・ふむふむ。・・・死んでもしらない?むしろある程度減ってくれた方が・・・?」


「マイクの電源を切れよ・・・。」


 観客席からも参加者からも笑いが起きている。このアイドルはブラックジョークが売りなのか天然が売りなのか分からないが、コレを信望する人たちはどんな感性をしているのか、やっぱり勇太には理解できなかった。


「・・・ふむふむ。オッケー任せて。え?マイク入ってた?大丈夫、うまくごまかすから。はぁい!!皆お待たせ!!参加者の皆に伝えなきゃいけない一言があ・る・よ♪」


 むしろ勇太はここから一言でどうやって挽回するのか気になった。アイドルの腕前、しかと見せてもらおう、と。


 メロディアは皆の注目を集めた後に大きく息を吸い込んで、可愛い声で叫んだ。


「ローガリア祭、スタートォ!!!」


「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」


「力技かよ!!!」


「何をツッコんどる勇太!!我らも行くぞ!!」


 清々しいまでのごり押しにツッコんでいるせいで、スタートと同時に飛び出した他の冒険者と比べて2人は少し出遅れてしまった。他の冒険者と同様に高台から飛び出してローガリア平原に踏み入ると、いつの間にか眼前近くまで迫っていたゴブリンの最前線と冒険者の先頭集団は既にぶつかり合っているようだ。


「はやっ!!」


「モタモタするな!!早う最前線まで行かねばならん!!」


「わ、分かった!!」


 2人は掛けだした。冒険者とゴブリンの入り乱れる魔境の、最も過激な地帯を目指して。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「参加者が果敢に飛び出して行きました。こうなるともう誰がどこで何をしているか分からない!!そんなお困りの観客の皆さん!ご安心を!今年から魔法具研究の粋を集めて、”スクリーン”という魔法が開発されました!こちらをご覧ください!!」


 高台のメロディアが進行を続けている。安全地帯(仮)にいる観客席にいる全体に向けて、ステージ横の空中を見るよう促した。すると、何もなかった空間に”ステータス”と同じようなウィンドウが現れた。


「今回はこちらに、参加者のランキングが表示されます!最終日まで表示されていると興ざめなので初日と二日目のみ表示致します。え?何の為にって?決まってるじゃないですか!!悪ーいお友達みんなしゅうごーう!!賭けの時間だぞぉ!!」


「「「いぇーい!!」」」


 あけすけアイドルメロディアの合図を元に、賭博までスタートした。祭りが始まって間もない為、ランキングは激しく変動している。この時期の賭博は予想がとても難しいはずなのだが、窓口には大行列ができている。


「今のところスタートが速かったベテランさんたちが上位かなぁ。”双斧のニッグ”に”土くれガルーノ”と、あとは双子の”タイニィ&ベル”が入れ替わりで上の方に・・・あ、”一撃塵殺いちげきじんさつ”でおなじみのコーフマンおじさんが1位になりました。今のところ圧倒的!しかし一撃を打ったのでもうこっちに引き上げてきます。きっとお昼頃にはもう抜かれちゃってるでしょう。皆様、コーフマンのおじさんに生暖かい拍手を!」


 パチパチと、それなりの拍手をもって人の良さそうなおじさんが高台に帰ってきた。どこにでもいそうな見た目をしている。右手に付けている、本人の10倍はありそうなあり得ない大きさの手甲を見ないようにすれば、であるが。


「さぁ、次に頭角を現すのは誰か!個人的にはまだ見ぬルーキーの誰かに新風を起こして欲しいところですが・・・ああっと!言ってるそばから!今年初参加であろう見慣れぬ冒険者がすごい勢いでゴブリンを蹴散らしています・・・が・・・。何アレ?」


 メロディアだけでなく、観客席が首を傾げた。遠目でよく分からないが、魔法を使っているように見える。もしくは何らかの武器であろうか。どちらにしてもその冒険者付近のゴブリンが瞬く間に消えていく。あまりの速さに、高台からはそこだけゴブリン集団の穴が開いたように見える程だ。


 スクリーンはランキング表示以外にももうひとつ、どうやってか参加者をアップして表示するためのものがあった。そのスクリーンが件の冒険者を映すことで、ようやくメロディアと観客たちは間近にその冒険者を見ることが出来たの、だが・・・


「・・・え?何アレ?」


 再び同じセリフを呟いてしまう。アイドルとしてあるまじきコメントをメロディアが残す程度には、その冒険者は不可解な有様であった。いや、その冒険者たち・・は。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 観客席全体が微妙な雰囲気に包まれる数分前、勇太とシロは争う冒険者とゴブリンを交わしながら、自分たちに合う環境を探し続けた。冒険者、ゴブリンの双方の数が多過ぎるため、また求める環境の条件が厳しいため、それなりの時間は要したが、とうとう見つけた。


 ひとつ、周囲に他の冒険者がいないこと。見られて困るのではなく、自分たちの攻撃に巻き込まないようにするため。


 ひとつ、ゴブリンと適度に離れていること。接近戦は2人にとって完全な致命エリア。かといってそこまで彼らの間合い・・・は長くない。5~10m程離れていることが望ましい。


 ひとつ、背後に回られないこと。彼らは前方の敵には滅法強い。警戒すべきは後方からの不意打ちである。


 これらの条件を満たしたのは、ローガル平原の中央より少し南寄りの場所であった。周囲に冒険者はおらず、偶然にも前方7mほどのゴブリンは一番激しい中央部の戦況を伺っているのか、棒立ちのままこちらに気付いていない。2人の後ろにいるゴブリンは全て他の冒険者が相手をしている。


 絶好のポイントだ。しかし、あと少しでも時間が経てば、他の冒険者が来るかゴブリンが気付いて近寄ってくるかしてしまうだろう。時間的猶予はほとんどない。そんな中で、勇太はシロに最終確認をとった。


「・・・シロ。本当にいいんだね?」


「・・・。出来ればやりたくないのが本音じゃが・・・。しかし!格好にこだわっていては先に進めぬ!今成すべきは迷子の指輪を獲得すること!その為にゴブリンどもを駆逐することじゃ!やるぞ勇太よ!」


「・・・ああ!来い!シロ!」


 シロの覚悟を無駄にすまいと、勇太も応じて覚悟を決めた。そして、懐に隠していた大きな袋・・・・を取り出して、勇太は肩に掛けた。


 その袋は、肩に掛けてもつと勇太から見て前と後ろに穴が開いていた。袋というより担架のようなものと言ったほうが正確かもしれない。


「とう!」


そして、シロは掛け声とともにその袋に飛び込んだ。丁度、頭と両手を袋の前方から出すように。そんなシロの身体を袋ごと勇太が支えて、彼らのフォーメーションは完成する。


「これぞ!真・シロガトリングじゃ!!」


 シロガトリングは欠点を抱えていた。魔法を使用している間、シロが動けないこと。狙いが定まりにくいこと。これらを聞いて、ヤタの出した改善案は至極単純なものだった。


『勇太が嬢ちゃんを担いで戦えばいいじゃねぇか。』


 その為の布。その為の勇太。固定砲台が無理なら移動砲台に。シロは今、真の意味でガトリングとなったのだ!


「進め勇太ぁ!!」


「行くぞぉぉぉ!!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「み、皆様ご覧ください!あの冒険者の地点、次々とゴブリンが倒されていきます!おそらく使用している魔法はただのファイヤーボールでしょうが・・・。それでも信じられないほどの手数です。まさに弾幕とは彼らのことでしょう!」


 観客席が大いに沸く。あの”一撃塵殺いちげきじんさつ”の記録に1時間もしないうちに並ぼうかという勢いで記録を伸ばしているのだ。しかも全くのルーキーが。何よりも目を引くのがあの風体である。


「しかも彼ら、よく見ると魔法使いを相方が担いで駆け回っています。もはや抱えられているのは魔法使いではなく魔法具と同じ扱いと言っていいでしょう!!笑えるのが・・・失敬。注目すべきは魔法使いが見目麗しい幼女であることでしょう!あの幼さにしてあの練度、将来有望ですね!!相方の青年も見事な武器捌き・・・失敬。えぇっと・・・もうなんと言っていいのか分かりません!!」


 観客席が沸く。熱狂と、それを上回る・・・大爆笑で。勇太もシロも誓って真剣だ。しかし、2人が必死であればあるほど笑いを誘う。なぜって、幼女を武器の如く振り回して無双をしているからだ。


「彼らの見事なコンビネーションに敬意を表して、私メロディアから彼らに二つ名を送りましょう!その名も・・・。」




 こうしてめでたく、勇太とシロは、”幼女を使役せし者ロリ・コンダクター”としての第一歩を踏み出したのであった。

でもブクマ数が10超えたら寝る時間削って書きます。

お願いみんな!オラに力を!!

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