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夜のプール
チャプン、と水の音がする。
ふとそちらを見ると少女が1人夜のプールに浮かんでいた。
白い陶器のような肌に黒く長い髪が張り付いている。
裸のまま水の上に浮かぶその様子はまるでどこかの絵画のようだ。
静寂の中、少女の起こす水音だけが響いている。
トプン、と沈んだ少女はプールの底で目を閉じる。
数分後、勢いよく水から顔を出す少女の瞳には薄らと涙が浮かんでいた。
「はぁ、はぁっ……」
荒い息が響く。
「鼻は痛いし息はできないし……私は人魚なんかじゃないよ」
ポツリと呟く言葉は震えていた。
《泳ぐのがとっても上手いんだね!人魚みたいだ!》
少女はプールから上がると地面においてあったタオルで全身の水気を荒々しく拭き取る。
「人魚になれれば、あの人はもっと笑顔を向けてくれるのにな……」
その声は夜の生暖かい風に溶けて消えた。
人魚みたいに美しい少女の両片思い。