少年鑑別所 2
朝食終了後、所内にある小さな図書室へと向かう。
小説をはじめ、漫画、旅行雑誌と豊富である。
私は、約3週間の収容期間中、ずっと同じ漫画を飽きもせず読み続けた。
だから、毎朝同じ漫画を返し、また、その漫画を手に取るという、おかしな行動を繰り返していた。
ある朝、教官先生に、
「何やっとんの、お前。たまには、違う本でも読んでみいや」
「俺、本なんて読んだことないっす。こんな難しい本、俺には無理っす」
「まあ、ええわ。信義、ところでお前の頭はなんだ。ボサボサだべよ。坊主にしろ」
「仕方ないっす。ポマード貸してください。したら、キマリますから」
「アホかお前。んなもん、あるわけねえべ」
「ところで先生、俺、年少 ( 少年院 ) っすかね」
「まあ、間違いねえべ。俺は裁判官じゃねえから、分かんねぇけどな」
「先生、年少って、 〇 〇 みたいな漫画のような、すごい世界なんですかね。ブタがいたり、ブタに乗って脱走したり」
「だから、漫画ばかり読むなって言ってるべ。お前と話してると、ラチがあかねえ。また後でな」
私は、部屋の中で、少年院での生活について考えていた。
単純な私は、 〇 〇 という漫画の中で繰り広げられる、少年院内での壮絶なリンチが頭の中から離れなかった。
( 俺も、晩飯の豚汁を取り上げられ、袋叩きにされた挙句、雑巾をくわえさせられ、三段ベット上から、腹の上に飛び降りてこられて… )
私の妄想は止まらない。
私は、ケンカは強い方だと思っていた。しかし、上には上がいることも分かっていた。どんなに体が小さくても強いヤツは強い。空手やボクシングをやっているから、ケンカが強いとは限らないのである。
ケンカは慣れでもある。弱い者とケンカをしても勝つのは当たり前である。強い者。自分より強いと思う者に、何度も何度も挑んでいく。何も考えない。根性さえあれば、場数を踏んでいけば、ケンカなんて強くなれるのである。
ヤクザのケンカでは、駆け引きも重要となってくる。しかし、ガキのケンカに駆け引きは必要ない。殴り合いをして、勝つか負けるかのどちらかである。
妄想から現実へと引き戻された私は、
( ケンカに挑むような気持ちで、少年院に行かないと )
次第に、そんな気持ちになっていった。