表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/75

少年鑑別所 2

朝食終了後、所内にある小さな図書室へと向かう。

小説をはじめ、漫画、旅行雑誌と豊富である。

私は、約3週間の収容期間中、ずっと同じ漫画を飽きもせず読み続けた。

だから、毎朝同じ漫画を返し、また、その漫画を手に取るという、おかしな行動を繰り返していた。

ある朝、教官先生に、


「何やっとんの、お前。たまには、違う本でも読んでみいや」


「俺、本なんて読んだことないっす。こんな難しい本、俺には無理っす」


「まあ、ええわ。信義、ところでお前の頭はなんだ。ボサボサだべよ。坊主にしろ」


「仕方ないっす。ポマード貸してください。したら、キマリますから」


「アホかお前。んなもん、あるわけねえべ」


「ところで先生、俺、年少 ( 少年院 ) っすかね」


「まあ、間違いねえべ。俺は裁判官じゃねえから、分かんねぇけどな」


「先生、年少って、 〇 〇 みたいな漫画のような、すごい世界なんですかね。ブタがいたり、ブタに乗って脱走したり」


「だから、漫画ばかり読むなって言ってるべ。お前と話してると、ラチがあかねえ。また後でな」


私は、部屋の中で、少年院での生活について考えていた。

単純な私は、 〇 〇 という漫画の中で繰り広げられる、少年院内での壮絶なリンチが頭の中から離れなかった。


( 俺も、晩飯の豚汁を取り上げられ、袋叩きにされた挙句、雑巾をくわえさせられ、三段ベット上から、腹の上に飛び降りてこられて… )


私の妄想は止まらない。


私は、ケンカは強い方だと思っていた。しかし、上には上がいることも分かっていた。どんなに体が小さくても強いヤツは強い。空手やボクシングをやっているから、ケンカが強いとは限らないのである。

ケンカは慣れでもある。弱い者とケンカをしても勝つのは当たり前である。強い者。自分より強いと思う者に、何度も何度も挑んでいく。何も考えない。根性さえあれば、場数を踏んでいけば、ケンカなんて強くなれるのである。

ヤクザのケンカでは、駆け引きも重要となってくる。しかし、ガキのケンカに駆け引きは必要ない。殴り合いをして、勝つか負けるかのどちらかである。


妄想から現実へと引き戻された私は、


( ケンカに挑むような気持ちで、少年院に行かないと )


次第に、そんな気持ちになっていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ