不思議がられる男
今思えば、生徒達から好奇の目で見られている節はあった。
私は、実年齢よりもかなり若く見られ、長年の収容生活の粗食のあおりか、体も細く締まっている方だった。それに加え、目つきも悪く人相も決して良い方ではなかった ( ツーブロックにして、若干柔らかく見えたが )。生徒の一部には高齢者の方もいたが、40代の生徒は私くらいなものか、それが、一層私に対する不思議感に拍車をかけた。
また、中年のせいか、生徒の親御さんからも、たびたび教師に間違われたりもした。
入学したての頃だった。
放課後、生徒を迎えに来たらしいひとりのおじいさんから、
「うちの孫が、パソコン教室みたいな名前のとこにいるんだが、先生、その教室に案内しとくれ」
と、声をかけられた。
「えっ、私は、教師ではないですよ。生徒ですが…」
と、ビックリして答えると、生徒の祖父は、
「えっ、あんた生徒さんかい。いやぁ、どうみても、高校生には見えんがなぁ。本当は先生だっぺ」
と、からみ始めてきた。
「いや、ほんとですよ。ほら」
と、首にかけている受講許可書(名札)を見せた。
「あっ、本当に学生さんだ。てっきり、先生かと思ったわい。ワッハッハー!」
「私のどこが、教師に見えるんですか?どう見ても教師にはみえないでしょ」
「はっはっはー!それもそうだ。よくみたら、見えんな!」
何故か、そのおじいさんと意気投合してしまい、20分近く話をしてしまった。
このように私は不思議な存在であった。
入学当初は、毎回違う生徒に、
「今田さんって、何してる人ですか?何歳ですか?」
と、質問されていた。
私は、その度に、
「医者だよ。お腹痛くなったら、セイロガン処方してあげるから来なさいね」
「きゃははは!おやじギャグ!」
時には、
「えっ、仕事?警察官だよ。悪いことしたら令状とってパクっちゃうぞ!」
と、からかっていたら、反対に、
「今田さん、遊ぼっ」
と、イジられるようになってしまった。




