千葉県立千葉大宮高等学校 3
季節は秋を迎えようとしていた。
編入学者選抜の出願手続きは9月3日。入学試験は9月8日である。
9月3日に、
入学願書 ( 本校所定の用紙 )
志願理由書 ( 本校所定の用紙 )
単位修得証明書 ( 本校所定の用紙により在籍していた高等学校長が作成したもの。開封したものは無効 )
健康診断書 ( 本校所定の用紙により医師に診断を得たもの )
写真4枚 ( 6ヶ月以内撮影した証明書用の写真で、裏面に氏名を記したもの )
検査日指定通知書 ( 必要事項を記入したもの )
等の書類を高校に提出した私は、
9月8日に、
筆記試験 ( 作文 )
面接試験 ( 志願動機や高校生活における抱負など )
に望み、いずれも合格 ( 不合格者は殆どいない )。
あらためて、千葉県立千葉大宮高等学校通信課程の生徒になることが出来た。
『 前科二犯42歳の現役高校 』
の誕生である。
入学する為に色々と苦労したが、本当の意味での苦労はこれから始まる。
これから毎日、教科書と向き合わなくてはならない。頭をかきむしりたくなる事もあるだろう。しかし、ここまで来たらもう後には引けない。
前に進むだけだった。
それに、高校生活というものを肌で感じてみたかった…
小学校にもまともに通わず、中学を卒業したのは初等少年院の中。オマケに、高校の単位は少年刑務所で修得したもの。
そんな、今年、刑務所を出所したばかりの私が、半年後には、
『 現役高校生 』
になることが出来たのである。
夢にまで見た、現役の高校生になれたのだ。
私は、そんな過去と手首まで入っている刺青だけは、生徒達には絶対に悟られたくなかった。その為には、まず第一に見た目から変えなければならないと思った。短髪だった髪を伸ばし、床屋しか行ったことのない私が、美容室で、
「今風にしてください」
と、ツーブロックにした ( 自分ではなかなか似合うと思い、暫く、そのままだったが、ツーブロックは評判が悪く、また髪を短くして、美容室から、床屋に戻ってしまった… )。
服も、ショップの女性店員に選んでもらった。
「僕に似合う服は、どんな感じでしょうか…」
と、今までの人生では有り得ない行動をした。
きっとそんな姿を、昔の仲間に見られたら、
「お前、頭、だいじょーぶか」と、大笑いされるだろう ( 因みに今の服装は、自分の趣味ではなくすべて他人まかせ )。
「これで、髪型や服装は、高校生らしくなった!」
と、自画自賛した。




