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刑務所内の年末年始

年末年始は、受刑者にとって一大イベントである。

休庁期間である、12月28日から1月3日までは、受刑者の刑務作業も免業となる。この期間は各刑務所の予算に合わせ、毎日、かりんとうや、ビスケット、チョコレートなどの甘味品が支給される( 私が収容されていた少年刑務所では、1品若しくは2品のお菓子とみかん1個が朝食終了後に配られた )。

この期間の食事のメニューも普段とは違い、大晦日の夜は、カップ麺のそばが夕食とは別に支給される。

また、元旦には、おせち料理の折詰が別に支給され、元旦からの3が日は、麦飯から白米に変わった。

朝食は、雑煮であったが別に配られる餅が固く、雑煮の中に入れても柔らかくならなかった。まるで、はんぺんの固まりを食べているようだった。


休庁期間に入ると受刑者の気分は高まる。

朝から、テレビ視聴が許され、お菓子を食べながらバラエティー番組に歓声を上げる。この時だけは看守も見て見ぬふりをする。


受刑者にとって刑務所内の生活は毎日が同じことの繰り返し。

くる日もくる日も同じ景色と同じ顔ぶれ。

塀の中と外とでは、全く次元の違う別世界であることを痛感する毎日。

だからこそ、この期間だけは、甘いモノに舌づつみを打ちバラエティー番組に歓声を上げることが特別に許される。

大袈裟にいえば、


『 人間に戻れる 』


期間なのである。



大晦日、高校生の私は、独居房で静かに


『 ゆく年くる年 』


を観ていた。


《 ゴーン 》


《 ゴーン 》


と鳴り響くテレビの中の除夜の鐘。


時計の針が、23時59分を回ると


「今年も残り僅かとなりました」


というナレーション。



静かに年が明けていった。









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