発狂寸前
レポートも順調に進むようになってきた。
返信されてきたレポートには評価とアドバイスが記されている。
評価は、
『 A評価 』
から
『 E評価 』
までの5段階評価に別れており、レポートの内容によって評価が違ってくる。そのうちE評価は再提出となる。
1年目の私のレポートは、C評価が多く再提出の対象にはならなかったが、アドバイス欄にはいつも、
〈 問題はしっかり読んで、慌てないできちんと書きましょう 〉
と記されていた。
返信されてきたレポートに目を通すと、問題にはバツ印がいくつか目立った。
科目によっては、自分で書籍などを用意して、調べて記入しなければならない問題も多かった。特に、現代社会に多く、市民生活や福祉に関しては、
〈 統計を調べて推移を説明しなさい 〉
といった説明問題が多かった。1科目あたりのレポート数は平均4通であったが、現代社会に関しては、1通のレポートを作成するのに3時間もの時間を費やした。
反面、生物や国語、保健といった科目は、教科書に記されている言葉や用語を記入する問題が多く、現代社会に比べると半分位の時間で済んだ。
しかし、なんといっても英語や数学にはいつも頭を悩ませた。
英語は単語を暗記すれば何とかなるまでになったが、数学は、違う問題が次々に出てくるので、次第に頭が混乱してくる。
方式をあてはめれば良いだけの話だったが、x とか y などの記号を交互に睨んでいると、頭の中で、それらが踊り始める。
「フフフ…この野郎、バカにしやがって」
「なんだぁ、やっちまうぞ、こらぁ」
教科書に因縁をつけ、バンバン殴る。
「ああ…マック食いてえな…」
「チョコパイ食いてえなぁ」
ふと、机の脇を見ると1匹の小さな蜘蛛。
「お前も食いたいのか?」
「そうか…食いたくないか…フフッ」
「フッハハハハッ」
「コラッ!今田っ!ひとりで笑ってんなっ!とうとう気が触れたかっ」
監視窓から当直の看守の怒鳴り声。
発狂寸前だった。




