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高等学校通信制課程入学

入所してまだ4ヶ月たらず。懸念はそこにあった。

何年も規律違反行為をせず無事故で生活している者も多い。

それと比べたら信用度が全く違ってくる。


高等学校入学といった重大事項の決定は、処遇部長を頂点とする、処遇首席、課長、統括といった幹部刑務官が、審査会なる会議を開いて決済する。

幹部刑務官は、我々受刑者を日々見ている訳ではない。決済の判断材料は、


身分帳(みぶんちょう)


なる一冊のファイルのみ。


この


『 身分帳 』


には、受刑者の、


『 本籍、家族構成、罪名、刑期、前科前歴、病歴、学歴、過去の調査、規律違反行為の有無やその回数と内容、懲罰の回数、受刑者の生活態度 』


が、すべて記されている。

その1冊の身分帳ですべてが判断されるのだ。


あとは、担当刑務官の力量も関わってくる。


幹部刑務官は転勤が多い。反面、現場の刑務官は地元の者が多く、長年同じ刑務所に勤務する例が多い。幹部刑務官になる為には昇進試験を受けるが、幹部になると転勤が多くなるので、あえて、看守部長 ( 警察の巡査部長に相当 )、若しくは副看守長 ( 警部補に相当 )に留まる刑務官も多い。

幹部刑務官は、2年に1度の割合で各刑務所を異動する。

幹部刑務官の心理面から、いくら幹部刑務官であっても、地元に長年勤めている力のある現場の刑務官には結構気を使うものである。当然、力のある現場の刑務官の意見を最大限尊重する。力のある者を取り込んで、自分の地位を安泰にする。そうした方が職務も遂行しやすくなるからだ。

だから、受刑者の間では、


『 あの親父は、力がある 』


『 あの親父はダメだ 』


と、色分けされる。


その点、洗濯工場の親父は、他の刑務官の親父に接する態度から

も相当力がありそうに見えた。



平成6年4月、親父の強い推薦もあってか、無事、


『 岩手県立の県立高等学校通信制課程 』


に入学することが出来た。

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