分類センター
平成5年4月、私は埼玉県内にある少年刑務所内の分類センターへ移管された。
関東管区内には、埼玉、長野、岩手、茨城の4つの各県内に、少年刑務所が在る ( 平成5年当時 )。
26歳未満の懲役受刑者は、このいずれかの少年刑務所で受刑生活を送ることになり、その受刑先がこれから始まる分類センターでの様々な調査によって決定する。
この少年刑務所内の分類センターでは、
生い立ち
学歴
犯罪歴
家族構成
交友関係
暴力団関係
を、過去の資料に基づいて徹底的に調査される。
各人に担当調査官が付き、それらの調査を行うが、それ以外にも、心理テスト、学力診断といった調査もあった。
分類センターに於いても、懲役受刑者である私達は、当然刑務作業に従事しなければならない。
分類センター内の工場で、約30名の受刑者が、御守りの紐を取り付ける作業に黙々と取り組んだ。
私語や脇見は、当然許されない。椅子に座り机に向かって、御守り作りに専念する。少しでも、脇見をしようものなら、
「こらっ!どこ見て作業してんだ!」
と、担当刑務官の怒声が飛んでくる。
用便も、定められた時間に済ませる。作業中はトイレに行くことも許されない。下痢になっても、許可を得なければ、席を立つことはできない。
用事があれは、黙って、右手を上げて待つ。
言葉を発することは許されない。
担当刑務官の、
「用件は何だ」
の言葉で、初めて受刑者は発言することが出来る。
担当刑務官が書き物をしている時などは、なかなか、手を上げている受刑者に気付いてくれない。
下痢になっても、じっと、右手を上げて黙って待っていなければならないのである。




