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取り調べ
取り調べが始まった。
初老の刑事は、
「今田、駆け引きなしだぞ」
と、不敵な笑みを浮かべた。
私は闇金における取り立てで、債務者に重症を負わせて逮捕された。罪名は暴行傷害である。
しかし、取り調べでは、個人的な金の貸し借りでのトラブルで押し通す事にした。
( 死んでも、闇金会社の事は口に出せない。幸いにも、自宅のアパートには証拠になるような物はなにもない。ガサ ( 捜索 ) が入っても何も出てこないから大丈夫だ。また、当時は千葉に知り合いもそんなに居なかったので、その筋から、闇金と私とを結びつけることは不可能だろう )
( 大丈夫だ! )
と確信した。
刑事は、あの手この手で執拗に迫ってきた。
私はその度に、
「うーん。どうだったかなぁ」
とか、
「覚えていません」
を、連発した。
留置場に戻り、暫くすると
「おい、今田。お前、風呂掃除してくれんか」
と、当直の巡査長が、話しかけてきた。
「ああ、別にいいっすよ」
風呂掃除のあと、特別にシャワーを浴び、小さな留置場の運動場でタバコとジュースの、
『 面倒見 』
があった。




