表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/75

多重債務者

「おい!こらっ!金返せっ返さねぇえとぶっ殺すぞ!」


ドアを蹴り続け、怒鳴り続ける。


「なめやがって」


私とクリハラは、ある債務者の住むボロアパートへ乗り込んでいた。

この債務者には3万円融資しており、今日の午前11時が返済日だった。


時計の針が11時を回った瞬間、私とクリハラは事務所を飛び出た。

ボロアパートに到着すると、2階に住む債務者の部屋に向かう。

債務者は常に金融屋の取り立てに怯えながら生活しているものだ。カーテンを締め切り留守を装う。しかし、部屋に債務者がいようがいまいが関係ない。部屋のドアを蹴り、怒鳴り続け叫び続ける。近隣住民に対しても、


この部屋の住人は、


『 闇金からも金を借りる多重債務者 』


という事を広めることも目的である。


債務者には小学生の子供がいた。

今の時間帯は、当然、学校に通っている。

しかし、返済日に借りた金を返さなさい債務者には、たとえ子供がいようがいまいが、昼間だろうが夜中であろうがそんなことは関係ない。今と同じようにドアを蹴り怒声を浴びせ続けるつもりだ。

近隣住民にも迷惑をかける事になるが、その怒りは当然、


『 借りた金を返さない債務者 』


へと向けられる。

子供が泣き叫ぼうが関係はない。

このような輩には、仕事の上での 『 取り立て 』 ではなく、個人的に貸した金を取り立てるような気持ちになった。


怒りが湧いた。


返さなければ両腕、両足を、へし折ってやるつもりだった。


債務者からすると、たかだか3万円を返済出来ずに、子供に泣かれ、近隣住民から蔑まれることに耐えられなくなる。

だからと言って、3万円のためだけに夜逃げすることも出来ない。なんとかして金を工面して返済するものだ。


この手の奴らは、消費者金融以外にも、親や親戚関係、友人から同僚に至るまで、金を借りて返済できずにいるケースが多い。誰にも借りることが出来ないから闇金にまで手を出す。闇金が最後の手段である。その次はコンビニ強盗か、ホームレスになるのがオチである。


闇金に金を借りてくる多重債務者のほとんどが、ギャンブル中毒である。子どもの学費のために、闇金に来る奴はいない。

ギャンブルをやり、ごくたまに勝つ事がある。その、勝った時の感覚をもう1度味わいたくなり、またやりに行く。続けて勝つ者もいるが、大抵が負ける。しかし、1度ギャンブルの罠にはまった者は、


『 あのたまらない興奮をもう一度味わい 』


となる。そうなると投資金額はどんどんかさみ、必要な金まで使ってしまい、金を借り始める。もう、金銭感覚が完全に麻痺し、借金まみれになっていく。

大多数の人間が、最初は余り金を使わないでギャンブル勝ち、ギャンブルの罠にハマって行くものだ。

初めてパチンコやって、いきなり5万負けたら、馬鹿らしくて2度とやらないだろう。

ギャンブル中毒になると財布に入れていく金も日増しに多くなる。

なぜか?

それは、不安だからである。


( 1万円では当たらないかもしれない。この前は、2万円使ったからな )


と、なるのである。


1日いくら負けたらやらないと、自分に言い聞かせて、やめる事が出来る者も多い。

しかし、闇金に金を借りにくる多重債務者は違う。

それに、ギャンブルにハマっている多重債務者は解っていない。


《 博打は必ず胴元が勝つということを… 》


私はドアを蹴り叩き叫び続けた。

夜中の2時を回っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ