闇金への就職
クリハラを通して、この千葉においても新たなる仲間が増えていった。中には暴力団関係者も数多くいた。
クリハラはその暴力団関係者が経営していた金融会社で働いていた。当時、パチンコ店でアルバイトをしていた私は、クリハラの誘いにより、この金融会社で一緒に働くことになった。
その金融会社は表向きはきちんと千葉県知事の認可を得た 『 〇〇ファイナンス 』 という看板を掲げていたが、それは、表向きだけであって、実際にはトイチで融資する闇金を営んでいた。
トイチでお金を借りに来る人間は、もう、どこに行っても借りることの出来ない多重債務者が多数を占めており、その多重債務者に融資する闇金業者は、
『 どこも貸してくれない奴ら 』
に融資する訳である。
そのリスクは極めて高い。中には、闇金という違法営業を逆手に取り、借りた金を踏み倒そうとする強者もいる。実際に、借りてすぐに、他県に飛んでしまい住民登録もせず行方をくらませば、闇金業者は回収不可能となる。
闇金業者が、初回に融資する金額は3万円から10万円が限度である。その金を回収する為に、他県に飛んだのかどうかすら分から
らない、多重債務者の行方を探す労力を考えたら、
『 貸した金よりも回収に費やす金の方が大きくなる 』
のであり、闇金は回収を諦めざるを得ない。
しかし、闇金業者を営む者のほとんどは、面子を潰された怒りまかせに徹底的に多重債務者を追い詰める。そこには、
『 回収に費やす労力 』
なんて関係ない。
とことん追い詰めて、きっちりとケジメをつける。
そうならない為の役割、そうなった時に追めてケジメをつける役割が、クリハラ達なのである。
私はパチンコ店でアルバイトをしていたが、己を殺して客に接する事に嫌気がさしていた。客の中には横柄なものが多い。
「おい、店員ちょっと来い。なんだこの店全然出ねぇじねえか」
「裏でなんかやってるんじゃねえか」
言葉のニュアンスは違うが、そのような文句や愚痴をいつも言われていた。
その度に頭を下げ、丁寧に対応する事に正直疲れていたし、このままだと文句を言ってくる客に手を出しかねなかった。
そこに、クリハラから金融会社への誘いがあったのである。




