初等少年院
少年審判は非公開である。
裁判官、書記官、少年、保護者、私選若しくは国選弁護士 ( 付き添い人として ) によるものであるが、その中での保護者の意見は、少年審判を左右する重要なものとなってくる。保護者の意見は最大限尊重され、大袈裟にいえば、
「もう、そんな子供は、うちにはいりません」
「裁判官にすべてお任せします」
の、ひと言で少年院送致の決定が下されることもある。
少年審判は、1時間程度で結審しその日のうちに処分が下される。処分決定内容は、保護観察、在宅試験観察、教護院送致、少年院送致と様々であるが、このうち、保護観察、在宅試験観察といった決定がなされると、審判終了後に釈放となる。
私には少年院送致の決定が下された。
再び手錠をかけられる。
少年鑑別所に戻り、その日のうちに群馬県内にある、初等少年院へと身柄を移された。
初等少年院は、主に16歳未満の中学生が収容され、義務教育途中の少年達は、その敷地内にある学校(教科棟)へ通い中学校の授業を受ける。卒業式までに仮退院できない少年は、少年院内で中学校の卒業式を迎えることになる。
この初等少年院は長期少年院である。
長期少年院の平均入院期間は11ヶ月。私は、その平均入院期間をはるかに上回り、実に1年6ヶ月もの期間をこの少年院で過ごした。
1週間の考査期間が始まった。個室に収容され様々な調査が始まる。調査は面接や学力審査、記述式の質問表の作成が主であるが、中には、
※ セックスをしたことはありますか
という質問内容もあった。
集中力が人並み外れて乏しい私は、その質問表の作成に四苦八苦した。少し記入してはその手を休め、ボーっと、くだらないことを考えた。また小学校や中学校で全くといっていいほど勉強しなかったので、漢字が解らないばかりか、平仮名すら浮かんでこない。
読めない漢字が出てくるとすぐに教官を呼んだ。
「また漢字が解らんのか。辞書を貸してやるから、それで調べろ」
辞書を借りたが、生まれて初めて手にしたのでどう活用していいのかが解らない。
また教官を呼んだ。