『護国の赤蛇』 終章
そしてIONシリーズ本編へ。
サマエル亡き後のローマは一時混乱状態に陥るが、荘厳な紫の衣をまとった為政者ネルヴァが見事にそれを治めた。ネルヴァは理想を現実にするために、地道で堅実な方法や手段を選んで、実行した。ネルヴァの後も、英明な為政者が相次いで、ローマは空前絶後の、『世界の全てがここにある』と呼ばれるほどの繁栄を見せる。
だが、時代が移ろうと共に、少しずつローマも衰退していった。同時に一神教の神が暗躍した。その下僕、大天使達はイスラエルのみではなく、世界中に一神教の教義を広めていった。一神教と多神教のどちらが勝つか。その争いは水面下でじわじわと広がっていき――最終的には一神教が勝った。もっとも、いきなり人は変われるものでは無い。多神教はゆっくりと廃れていって、一神教もゆっくりと広まっていった。サマエルほどの強力な魔神は、そうそう出るものでは無かったから、大天使達がいざと言う時には猛威を振るった。
……やがて魔族と人間の関係は逆転し、悪化した。魔族は過去の栄光を失い人間を殺して食べる化物として扱われるようになり、自由に思考する力を失った人間は唯一神に救いを求めてすがるようになっていった。厳然かつ壮麗であった神殿は破壊され、神像は打ち捨てられて、そして唯一神へ祈りを捧げる聖所へと変えられていった。
そして、古代と言う、命の生死が入り乱れる豊穣の時代は静かに終わりを迎える。
――サマエルが死んでからどれほどの時が経ったか。
ローマ支配下のイスラエルがベツレヘムで、星の降る夜に、一人の赤子が産まれた。その赤子は、後に『救世主』と呼ばれ、世界を根幹から揺るがす存在になっていくのだった。
実はまだ外伝はいくつかあったりします。