プロローグ
西暦三〇一三年、世界は二分され、百年にわたる戦争を繰り広げていた。
一つの勢力は、アメリカやヨーロッパを中心とする『世界連邦』。もう一つはロシア、中国を主軸とする勢力『革新連合』。
これらの勢力は、昔の東側と西側とほぼ同じ国が所属しているため、一部ではこの戦争を『東西世界大戦』と呼ぶ者もいる。
この戦争には、いくつか特徴的なことがある。一つは技術的なことだ。
戦争が始まって五十年がたったころ、革新的な動力源が開発された。その名も『ビームドライヴ』。
量子加速器の小型化を目指していたところ、偶然発見されたものだ。この動力源は、エネルギーの塊と言っても過言ではない粒子を無限に作り出すことができる。この粒子を『ビーム粒子』と呼んでいる。ビーム粒子は機械のエネルギーにしてもいいし、銃の弾や剣の刃としても利用できる。
このようにSFに出てくるビーム兵器を実現可能にした、ということで動力や粒子の名に『ビーム』を冠している。
また、ビームドライヴの登場によって戦争における戦い方が変わった。それは、起動兵器『FF』の登場である。
FFは、世界各地に存在している伝説や伝承を元にした起動兵器である。これの登場で、白兵戦はほとんど消えてしまった。
二つ目の東西世界大戦の特徴は、ある企業についてである。
先ほど話したビームドライヴもFFも、二つの軍事企業がほぼ同時に開発している。一つはアメリカの『フェアリーウェポン』、もう一つは中国の『御伽技研』である。
この二社には、ごく一部だがある噂が流れている。どうして噂が流れているかというと、FFの開発時期が奇妙なほど一致していること。もう一つは、どちらも一企業とは思えないほど軍への力が強い。また、表向きには『出向』という形で軍への直接介入を行っている。
これらの事から、「この戦争の裏にはフェアリーウェポンと御伽(ユーガ―)技研関わっているんじゃないか」という噂が立っているのである。
そのような噂が本当であるからなのか、西暦三〇〇〇年頃になると世界に歪みが、それもかなり鮮明な形で如実に表れてきた。
それは、中立国への圧力である。
実は、戦争に参加している国は世界の二~三割程度しかいない。残りは中立国としてただ傍観しているだけである。
しかし、世界連邦や革新連合側としては百年もこう着状態が続いている状況を打破したい。それには兵力を増やす必要がある。その結果、中立国に対して、時には武力を用いて圧力をかけ、自分の勢力の参加に加わらせたいのである。
その行動のおかげで世界はめちゃくちゃになり、戦争はいよいよ泥沼化してきた。
そのような状況の中、日本はどうかというと、千年以上も与党と野党の勢力が拮抗していた。もはや、どちらが与党でどちらが野党かというのもハッキリと言えない状況だ。いわゆる『ねじれ国会』というやつだ。
そのせいで、世界連邦と革新連合のどちらにつくかも決まらず、なし崩し的に中立国になっていた。
そのような事情もあってか、武力による圧力の最初の標的になった。それでも、いまだにどちらにつくかも決まらない。必然的に圧力は長期化し、国土の大半は焦土と化していた。
日本が世界連邦と革新連合との戦場になることもあった。
――どん底で、希望が見えない。
しかし、ある一筋の希望が水面下活動を終え、今、人々の希望にならんとしていた――。
どうも、四葦二鳥です。
この小説は、私の二作目の長編小説です。
処女作からこの作品を書くまで、色々なアイディアが浮かんでは消えを繰り返していましたが、その中で自分の小説の特性が理解できました。
また、『好きなことと得意なことは違う』ということを思い知った時期でもあります。
では、この小説を、どうか最後までお楽しみください。