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電脳役者~月村健一の意外な運命~  作者: 万卜人
第十四回 大江戸遊客対黒客、最終決戦之巻
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「月村健一殿と、御影屋お永殿で御座いますな……。お頭の、酒巻源五郎は在宅で御座いますが、さて、どのようなご用件で?」

 出迎えた熊川佐内という老人は、健一と永子を初めて見たような態度を見せた。

 永子は初対面であるが、健一は源五郎を養生所へ向かわせる交渉の際に顔を合わせている。

 健一は、思わず噛み付くような口調になっていた。

「おい、しっかりしてくれよ! 養生所で麻薬が生産されているという情報を、俺が源五郎に教えたんだぞ!」

 左内老人は、呆然とした表情になった。

「よ、養生所で、麻薬?」

「源五郎は、いるんだな? 上がらせて貰うぜ」

 健一は老人を押し退け、式台に片足を土足のまま載せた。老人は健一の無礼に、怒りを顕わにした。

「何をなさる!」

「どいていろ!」

 健一が一喝すると、老人は顔を真っ青にさせて、くたくたとその場にへたり込んだ。

【遊客】の気迫だ! 健一から消え失せていた【遊客】の能力が、戻ってきたのだ。

 気がつくと、永子から【遊客】の気配が感じ取れている。

 戻ってきた【遊客】の能力に自信を深め、健一は永子を伴い、ずかずかと火盗改の屋敷に踏み込む。

「酒巻源五郎! 俺だ、月村健一だ! 養生所の事件は、どうなった!」

 健一は屋敷を源五郎の名前を呼ばわりながら、早足で突き進んだ。この狼藉に、屋敷のあちこちから、与力、同心などが飛び出し、健一を制止しようと立ち塞がる。

 そのたびに、健一は【遊客】の気迫を発して、前へと足を運ぶ。江戸NPCにとって【遊客】の気迫は抵抗し難い。健一が怒りを込めて【遊客】の気迫を発すると、次々に顔色を変えて、その場に蹲ったり、逃げ散ったりした。

「何の騒ぎだ……」

 ようやく、酒巻源五郎の姿を認め、健一はやれやれと肩の力を抜いた。

「俺だよ。あの時、剣鬼郎を逃がしたのは、謝る! あれは、非常事態だったんだ。それより、養生所の事件は、どうなった?」

 源五郎は立ち竦むと、じっくりとした態度で、健一の顔を眺めた。

 しばらく穴の空くほど、健一の顔を眺めたが、ゆっくりと顔を左右にして呟くように答えた。

「剣鬼郎──? はて、それは、どのような御仁の名前なのじゃな? それに、其方は、初めて出会うお人のようじゃが」

「ええっ?」

 健一は、あまりの衝撃に、口をポカンと開きっぱなしにして、源五郎の顔を見詰め返していた。

「俺を、知らないと、あんたは言うのか? 養生所での事件に、俺があんたを引っ張り出したんだぞ」

 源五郎は重々しく頷いた。

「左様。其方とは、初対面であるな。それに、養生所の一件については、どこで耳にしたのじゃ? あれについては、関係者一同、固く口止めされておるはずじゃ」

 源五郎の返答に、健一は全身から力が抜ける気分になった。がっくりと、その場に座り込み、頭を抱えた。

 いったい、何が起きている?

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