告白
その告白は突然だった。
千恵と一緒に、SRの名義変更を済ませ、僕の家でSRを千恵仕様にしようと
タンクの塗装をしているときだった。
僕はなんとなく、昨日考えていたことをまとめる為に、あの日
何時ごろ寝たのかそれとなく千恵に聞いてみた。
「最近寝てなくてさ。」
「本当?そんなに勉強してるの?いきなり無理しすぎちゃダメだよ。」
勉強はしていなかった。
「千恵は毎日どれくらい寝てるの?」
「うーん。6時間くらいかな?」
「そんなに寝てるんだ。俺、毎日2時間寝てないよ。」
「うそー。体壊すから寝なきゃダメだよ。」
「ああ、そうだな。でも慣れちゃったから。」
ガンスプレーを丁寧に吹きかける。
「最高3日ぐらい寝なかったよ。」
「本当に?何で。」
僕はかまをかけるつもりでいた。
「あの日以来、帰っても色々興奮して、寝られなかったよ。」
「あの日って?もしかしてあの日。」
千恵の顔色が変わる。
できれば思い出させたくないが、僕は気になっていた。
千恵が何時に寝たのかが。
「そう、涼のアパートに泊まったあの日。
あの日も興奮して一睡もできなかったし・・。」
「・・・・・・・・・・!。」
千恵は持っていたスプレー缶を落とした。
動揺している。
それだけ千恵にとってはつらい記憶なのだろう。
僕は少し罪悪感を抱きながらも続けた。
「喧嘩した後は大体興奮が収まらないし・・・・。」
「嘘でしょ・・・・。」
「いや、目を閉じて体は休めるんだけど脳がはっきりしちゃうんだよね。」
千恵の顔を見ると、目が赤く染まっていた。
「何なのそのわざとらしい遠まわしな言い方。」
千恵は明らかに怒っていた。動揺が見て取れる。
少しわざとらし過ぎたか。
「千恵お前・・・・。」
「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ。」
千恵の声が大きくなった。
「お前あの日夜・・・・。」
?????
何か違う方向に話が行くぞ?
千恵を見つめる。
「誤解しないでほしいんだけど。」
「・・・・?・・。」
あの晩千恵と涼の間で何かやり取りがあったようだ。
このまま話をあわせて、聞き出していくか?
いや、限界だろう。
僕は正直にかまをかけたことを話し、何も見ていないことを伝えた上で、
話を聞き出すことにした。
「ごめん実は何も見ていないんだ、かまをかけさせてもらっただけだ。
あの晩何があったか、話してくれないか?」
「えっ?・・・・。」
千恵はしまったというような驚きの表情を浮べ、すぐに顔が強張った。
僕の本気の空気を察知してしまったのか。
「これは本当に大切なことなんだ、俺は別に怒ったりしないから、
教えてくれ。話してくれ何があったのかを・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
千恵は僕を見つめたままに、頭で計算している。
「千恵。何があった。?」
「・・・・。やっぱり蒲田君に何かあったの?」
「千恵・・・・・。」
「そうなんでしょ、だからバイクとか、あの時の優介少し異常だったもの。」
「分かった。全て話すよ。中に入ろう。」
僕は千恵と一緒に部屋に入ると、軍手を机の上に投げ出して、
ベットの上に座った。
千恵は色々と考えているようで、ドアのところに立ったままだった。
「座れよ。」
千恵は黙ってドアを閉め、僕と向かい合わせに、床に女の子すわりをした。
いわゆる正座の状態から、横に足を開いたあれだ。
先に口を開いたのは僕の方だ、千恵を興奮させないように、
ゆっくりと落ち着いて話す様に気をつけた。
「実は涼が死んだ。」
「うそ。・・・・・・。」
「ああ、俺も信じられない。」
「何で?・・・・・。」
「警察発表は自殺だ。ただ、俺は違うと思っている。
だから千恵にあの晩何があったか、聞きたいんだ。
教えてくれ。」
「・・・・・・。」
千恵にはやはりショックが大きすぎたのか?
「落ち着いてくれ、あの夜以降、涼はいなくなったんだ。そして、拉致られた。
だから、何かあったなら話してほしい。」
「・・・・・・。」
千恵の表情は固く遠くを見るような目をしていた。
冷たい感じを受けた。
千恵は予想に反して、落ち着いて話はじめた。
「そう、死んじゃったんだ蒲田君。・・・・。」
千恵の顔色は白く死人のように見えた。
「あたしが、殺したんだよ。」
千恵は視線をそらし、僕の方を見ようとしなかった。




