表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/24

涼 失踪

 埼玉から、千恵と一緒に帰って3日後

僕はバイクを取りに再び涼のアパートを訪れた。

家に帰りピッチを充電してから

ことあるごとに、涼の携帯を鳴らしたが、連絡は取れなかった。

あいかわらず、忙しい奴だ。

仕方なしに僕は涼のアパートに直接来たのだ。


上尾の駅から歩いていると、

突然僕のピッチがなる。

{涼かな?}


着信は見慣れない番号。

三日前の着信に残っていたやつだ。

僕は少し警戒した。

「はい・・・・。」


「もしもし・・。」

聞きなれない女の声。


「もしもし?」

「あっ。あのジュエリーのルナですけど、

覚えてる?」


「あっ。あの渋谷・・・。」

「そうそう。」


「なんだよ。ほんとに電話してきたの?

びっくりしちゃったじゃん。」

「う・うん。」

心なしか元気がない。


「どうしたの?もしかして営業電話?」

「違うよ。どうしたかと思って・・。」

「何が?」

「あれ?伊澤さんとかと一緒じゃなかったの。」

「ううん。違うよ。あの人と会ったの久しぶりだったし。」

「そう。じゃあ・・何も。」

「どうした?伊澤さんがどうかしたのか?」

「うん。うちの店めちゃくちゃだよ。」

「!」

「あの後、怖い人たちが来て、店をめちゃくちゃにしていったんだよ。」

「どういうこと?」

「なんか伊澤さんを探してるらしくて。」

僕の脳裏に斎藤の顔が浮かんだ。


「あの後っていつ?」

「みんなで飲んでた日だよ。だから三日前?」

「嘘だろ。」

「ほんとだよ、優介何も知らなかったんだ。」

「ああ。」

「それで、やばいことになってるんじゃないかと思って、、。」

「そりゃヤバイだろ。」


僕は涼のことが心配になった。

もうアパートはすぐ近くだ。


「悪い、ちょっとすぐかけ直すよ。」

「えっ。ああ。うん。」


僕は電話を切ると急いで涼のアパートへ向かう、

アパートの下には僕のSRが静かに停まっていた。

階段を駆け上がると、

涼の部屋のドアを開けた。

案の定鍵はかかっていなかった。

扉をを開けると、中からじめっと冷たい空気が僕を包んだ。


部屋は僕等が出ていったままだ。

机も布団の折り方も。

涼の帰った形跡はない。

涼の仕事の特性上、3日ぐらいあけることはあるだろうが、

携帯も繋がらないのは異常だ。


「ごめん。ごめん。優介だ。」

「あっ。うん。どうしたの大丈夫。?」


「ああ。平気だよ。」

「そう。」


「ところで、伊澤さんの連絡先わかんないかな?」

「えっ。私は知らないけど、お店のボーイさんならわかるかも。

あの時もすぐ電話してたし。」


「そうか。悪いんだけど連絡先聞いてくれないかな?」

「別にいいけど・・。」


「悪い急ぎなんだ。頼む。」

「わかった。すぐ電話する。」


渋谷恵理から電話はすぐ来た。

僕は教えられた番号にすぐにかけた。


トゥルルル トゥルルル・・・

「はい。」

野太い声。

隆二さんだ。

「隆二さん?俺です。目黒です。」


「あっ?あああの目黒君?」

「ええ。今涼のアパートなんですけど。」


「えっ?涼の?」

「ええ。」


少し様子がおかしい。


「涼のやつがあれから行方不明なんだ。

何処行ったかしらねーか?」

信じられない言葉を聞いた。

「隆二さんも知らないんすか?」


「なんだ。お前も知らないのか。

あの日あれからどうした?」

「ちょっと、待ってください。隆二さん今何処ですか?

これから行きます。」

「いや。そんなら、俺がそっち向かうから、

アパートで待っててくれ。すぐ行く。

10分ぐらいだ。」

「分かりました。」


涼は何処に行ったのか?

僕はよからぬことを考えないようにしていた。

やはり荒木組がかかわっているのだろうか?

テーブルの上には、千恵が手当てをしたシップのごみが残っていた。



丁度十分経つと、隆二さんのY32がアパートの下に着いた。


「おお。どうなってんだ?」

「あっ。この前はどうも。」

僕は軽く挨拶をすると、早速本題に入った。

「涼がいないんです。」


「そうなんだよな。俺はてっきり目黒君達と一緒かと思っていたんだが・・」

「俺は隆二さんと仕事で一緒かと・・。」


「このところ仕事どころじゃないんだ。」

「ええ。そうみたいですね。聞きました。ジュエリーの件。」


「そうか。・・・思っていたより、やつら根が深い。」

「隆二さんは大丈夫なんですか?」


「狙われているが、大丈夫だ。それより何で上尾に?」

「はい。バイクを置いていったので、取りに来たんです。」

「ああ。表のSRか。」

「ええ。」


「あの後、涼とはいつ別れたんだ?」

「それが、目がさめるともう居なかったんです。」


「何だと。あの怪我で?」

「ええ、今考えるとおかしいんですが、

てっきり仕事かと思っていて・・・・・。」


「と言うことは、あの夜からいねーんだな。」

「どうもそうらしいです。ここにも帰った形跡がないですし・・。」


僕達二人は涼のアパートの狭いキッチンで立ち尽くした。

やはり涼はやつらにさらわれた可能性が高い。


「あのお譲ちゃんの次は涼か。

まったく世話をかけるやつだ。」

隆二さんは冗談めかして言った。


「これからどうします。?」

「うーん。とりあえず、目黒君は地元帰れ。

涼のことは俺が何とかするから。」

「そんな。もとはといえば、俺がまいた種です。俺も一緒に・・・・。」

「まあ、まて。俺自身もだいぶ目をつけられてるし、

自体は結構深刻だ。お前がどうこうできるもんだいじゃない。」

隆二さんの目は本気だった。

その目の奥に決意のようなものが見えた。


「でも、このまま帰るわけには行きません。

俺も絶対ついていきます。」

僕は引かなかった。

当然だ。

親友が僕のせいで、ヤクザに拉致られたかも知れないのに、

黙って帰るわけには行かない。


「わかったよ。でもある程度覚悟しろよ。」

「ええ。」

唾をごくりと飲み込む。


隆二さんの車の助手席に乗り込んで、

僕は隆二さんの言ったある程度の度合いについて考えていた。

一体どういうつもりだろうか。

しかし、逆にいうと死ぬことはないということか。


「隆二さん何か思い当たるふしがあるのですか?」

僕は聞いた。

「ない。」


「じゃあ何か考えてることが、あるんですね。」

「それもない。」


「どうするつもりなんですか?何処に向かってるんです。」

「雲がくれも限界だ。涼まで拉致られたとなりゃ、正面突破しかねーな。」


「まさか。」

「ああ、組事務所に殴り込みだ。」


「・・・・・・。」


車は大宮駅を過ぎ、新都心近くの雑居ビルの前で停まる。

暴対法の影響で、流石に看板は出ていないが、

いかにもそれと分かりやすい感じがした。


階段を二階に上がり、鉄製のドアを開く。


中はソファーと、業務用の事務机が置かれただけの、殺風景な部屋だった。

奥はパーテーションで区切れれていたが、

奥の部屋につながる扉が2つだけ見えた。


若い衆が4人。

にらみを聞かせて僕等を注視した。

「!」

小太りのセーターの男が近づいてくる。

パンチパーマで猫が書いてあるせーたーを着ている。

どういうセンスだ。


「誰だお前?間違えたんじゃねーのか?」

「斎藤はいるか?」


「へっ?」

「斎藤はここに居るのか?」

隆二さんはターミネーターのように話した。


意表をつかれたのかパンチの男はきょろきょろしだす。

その様子を見て、ソファーに足を投げ出して座っていた男が、

その姿勢のまま話す。

「斎藤さんの知り合いかなんかですか?

あの人ならもうここには居ませんよ。」


「なんだと?何処に行った?」

「さあ、なんか上の方で話がついたみたいなんすけど、

俺等には・・・。何かあったんすかね。両腕つってましたけど。」


「そうか。邪魔したな。」

「ところで、兄さん達はどちらで、?」


「太田組の者だ。」

「ああ、そうですか。わざわざどうも。それは失礼しました。

でも、太田組の方が斎藤さんを訪ねて来るなんて、やっぱり何かあったんですね。」


「いや、ちょっとな。」

それだけ言うと隆二さんは事務所を後にした。

本物の極道相手にもヤクザに間違えられるとは。

やはり、隆二さんのオーラはすごい。


「これじゃあ。探しようがないな。」

「ええ。」


車に戻ると隆二さんはハンドルにうなだれて言った。

あたりはもう夕方になってきている。

時計は4時半をさしていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://ncode.syosetu.com/n3371a/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ