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切り裂き魔〜切り裂き魔の噂〜


リディアが出てこない…(笑)




バーの中では様々な人たちが酒を飲んでいた。

酔って床に倒れている者や机の上に立って歌っている者。


リディア達はカウンターの席に座り、店の中をぐるっと観察すると、店のオーナーらしき人が喋りかけてきた


「いらっしゃい、ご注文は?」


「私はアルコールが少ないカクテルでこの少年にはオレンジジュースを」

 

やはりバーに未成年の少年が来ることは珍しいらしく、リディアの事を珍しそうな目で見るとドリンクを作り出した


「ほらよ、兄ちゃんあんまりガキをこんな所に連れてくんなよ」


「おとなしく宿で待ってるように言ったんですけどね。どうしても付いてくるって聞かないんですよ」



あからさまな子ども扱いをしてくる態度にむかついたリディアは2人の会話に入り込む。  



「子供って馬鹿にすんな!」


「なんだと!?ガキ、お前いくつだ?」


「15歳だ」


「15!?嘘つくな。11くらいだろ」


リディアはその言葉に固まった

確かに見た目は幼くいつも本当の年齢より幼く見られていたが、4歳も下に見られた事は初めてでショックを隠しきれない。

そんなリディアを見たアルフレッドは急いでフォローをするがリディアはまったく聞いていなかった。


「あんまりいじめないであげてください。彼は童顔なのを気にしてるんです」


「そうなのか?男ならそんな事でくよくよすんな」



リディアはつーんとそっぽを向いてジュースをいっきに飲み干す。



「それより、このお店のオーナーはあなたですか?」


「ああ、俺だぜ」


「私達は旅人なのですが、さっき恐ろしい噂話を聞きました。・・・・なんでも”切り裂き魔”がでるんだとか」



亭主の顔がいっきに青ざめグラスを拭く手が止まり、さっきまでの声とは違い、小さく震えた声で喋りだす 


「お前達も気をつけた方がいい、その噂は本当だ。街では何人もの女が殺されている」



「そうなんですか・・・・騎士達は何をしてるんでしょうね」


この街で騎士がパトロールをしている所を見たこと.がない。”切り裂き魔”がでたというのに何の処置もしていない騎士達をアルフレッドは不思議に思っていた。

すると亭主は口を閉じて黙りだした。それを見たアルフレッドは確信する。


(やはり・・・何か言えない事があるのか・・・この亭主なにか知っているな)


探るように見る視線に耐えかねた亭主はため息をつく。


「あんたらは旅人だから知らないと思うが、もう1つ噂があるんだ。この街の奥に大きな屋敷があるんだが、それは領主の屋敷なんだ。そこの息子が”切り裂き魔”なんじゃないかって」


「・・・・領主の息子が?」


「ああ、だから騎士達はなにもしないし出来ないんじゃないかって。犯行を目撃した奴が言ってたんだ、顔がそっくりだったってな」


アルフレッドは顎に手を当てて考え込む仕草をすると、リディの肩を揺さぶる。それでも、そっぽを向いているリディアの腕をつかみ椅子から立ち上がろうとした時、誰かがアルフレッドの隣に豪快に座りこむ。


「あんたら旅の者なんだってな!話は聞こえたぜ」


顔を真っ赤にしながら片手には酒が注がれたジョッキを持つ男が興味津々にアルフレッドとリディアの顔をのぞきこむ。


「おめぇら"切り裂き魔"に興味があんのか!?」



大声をだしながら酒を飲む男を無視して立ち上がろうとしたとき腕をつかまれる


「――――おれぁ詳しいぜ、"切り裂き魔"の事ならな」


一瞬目を見開いたアルフレッドの態度に気づいたのか、自慢げに鼻をならす男を亭主が睨み付ける。


「――アーロン、余計なことを言うな」


「余計な事!?はっ、あんちゃん達よく聞きな、"切り裂き魔"にはもう1つ噂があるんだ!"切り裂き魔"の招待はこの街に住んでる領地のメイドなんじゃないかってな」


「・・・メイドが?」


話に食いついてきたアルフレッドに満足したのか、話を邪魔してくる亭主を無視してアーロンは楽しそうに語りだす。


「あぁ、そうだ。なんでもそのメイドは領地の主の息子に恋をしたらしいんだが身分違いでな、その恋は叶うはずもなく息子は別の女性と恋に落ちた!それが気に入らなかったメイドが主の息子の恋人を殺したのが"切り裂き魔"の始まりだとよ!」


亭主は大きなため息をつく


「馬鹿らしい、そんなの根も葉もない噂だ」


「さあどうだかな!実際に殺されるのは女性ばかりだ、なんでかわかるか?!それはな、その息子が他の女と恋に落ちないためなんだとよ!殺された女達の容姿はどうだった?!みんな肌が白くブルーの瞳をしてなかったか?!その息子はな、そういう女が好みらしいんだ!だからメイドは息子好みの女達を殺しまわってる!」


「そんなのただの作り話だ!くだらねぇ」


「ガハハハッ!くだらないだと?そういや、お前の娘もあの屋敷で働いてたな?」



その言葉を聞いた亭主の動きが止まり、アーロンを鋭く睨み付ける。


「――何が言いたいんだ?」


「俺が言いたいのはこうゆう事さ、娘と連絡とってるか?たまには家に帰ってくるか?もしかしたらお前の娘が"切り裂き魔"かもしれねぇぜ!?」


頭に血が上った亭主は持っていたグラスを床に叩きつけアーロンの胸ぐらを掴みかかる。握りしめた拳を顔面めがけてつき出そうとしたが、それをアルフレッドに止められ、邪魔をするな!と叫ぼうと周りを睨み付けようとしたとき、幼い少年が目に写った。

目には大量の涙をため、不安そうにこちらをみる少年が。

亭主はすぐに冷静になり殴りたい衝動を噛み締め、怒りに体を震わせながら胸ぐらを掴んでいた腕を解く。


「――ふざけるなよ、俺の娘を侮辱するな!」


アーロンはおもしろそうにニヤニヤしながら言い返そうとしたが、それよりも早くアルフレッドが口を開く。


「噂で他人の娘を疑うとは、あまりよい事ではありませんよ。まぁ、あなたの噂が本当だとしたら・・・の話ですがね」


「はッ。俺が噂を作ったとでもいいてぇのか?」


「いえ、そういう訳では。では我々はこれで失礼させていただきます」


カウンターにお金を置いて店から出て行こうとする2人に亭主は忠告をした


「あんまりこの街に長居しない方がいい。襲われるのは女だけでも気をつけろよ」


「心配ありがとうございます」



「俺の話が聞きたかったらいつでも聞きにこいよ!」



アーロンの言葉を無視してアルフレッドは亭主にだけ微笑んで挨拶すると店から出て行った。





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