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受験前日に異世界召喚されたけど、3日待つと浪人するので5分で魔王を処理した話

作者: 鱈場蟹
掲載日:2026/04/06

俺は高校三年生のタクマ。

明日は第一志望の入試だ。


人生を左右する日を前にして、俺は柄にもなく緊張していた。


──そのはずだった。


気がついたら、知らない場所に立っていた。


「……は?」


石造りの広間。無駄に広い。天井が高い。

目の前には、いかにも“王様です”みたいな格好の男。


いや、待て。


「ここどこですか」


「異世界だ」


即答だった。


「君には我々の世界を救ってもらいたい」


「いや今それどころじゃないんですけど」


思わず食い気味になる。

こっちは明日試験なんだぞ。


「この世界では一年に一度、魔王が現れる」


王は俺の話を完全に無視して続ける。


「だが安心したまえ。魔法の発展により、ここ数年は討伐は容易だ。君にも魔法を与える。怪我の心配はない」


「……じゃあ別に俺いらなくないですか?」


「正直に言おう。面倒になった」


帰れ。


いやほんと帰してくれ。


「あとどれくらいで魔王出るんですか」


「一時間後だ」


最悪だ。


三日で倒せ?無理だろ。

三日あれば試験は終わってる。つまり──浪人確定。


頭が真っ白になる。


でも、ぼーっとしてても状況は変わらない。


「……情報ください」


「ほう?」


「出現場所、能力、倒し方。全部」


「出現場所は毎年同じ。そこへはワープできる。姿は人型。剣を魔力で生成して戦う」


「防御は?」


「魔力がある限り、他者の魔法を弾く」


魔法無効みたいなもんか。


「倒し方は?」


「魔力を枯渇させることだ。魔法を弾くのには魔力がいる。攻撃し続ければいずれは尽きる」


「……正面突破前提ですね」


「まあな」


時間を見る。もう30分もない。


普通に戦ったらどう考えても間に合わない。

そもそも魔法とか今から覚えてどうにかなるわけがない。


──なら。


「一ついいですか」


「なんだ」


「魔王が出てくる“位置”って、完全に固定ですよね」


「固定だが?」


「じゃあそこに、デカい物を出せますか」


王は眉をひそめた。


「どの程度だ」


「一辺100メートルくらいの、めちゃくちゃ硬い立方体」


「……可能ではあるが」


「それ、出現の瞬間に重ねられます?」


「できるぞ」


「じゃあそれでいきましょう」



それから30分後。


空気が震えた。


「来るぞ!」


次の瞬間──


“何か”が出現した、らしい。


俺には見えなかった。


なぜなら同時に、用意していた立方体がそこに現れたからだ。


鈍い音が響く。


中で何かが動いている気配。


「閉じ込めましたね」


「……ああ」


「魔王は魔法を弾く。でも、魔王“以外”には効くはずです」


つまり箱ごと動かせる。


「これ、そのまま海の底に沈めてください」


「窒息狙いか」


「というか、魔力切れ待ちです」


王は頷いた。



五分後。


「魔王の消滅を確認しました!」


兵士が駆け込んでくる。


「記録は……五分十秒!」


は?


そんなもん?


もっとかかると思ってた。


「歴代最速だ……」


王が呆然としている。


俺はそれどころじゃない。


「……あの」


「なんだ」


「なんで今まで誰もこれやらなかったんですか」


こんな単純な方法。


少し考えれば思いつくはずだ。


王は、妙に間を置いてから言った。


「それはな」


嫌な予感がする。


「これは試験だからだ」


「……は?」


視界が歪んだ。


気づけば、教室。


机と椅子。


そして目の前には、さっきの王と同じ顔をした試験監督。


「そうだ、あの世界は近年導入された新試験だ。仮想空間で思考力を見る」


「……マジか」


「結果は」


一瞬、間があって。


「合格だ」


全身の力が抜けた。


「……よっしゃああああ!」


思わず立ち上がる。


浪人、回避。


人生、守った。


机の上に置かれた合格通知を握りしめて、俺は深く息を吐いた。


──魔王より、よっぽど怖かった。

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