100円で抱かれる女になる
「愛花先輩はお姉さまじゃなかったのカナー?」
カーテンを開けて、戻ってきた私達に綾坂が声をかけてきた。
小馬鹿にした表情がむかつく
「盗み聞きしたの?」
「盗み聞きとは人聞きが悪いなー間違いがないか監視していたのだヨー」
そう言いながら綾坂はタブレットの画面を見せてくる
画面にはさっきまで私と愛花先輩が座っていたソファーが映し出されていた。
「こんなの聞いてないんですけど!?」
「ねーねー私にも「全部捨ててついてきて」って言ってみてヨー、ナギっちのやっすいセリフ聞きた〜い」
「うっざ」
とんだ変態部活動だな
女の子と抱き合うだけじゃ飽き足らず盗撮までしてるなんて
愛花先輩が『お姉さま』じゃないと分かった今、こんな所とは一刻も早くオサラバしたい
「なんかごめんね」
「謝らないで下さい。むしろ勝手に勘違いして勝手に怒ってごめんなさい」
こんな私に謝罪するなんて愛花先輩はきっと良い人なんだろう
出会い方が違っていたら友達になれていたかもしれない
「気が向いたらまた来なさい」
「はい、失礼します。」
麗奈先輩の声を背に部室を後にする
『お姉さま』探しは振り出しに戻ったか……
改めて前途多難だなと思う
顔も分からない相手、抱きしめてみないと確認出来ない
ん?
抱きしめる?
私ははっとして元来た道を引き返した。
「失礼します!!」
ブッーーー!
ボランティア部に帰ってきた私を見るなり麗奈先輩は飲んでた紅茶を噴出した
この人面白い人なんじゃ?
「うわっまた来た」
綾坂の嫌味に反論する。
「麗奈先輩はまた来なさいって言ってた!」
「貴女、社交辞令って言葉を知らないの?」
「知ってますけど、今はそれどころじゃありません」
私はずかずかと中に入り、さっきまで座っていた席に座る
愛花先輩だけは嫌な顔せず、紅茶を再び用意してくれた。流石、元お姉さま
「どうしたの?忘れ物かな?」
「いいえ……」
出された紅茶を一気に飲み干してから宣言する
「入部します!!」
部室が静まり返る
口火を開いたのは綾坂だった
「どういう風の吹き回しか知らないけど、ナギっちは向いてないと思うなー」
綾坂の意見は聞いてない
コイツも一年だし入ってばかりの新入部員だろ
私は優しい愛花先輩の顔を見る
しかし、彼女の顔にも否定が浮かんでいた
「『禁忌』は覚えてる?奈凪ちゃんってさっき私を好きになっちゃったよね?そういう惚れやすい子は『禁忌』を犯しやすいと思うの」
「それは愛花先輩を『お姉さま』だと思ってたからです!『お姉さま』以外には惚れません!」
頑固な私に愛花先輩は目を逸らし、助けを求めるような視線で麗奈先輩を見た。
「面白いわね」
麗奈先輩の答えは綾坂と愛花先輩にとって意外だったようで二人は顔を見合わせた
そんな様子を面白がるように笑みを浮かべながら麗奈先輩は理由を話す。
「この子、この部を『いかがわしい』と言ったでしょ。そういう否定的な目線を持った人の方が向いていると思うの。ルックスも良いし」
「顔採用はんたーい!それにナギっちは好きな人がいるんですよ?これって『禁忌』に該当しませんカネー?」
「それだと好きな人がいる綾坂さんも『禁忌』になるけど良いのかしら?」
「う、それは…」
「好きな人がいるだけでは『禁忌』に当たらない、ちなみに綾坂さんも顔採用」
「そ、そうなんすか」
顔採用と言われた綾坂は露骨に表情を崩してにへらと笑った。
顔が良いなんて言われ慣れてると思ってたけど、割と照れてるな
……コイツの好きな人って愛花先輩じゃなくて麗奈先輩?
好きな人に褒められたからこんなに照れてるの?
反対者がいなくなったところで麗奈先輩がこっちを見て、びしっと指を指してくる。
失礼ですよ!
「夜凪奈凪」
「は、はい」
いきなりフルネームで呼ばれて面食らう
「貴女の『お姉さま』探しに私も興味があるわ。誘惑に耐えて探し当てて見なさい」
「はい!」
私はバイト初日のようなとても良い返事をした
それにしても麗奈先輩は侮れない、私の入部動機をすぐに見抜くとは……
そう、私は女の子に抱かれたいから入部するのではなく『お姉さま』を探すために入部するのだ
「そうと決まったらこれにサインと判をして」
麗奈先輩が引き出しから入部届を取り出して私に差し出す。
「判?ハンコは今持ってないんで明日で良いですか?」
「なにを言っているの?この部活で判はこれよ」
麗奈先輩は不敵に笑いながら胸ポケットから口紅を取り出した。
え、口紅?つまり口紅を付けて入部届にキスするってこと?
いかがわし過ぎないか?
意を決して口紅を受け取って塗る
これ……間接キスだ
ドキドキしていると思われるのは癪なので平常心を装って入部届にキスをした。
「「「ふふっ」」」
三人の笑い声が聞こえてきたので驚いて顔を上げる
綾坂と麗奈先輩、愛花元お姉様まで笑っている
もしかして……
「謀ったなぁッ!お前らぁ!!」
顔を真っ赤にしながら私は叫んだ
でも、本気では怒っていない、それどころか少し嬉しい気持ちになった。
今までこういう悪戯をしてくるような友達は綾坂くらいしか居なかったから……
この人たちと一緒なら『お姉さま』を探し当てられる気がしてきた。
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