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天使の輪っか

「じ、じゃあ早速」


私はソファーの上で隣に座る愛花お姉さまの肩にたとだとしい手付きで触れる。


「あ、ちょっと待ってね。先にこれ読んで欲しいな」


私の手から逃れた愛花お姉さまは一枚のラミネートされた紙を差し出してきた。

紙には『禁忌』と書かれている。


「『禁忌』?」

「ルールね、初めての『お嬢様』には全員これを読んで貰ってるんだよ」

「さっきから言ってる『お嬢様』って客のことですか?」

「そうだよ。メイド喫茶みたいだよね」


『お嬢様』の説明が終わったところで手渡された『禁忌』の内容を読んでみる。

要約するとこうだ


・部員の嫌がる所を触ってはいけない

・部員にキスしてはいけない

・部員とお嬢様は部室で連絡先を交換してはいけない

・部員とお嬢様は部室の外で恋人になってはいけない

・部員同士で恋人になってはいけない

・部員からキスしてはいけない

※以上の件を部員が破れば退部、お嬢様が破れば出禁になります。


一通り眼を通した私は愛花お姉さまに質問する


「嫌がる所って具体的にどこですか?」

「それ聞いちゃうんだ……うーん、私の場合は結構どこ触っても良いけど、部員によっては全部ダメな人もいるし人それぞれかな」


お姉さま?

どこ触っても良い??

思わず愛花お姉さまの太腿に視線を落としてしまう


「こら!スカートの中とかは流石にダメだよ」

「え!?あ、いや……」


そこまでは想像してなかったのだが、愛花お姉さまは私の視線をそんな風に解釈したらしい

お姉さま?

清純そうに見えるけど意外と遊んでたりしないよね?


脳が破壊される前に話題の方向転換を試みる。


「連絡先を交換するのもダメなんですね」

「うん、そこから恋愛関係に発展してしまうかもしれないからね。友達として部室の外なら良いよ」


連絡先は交換出来ないのに抱きしめることは出来る

固いのか緩いのか……


「どうして恋愛関係になるとダメなんですか?」

「疑似恋愛といっても恋人がいる相手を抱きしめるのは嫌だよね?愛している人がいるのに他の人を抱きしめるのも悪いし」


それは確かに……

自分の心が納得する。愛花お姉さまに私以外の恋人がいるなんて耐えられない


「じゃあ愛花お姉さまには恋人がいないってことですよね?」

「そうだね……でも、奈凪ちゃんと恋人になることもできないよ」


悪戯っぽく愛花お姉さまが笑う

可愛すぎるこの人

今すぐ抱きしめたくなったがもう一つだけ聞いておくことがある。


「『禁忌』を破ってキスすれば恋人になれますよね?」


愛花お姉さまの笑顔がふっと消える


「奈凪ちゃんからキスしたらダメだよ。奈凪ちゃんが出禁になるだけ」

「つまり愛花お姉さまからキスしてくれれば良いってことですよね?」

「ふふっ…奈凪ちゃんに私を落とせるかな?『禁忌』を犯して部活を退部になっても良いくらい夢中にさせてくれるの?」

「全部捨てて私についてきて下さい」

「……安い言葉だなぁ」

「っ!?」


顔に似合わない辛辣な発言に固まってしまったが、愛花先輩は私に両手を伸ばした。

カーテンの隙間から差し込む光に照らされた髪のハイライトが天使の輪っかに見える。


「もう時間がない。愛し合おうよ。来て」


心臓が一気に高鳴るが、不思議とえっちな気持ちになることはない

そうだ、これは神聖な儀式なんだ。私と『お姉さま』の再開の儀


愛花お姉さまを抱きしめる

強く、強く、もう離さないように

あの時の気持ちと感触が蘇って……




こねぇ




「……違う」

「えっ?」


耳元で囁いた私の低い声に愛花先輩がたじろぐ


「愛花先輩は『お姉さま』じゃない!」


愛花先輩の肩を押して離れさせる。


「あ、やっぱり違ったんだね」

「だましたんですか!?」

「そっちが勝手に勘違いしたんだよー」

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