100円で抱けるお姉さま
静まり返ってしまったので慌てて訂正する。
「あ、『抱く』っていうのはそういう意味じゃなくて、抱きしめるって意味でしてね……清純なお付き合いをしたいと思ってるわけでして、決して他の意味は無いんですよ」
モジモジする私を見て、麗奈先輩が綾坂に訪ねた。
「この子っていつもこんな感じなの?」
「いつもはこんな感じじゃないんですけど、お姉さま(笑)の前で舞い上がってるみたいですネー」
いけないいけない、自分と愛花お姉さまの世界に入り浸ってしまった。
部員の皆に引かれている。
「つまり、奈凪ちゃんは『お嬢様』になりたいのかな?」
「え?」
愛花お姉さまの発言の意味を測りかねている私の前に綾坂がすっと空き缶を置く
「愛花先輩を抱きたいならお金払ってネー」
「え?お金?」
ますます意味がわからない、どうして私と愛花お姉さまの間にお金が発生するんだ
「奈凪ちゃんはボランティア部の活動内容を知っているんじゃないの?だから「抱かせて下さい」って言ってきたのかと思ったけど……」
逆に愛花お姉さまが首を傾げて困った顔をした。
「はぁ~しょうがないわね」
見かねた麗奈先輩が口を挟む
「本当は新一年生に明かすのはまだ早いんだけど、特別に説明してあげる。この『ボランティア部』は表向きは慈善活動をする部活だけど、裏の活動があるの」
「裏の活動?特別な力で幽霊を祓っているとかですか?」
「漫画とアニメの見過ぎね」
麗奈先輩は軽くため息を付いた後に説明を続ける。
「裏の活動は女の子を癒してあげること……お茶しながらお喋りして最後に抱きしめてあげるの」
なんだそれ、裏の活動って先生は把握しているのか?『裏』って言うからには先生は把握してないよな
だいたいそんないかがわしい活動、学校が許可するワケないし
「つ、つまりボランティア部の活動内容は、女の子からお金を貰って抱かれること?ふ、不謹慎過ぎませんかね?」
「不謹慎とは結構な言い草ね」
私の発言にあからさまに不機嫌になった麗奈先輩が巻き髪を弄りながら答える。
「だ、だって不謹慎じゃないですか!ボランティアなのにお金取ってるし、えっちだし」
「貰ったお金は寄付しているし、えっちだと感じるのは貴女がいかがわしい人間だからよ」
「私がいかがわしい!?不特定多数の人と抱き合う方がいかがわしいと思うんですけど!」
険悪な雰囲気になった私と麗奈先輩の間に綾坂がしゅばっと割って入ってきた。
「まぁまぁまぁ、べつに強制はしてないからさ、それで……ナギっちは愛花先輩を抱くの?抱かないの?」
「抱くけど」
「抱くんかい」
即答した私に麗奈先輩がずっこける。
この人意外とノリが良いのかもしれない
「じゃあ入れて」
綾坂が空き缶を指さしたので、私は財布を取り出してありったけの札と小銭を入れた。
「まてまてまてっ!!!」
「足りないですか?足りないならPayPayでも払います!」
「電子決済は対応してないわ」
「じゃあSuicaで」
「交通系も使えない。とゆうかそういうハナシではなくてそもそも多すぎなのよ」
「多すぎ?」
麗奈先輩に多すぎと言われてしまったが、高校生のおこずかい程度の金額だ
大好きな『お姉さま』とまた抱き合えるくらいなら安い金額だと思うんだけど
「100円でいいよ」
「バカなのかなお姉さまは!?」
笑顔で人差し指を立てていた愛花お姉さまは私の剣幕に驚いて固まる。
「もっと自分を大事にして下さいよ!もう自分を傷つけないって富士山の山頂で約束したじゃないですか!」
「愛花先輩、ナギっちと登山したんですか?」
「うーん、今日出会ったと思うけどなぁ」
ぎゅうぎゅうになった空き缶から麗奈先輩がお金を取り出すと、後には100円玉一枚だけが残った。
「貴女の情緒はジェットコースターかなにかなの?さっきはいかがわしいと否定しておきながら、今は大金を払っていかがわしいことをしようとしている」
「抱きしめるだけですよね?いかがわしいことしようだなんて」
「そんな大金出されたら抱きしめる以上のことをすると思うでしょう」
うっ……それもそうか
愛花お姉さまにプレッシャーを与えてしまうよね
それにしても100円は安いと思うけど……
私が正気に戻ったのを確認した愛花お姉さまは、さっきのソファーがある部屋に入り、カーテンの隙間からぴょこっと顔だけだして誘ってきた。
「奈凪ちゃんおいで。私を抱きしめて」
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