姉妹のハイタッチ
帰宅。私よりも先に帰ってた姉を捕まえて自室に連行する。
麗奈先輩に聞くより姉に聞いた方が良い。もし私の勘違いだったら明日、麗奈先輩に聞けば済む
「な、奈凪ちゃんどうしたの?」
「あの先輩になにかした?」
「あの先輩って誰かな?」
「名前は知らない。金髪でピアスいっぱい付いてる人」
姉が固まる
また髪留めに触るかと思ったが触らなかった。
「……あの人は恐喝以外にも万引きとか余罪があったの。奈凪ちゃんの件だけが決め手じゃないわ」
恐喝か……
麗奈先輩は姉に私が襲われたとは言わないで恐喝されたって言ったみたいだ
そうすればボランティア部の活動が姉にバレる心配はない
「もう許してるから戻してあげてよ。私が原因で、その人の人生が変わっちゃうなんて耐えれない」
許してるのは本当
まだ納得出来ていないが、どうやら私は誘ってる顔をするらしい
襲われたのは私にも原因があるかもしれない
目の前の人にもそれが言える
「奈凪ちゃんは優しすぎるよ」
「優しくない、私が嫌な思いをしたくないだけ」
「お姉ちゃん、小さい時から色々な人を見てきたけど、世の中、奈凪ちゃんみたいに優しい人ばかりじゃないの。あの人はここで許されたら反省しない、むしろ今の内に罰を与えて更生させるべきだと思うわ」
「罰を与えるにしても重過ぎるよ。せめて停学じゃダメなの?」
「停学から戻ってきたら他の子に危害を与えるかもしれないよ?」
「その時は退学で良い」
罰を与える?
どのクチが言ってんだ?
姉妹間の『禁忌』を口に出しそうになったがぐっと堪え、代わりに私と同じアメジスト色の瞳をじっと見つめる。
やがて姉は観念したかのように息を吐いてから表情を和らげた。
「……分かった。退学を取り消して、停学にするね。本人が拒否したら無理だけどそれで良いかな?」
「うん、それでお願い」
「あとね……今度から何か嫌なことがあったらお姉ちゃんに教えて欲しいな」
「今回みたいに勝手なことしないなら良いよ」
「うん、勝手なことしない」
姉はそう言いながら髪留めに触った。
夕食後、姉と廊下ですれ違う
彼女は私に軽く会釈しながら通り過ぎようとしていた。
近所の人かよ!あーもう!!
「ねぇ」
姉の背中に話しかける
ビクっと肩を震わせてからゆっくりと振り向く彼女
なんだよその反応、私が今から怒るみたいじゃん
「な、なにかな?」
引きつった笑顔を浮かべてる姉
さっき連行した時もそんな顔してた
妹に向ける顔じゃない
やり過ぎだったけど、私の為に行動してくれたんだからそんな顔しなくて良い
「ちょっと手伝ってくれない?」
「手伝う?」
姉は首を傾げた。頭の上にハテナを浮かべている
「私は前の敵を倒すから後ろをお願い!」
「うん!」
手伝うというのはゲームの話
私達姉妹はゾンビを倒すゲームで協力プレイをしている
べつに本気で手伝って貰いたかったわけじゃない
姉との仲を修復するきっかけが欲しかったんだ
今回、私の為に動いてくれたお礼も兼ねてる。
「奈凪ちゃん、弾は大丈夫?」
「大丈夫だよ」
ゲームまで世話焼くな!
姉はこのゲームをプレイするのは初めてのはずなのに私より良いスコアを取っている。これだから天才は!
「やった!」
姉の銃撃を受けて巨大なゾンビの頭が弾ける
私は既にライフを使い切っていたので応援に回っていた。
「イエーイ!」
「い、いえーい」
私はすっと腕をあげて手のひらを姉に向ける。
ハイタッチの意図を読み取った彼女は躊躇したが、恐る恐る合わせてくれた
ぽすっと間が抜ける音が聞こえてきそうなハイタッチ、でも私達姉妹にとっては大きな一歩だ
姉の笑顔はさっきより自然になっている。
少しずつで良い、ゆっくりと私達の壁を取り払っていこう
ふと窓の外を見ると雨は止んでいた。明日はきっと晴れだ




