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私と『お姉さま』の出会い

県大会への切符をかけた団体戦の大将戦

私は大将としてコートの上で戦っていた。

何度も戦ってきた相手だ、通算成績は私が圧倒的に勝ち越している

普通にやれば絶対に負けない相手


私が放ったライン際のボールを相手が横っ飛びで拾う、ボールはぽーんと緩い弧を描いてこっちに飛んできた。

軽くドロップして相手のコートに落とす。

歓声が沸く、私に対してじゃない、相手の横っ飛びのプレイに対してだ。


「おねえちゃんまけるなー!」


相手高の声援に混じった幼い声の主をよせば良いのについ探してしまう

小学生くらいの幼い女の子が小さな拳を握りながら応援しているのを見つける。

その横には遺影を膝に置いたおばあさんが必死に数珠で拝んでいる。

いやいやいやいや家族総出で来てんの!?中学生にまでなって恥ずかしくないの?

これじゃあ私が悪者みたいじゃん


私のサーブを相手が打ち返す。

帰って来たボールをバックハンドに持ち変えて思いっきり打つ

火が出るような打球を相手はなんとか拾ったが、脚がもつれて転んでしまった。ボールはさっきの再現のように緩い弧を描いて戻ってきた。

またドロップしようしたが、相手が立ち上がって前に出ようとするのが視界に入った。


どう考えても間に合わないのになんでそんなに頑張るんだろう?

次のプレーに支障が出るかもしれないので、ここはそのまま転がってた方が良い


そんなことを思いながら打つ体制に入ったが、耳障りな相手高の声援が聞こえてきて気が変わった。

悪者らしくお前の気持ちを折ってやる


パシンと音を立ててネットに当たったボールは私のコートの中に落ちた。

失敗した。ドロップの体制からスマッシュなんて慣れないことするべきじゃなかった。


相手高が沸き立つ、自分のチームメイトに視線を向けると、何人かは気まずそうに私から目を背けた。

べつにドンマイの一言が欲しかったわけじゃない

たまたま見ただけだ

そもそも応援で強くなるとかそういうのは漫画の中だけだから


苛立ちながら打ったサーブは大きく外れた

ここから私はおかしくなる


その後、優勢だった試合展開は互角になり、ついには劣勢になった。

そして……


私は負けた


最後はダブルフォルトという情けない終わり方だった。試合終了と同時に相手の観客がコートになだれ込んでくる

ワンカップ片手に顔真っ赤なおじさんまで居る。

係員が乱入者を制止する中、私と相手は握手した。相手がなにか告げてきたが耳に入らなかった。


「ごめん……」


自チームの元に帰ってきた私は皆に謝罪する。

どんな厳しい言葉でも受け入れる。そう思っていた

けれど、私の予想に反した言葉を皆はかけてきた。


「謝ることないって、やる気無いウチらがここまでこれたのは上出来だよ」

「勝ってもどうせ県大会じゃ一回戦負けじゃん」

「受験勉強出来る時間が増えてラッキーだし」


皆は私を励ます為に言ってくれているんだ

そう分かっている。分かっているけど、虚しい気持ちになった。みんなと私は向いている方向が違っていた。私は負けて良かったんだ、負けて良い努力をなんで三年間してきたんだろう……




チームメイトは心配してくれたけど一本遅い電車で帰ることにした

このまま慰められながら帰るのは嫌だ


一人の後輩が私に「一緒に居たいっす」と言ってくれたが、無理やり笑顔を作って「大丈夫だから」と言って付けっぱなしだったリストバンドを選別代わりに外して渡す。

後輩はまだ何か言いたそうだったから聞いてみると「タオルも欲しいっす」と言ってくる

バックからタオルを取り出して彼女に放り投げる

すると「ユニフォームも欲しいっす」と言ってくる

……コイツってもしかして


貧乏?


面倒になったので財布とスマホだけ抜いてバックごと渡す。

ラケットとシューズも渡しちゃったけど、もう遊びでもテニスはやらないからいいや

身軽になったからちょっと気は晴れた

この子なりの気の使い方なのかな?


最後に「髪留めも欲しいっす」と言ってきたので笑顔で蹴りを入れて追い払った。

べつに気は使ってなかったらしい




駅のホームのベンチに腰掛けて電車を待つ

一人になると、抑えていた気持ちが溢れてくる。

私は目を瞑った。涙なんて流したくない

泣いてしまったら今までの努力がより虚しくなるだけだから


どれくらい目を瞑っていただろう

隣に人が座ってきた気配がしたからびくっとして目を開く、チェック柄のスカートが目に入った。

この色と柄って姉と同じ進学校の高校生だよね

どうしてベンチは開いているのに、わざわざ私の隣に座るんだろう

そう疑問に思っていると突然視界が闇に染まった。


「えっ?」


目を瞑ったからじゃない

抱きしめられているんだ

隣の人に……


高校生は優しく私の髪を撫でる

その瞬間、抑えきれなくなった、気持ちが決壊した。


「うわぁぁぁっ!!」


大声で私は嗚咽する

その間、高校生はずっと私を撫でてくれていた

彼女は無言だった。でもそれが心地よかった。




汽笛の音が聴こえてきた。

高校生が私からゆっくり離れる

きっとこの電車に乗るんだ

離れる途中で首の赤いリボンが視界に入った


「ありがとうございます」


泣き腫らした酷い顔を見せないように俯きながらお礼を言う

彼女は最後に私の頭をぽんぽんしてから電車に乗って行った。後には彼女の仄かな香水の香りだけが残される。彼女が去った後、私は感触を逃さないように自分の身体を抱きしめていた。


これが私と『お姉さま』の出会い

今思えば自分もこの電車に乗らないといけなかった

追いかけて気持ちを伝えるべきだった。

読んで頂き誠にありがとうございます。

感謝感激です!!


続きが気になると思いましたらブクマ、評価して頂けると幸いです。

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