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泡と消えた水着回

麗奈先輩を『お姉さま』と勘違いしてから一ヵ月

私は今日も部室で『お嬢様』に抱かれている。


今日の相手は少し影がある気弱そうな一年生の女の子

この子と疑似恋愛するのは初めてではない、一ヵ月前にここで出会ってそれから何回か指名されている。

この子は金髪ピアスの先輩と違って身体を無理に触ってきたりはしない


でも…この子は危険だ

経験は積んできているつもりだけど、この子相手だと毎回『禁忌』を犯しそうになる。


女の子は私の胸に埋めていた顔を離して色素が薄い瞳で見つめてきた。

言葉は発さない。ただ儚げな表情をしてるだけ


また髪を触りそうになったが、ぎゅっと堪える。

この前はキスする寸前までいってしまった。

もうそんな過ちを犯してはいけない


タイマーが鳴る

この瞬間から恋人から他人になる

女の子は最後に私の手を軽く握った後、長い黒髪を翻して去って行った。


彼女の寂しそうな顔は毎回印象に残る

そういえば一度も笑顔を見た時ないな

もし私がキスしたら笑ってくれるのかな?


「あの子、ちょっと危ないわね」


出てきた所で麗奈元お姉さまに話しかけられた。


「そうですか?変なところ触ってきたりしませんよ」

「そういう危ないじゃなくて、本気になりそうで怖いのよ」


『お嬢様』が部員に惚れるだけの一方通行なら『禁忌』に値しない

けれどもそれは部員にとっての弊害に成り得る。

過去にストーカー事件にまで発展したことがあるらしい

ボランティア部の部員は天秤が傾き過ぎないように上手く立ち回る必要があるのだ


パシリ2号(なぎ)が悪い」


珍しく部活に来ていた星七先輩が口を挟んだ

机の大部分を占領してメイクしてる。


「なんで私が悪いんですか?」

「アンタ、ソファに座ると誘ってる顔するよね?」

「え、そんなのしてないです」


なに言ってんだこの人は……

私は星七先輩みたいに『お嬢様』の前で猫かぶったりしてないし、ウインクしながら舌出したりもしてない


「奈凪ちゃんのテクニックかと思ってたけど違うの?」

「無自覚なら矯正なさい」


愛花先輩と麗奈先輩まで私が誘ってる顔をしてると思っていたらしい

そういえば金髪ピアスの先輩に「欲しがってる顔してる」って言われたっけ……


私って誘ってる顔してるの?

仮に私が誘い顔をしたとして効果あるのか?


「てか青リボンの一年で同級生なんだからあの子にナギっちが抱かれる必要ないじゃん」

「まぁ……そうなんだけどね」


綾坂の元も子もない発言に返答する。

確かに青リボンの一年生は赤リボンの『お姉さま』の可能性は無いのだから、私が抱かれる必要はないだろう。でも私なんかを気に入って何回も指名してくれているあの子を無下にすることも出来ない……って格好つけたが、ぶっちゃけると人生で初めて出来た自分のファンという存在が嬉しいのだ




次の『お嬢様』の指名は愛花先輩だった。

私達はタブレットで愛花先輩と『お嬢様』の様子を見ながら、邪魔しないように小声でお喋りする。


「出た!愛花先輩の必殺技!!」

「必殺技?」


『お嬢様』を膝枕する愛花先輩の様子がタブレットの画面に映し出されている。

二か月間この部活を体験して分かった。部長は麗奈先輩だが、エースは愛花先輩だ

『姉』しか出来ない麗奈先輩、『妹』しか出来ない妹ちゃんズの私と綾坂と違って愛花先輩はどちらも相手によって使い分けることが出来る。

星七先輩は滅多に来ないからレアモンスター枠


「暑っつ…ねぇ麗奈、この部屋にエアコン付けてくれない?」

「電気工事士の資格を持っていないので無理ですね」

「部活の予算で買ってって言ってんの」

「そんな予算ありません」

「麗奈のけち、じゃあパシリ1号と2号で扇いで」

「えーその辺、走ってくれば涼しくなりますヨー」

「余計暑くなるだろ、文句言わないでやれ」


パシリ1号の綾坂と一緒に星七先輩を下敷きで扇ぐ

命令されるのは気に食わないが、先輩はご褒美にスポンサーから貰った化粧品とかくれるからそれの為に頑張る。


「そういや麗奈先輩ってなんで星七先輩に敬語使ってるんですか?」

「綾坂のバカ!それ聞いちゃ駄目だろ」

「いやいや、ダブってないから」

「え、赤リボンしてるから麗奈先輩と愛花先輩と同じ、二年生ですよね?」

「私、三年だから」

「三年だと緑リボンのはずじゃ」

「緑って可愛くないから『お嬢様』と交換した。あっちも喜んでたから問題ない」


問題あるんですけど!

どっかに緑リボンの二年生が居ることになるじゃん

その人が『お姉さま』だったら困る


「てか、全然涼しくない。三年の大先輩なんだからもっと気合い入れろ」

「暑いんなら夏の合宿で海に行きません?」


綾坂が星七先輩を扇ぎながら発言した

さっきから微妙に先輩に下敷きが当たってる気がする


海か……幼い時に姉と手を繋いで海岸を歩いていたら、フナムシに遭遇して大泣きした覚えがある。あまり気乗りしないな

そもそもボランティア部に合宿なんてあるのか?


「合宿なんてないわよ」


にべもなく麗奈先輩が答える。やっぱり合宿なんてなかった

それでも綾坂は諦めない


「えー!麗奈先輩の別荘のペライベートビーチで遊びたい」


話が変わった。プライベートビーチなんてあるのか

海水浴場で水着になるのは嫌だけど、部員だけなら良いかも

浜辺で優雅にトロピカルジュースとか飲めちゃたりして……


「綾坂に一票」

「それ良い、動画のネタに使えそう」


日焼けを嫌がりそうだと思われた星七先輩も賛成してくれた。

動画には出演しないけど、これで票は過半数だ。水着回!視聴率鯉のぼりだ!!


「ないわよ」

「え?」

「プライベートビーチなんてないわよ」

「は?」


何言ってんだこの人、日常系アニメの金持ち枠だろ

コンビニで人数分アイス奢ってくれるキャラ


「だいたい私を何だと思ってるのよ」

「倉園財閥のお嬢様『倉園麗奈(くらぞのれいな)』だと」

「倉園財閥なんて聞いた時ないわ。私の家はただの中流家庭よ」

「「はぁ!?」」


私と綾坂が同時に叫ぶ

変な時だけ気が合うな


「じゃあなんで髪巻いてるんですか!?」

「中流家庭は髪巻いちゃいけないのかしら!?」

「楽しそうなところ悪いけど……」


カーテンから愛花先輩が顔だけ覗かせる

微笑んではいるが目は笑っていない

て、天使が怒ってる!


「もう少し静かにしてね」

「はい!」


私は久しぶりにバイト初日の返事をした。

おい、みんなも返事しろよ。私だけ騒いでたみたいになるだろ


愛花先輩には怒られてしまったが、悪い雰囲気ではない。前にギスギスした空気になってしまった時があるが、時間の経過によって薄れて、今は部活に行くのが楽しい


『お姉さま』探しの為に入った部だが、いつしか私は部活動自体を楽しむようになっていた。

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