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幽霊部員の正体

綾坂のせいですっかり遅くなってしまったので、小走りで部室に向かい、扉を開ける。


麗奈先輩と愛花先輩の姿は無かった。

その代わりに知らない人が座っている

胸元に赤リボンが付いているからニ年生らしい


スマホを弄っていた先輩は私を見るとさらっと微笑んでからハキハキ喋り出した。

アッシュカラーのハーフアップで、後ろを三つ編みでゆるく巻いている美人は、背景のキラキラしたエフェクトも相まってテレビの中から出て来た芸能人ように見えた。


「一年生?初めてかな?名簿に名前書いてから缶に100円入れてね」

「あの……」

「あー、緊張してるなー?大丈夫だよ。おねーさんが全部教えてあげるから」

「だ、大丈夫です」

「そっか、じゃあソファ行こっか?おねーさん久しぶりだから緊張しちゃうな。キミが可愛い子だからかな」

「なんか勘違いしてませんか?」

「勘違いなんかじゃないよ。キミは可愛い、おねーさんの妹にしたいくらい」

「そうじゃなくて、私、部員なんです」

「は?」


立ち上がっていた先輩は急に冷めた目つきになってどさっと椅子に座った。

キラキラエフェクトはいつの間にか消えている。


「……なら初めからそう言えよ。だっる」

「す、すいません、あと姉は間に合ってます」

「営業トークだっつーの」


先輩に睨まれる

そうだよね。可愛いっていうのも営業トークだよね


「てか誰?こういう時って後輩から名乗るモンじゃないの?」

「ひっ、すみません、夜凪奈凪(よなぎなぎ)です」

「ふーん」


それっきり先輩は私に興味を無くしたようでスマホ弄りに戻った。

いや、先輩も名乗ってよ!

この人、噂に聞いてたボランティア部の幽霊部員だよね?


このまま立ってるのもなんなので、恐る恐るいつもの自分の席に座る。

麗奈先輩と愛花先輩、早く来ないかなぁ


「喉乾いた」

「こ、紅茶淹れますね」

「ここの紅茶、美味しくないから嫌」


そう言ってから先輩は私にお札を渡してきた。


「食堂の奥から二番目の自販機で水買ってきて、アンタのも買って良いから」

「ありがとうございます」


パシリに使われるのは気に食わなかったが、あのままあそこに居るのも気まずいので素直に従う

にしてもボランティア部で上下関係を振りかざす人がいるとは思わなかったよ。

私の分も奢ってくれたから悪い人ではないんだろうけど……





「星七お姉さま、もっと強く抱きしめて下さい」

「これ以上抱きしめたら壊れちゃうかもよ?」

「壊れても良い!むしろ壊れたいんです!」

「壊れちゃダメだよ。おねーさんはキミを大事にしたい」

「星七お姉さま……」


部室に戻ってきたら先輩は接客中だった。

買ってきたミネラルウォーターを机の上に置いて、自分のコーラを飲む


先輩の名前って星七(星七)って言うのか……

タブレットに映っている星七先輩の顔を見ると、以前どこかで見た気がしてきた。


記憶を辿っていると、星七先輩が『お嬢様』を見送ってからこっちにやって来た。


「制服がシワになるだろ、思いっきりぎゅうぎゅうしてきやがって……」

「先輩、これ」


ミネラルウォーターとお釣りを渡そうとすると、星七先輩はミネラルウォーターだけ受け取った。


「ありがと、パシリ2号。お釣りは取っといて」

「え、悪いです」

「親の金とかじゃなくて私が不労所得で得た金だから気にしないで」

「不老長寿?」

「……よくこの高校入れたな」


不老長寿の秘訣は後で聞くとして、私は星七先輩にどうしても聞いてみたいことがあった。


「先輩って駅で泣いてる女の子を見かけて抱きしめたことありますか?」

「突然なに言ってんの?」

「……答えて下さい」

「なんかパシリ2号生意気」

「生意気でも良いんで答えて下さい」

「気分が良かった時にやったことはあるけど……」


やったことあるんだ

絶対やらないタイプかと思ったけど、やったなら話が違ってくる

『お姉さま』かもしれない


私は星七お姉さまから貰ったばかりの小銭から100円を取って缶に入れる。

チャリンという音が部室に響いた。


「……どういうつもり?」

「抱かせて下さい」

「奈凪ちゃんはおねーさんのこと好きになっちゃったのかな?」

「それ止めて下さい、素のままでいいです」


星七先輩は何故か目を逸らしてから俯いてしまった。その隙に立ち上がって距離を詰めて、先輩の肩を掴む


「私の本性知っても抱きたいと思ってくれるの?」

「はい、先輩がどんな人間でも抱きたいです」

「……パシリ2号のくせに生意気」


口では文句を言っていたが、私がソファに向かうと星七先輩もついて来てくれた。


カーテンを開け、ソファに座ってから紅茶のポットを持ってくるのを忘れたことに気づく

まぁいいや、目的は抱くことだし


「ま、待って」


抱きしめようとすると、星七先輩に手で制された。


「どうしました?」

「……私、こういうの初めてなんだけど」

「そんなわけないでしょ」


ついさっき『お嬢様』と抱き合ってたじゃん

ボランティア部の部員である以上、そんな嘘は通じない


「得にならないことするの初めてって言ってんの」


得?

そもそもボランティア部で『お嬢様』に抱かれても、お金は寄付してるから得にはならないと思うのだが……


「私と『お嬢様』どっちに抱かれても得にはならないですよ」

「『お嬢様』に抱かれたり、外で女の子を抱きしめるのはフォロワー増えるから得だけど、部員に抱かれてもほとんどフォロワー増えないから労力考えると愛想振り撒く必要ないじゃん」


フォロワー?

エックスとかSNSのことを言ってるんだろうか?

私が考え込むと、星七お姉さまは驚いた顔をした。


「……アンタもしかして私のこと知らないの?」


そう言って星七先輩はスマホを取り出して画面を見せてきた。


天宮星七(あまみやせな)@彼女募集中!』


SNSのプロフィールを見て、星七先輩の正体が分かった。先輩は現役女子高生の美容とファッション系のインフルエンサーで、恋愛対象が女性だということを公言していて界隈では熱狂的なファンも居るらしい


「あっ、見たことあります。この人だったんですか」

「今気づいたんかい」


テレビに出てるアイドルとかだったらもうちょいテンション上がるけど、インフルエンサーかぁ……


「……ということは私の正体知らないで、抱きたいって思ったってこと?」

「そうですね。そういう気持ちにフォロワー数とか関係ないじゃないですか」

「……それはそうかも」


私の言ったことは本心だ

星七先輩を『お姉さま』だと思ったから抱きたいと思ったわけで、人気インフルエンサーだから抱きたいとは思わない、これは相手がアイドルでも同じ


会話が途切れ、星七先輩はスマホをポケットにしまって、両手を膝の上に置いた。


「もう少し待って、マジでこういうの初めてだから緊張してきた」




「あ、もういいっす」




「は?」


星七先輩に感じた既視感の正体が分かった。

先輩はインフルエンサーだからどこかで見かけた気がしたんだ

そもそも『お姉さま』の顔が分からないんだから既視感があるのはおかしい

結論、星七先輩は『お姉さま』ではない


「なんで急に冷めてんの?」

「星七先輩が『お姉さま』じゃないからです」

「意味分かんない」


ソファに置いてあったクッションでバシバシぶん叩かれる

終わったかと思ったら星七先輩にブラウスを捕まれて思いっきり首筋を噛まれた。


「痛った」

「パシリ2号のバカ!帰る!!」


止める間もなく星七先輩は帰ってしまった。

こっちも意味分からないんですけど。どこも触ってないのになんで怒ってんの……


少し広くなったソファーで佇む

愛花先輩に連絡してみると、「ごめん、麗奈と用事があるから遅くなるね」と返ってきた。


入部早々ワンオペとは中々ハードですな

読んで頂き誠にありがとうございます。

感謝感激です!!


続きが気になると思いましたらブクマ、評価して頂けると幸いです。

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