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【超短編小説】今夜はEat Meat

掲載日:2025/12/20

 どうにも遅々として進まない渋滞にハマっていた梟谷犬男ふくろうだに いぬおが、ハンドルを机にして食べ終えた弁当のガラを窓から投げ捨てると、息子が見咎めて

「お父さん、それは良くないよ」

 と至極真っ当な苦言を呈した。

 しかし梟谷犬男はミニバンのパワーウィンドウを閉めながら「いいんだよアレで」と言った。何が良いのかはパワーウィンドウを閉めながら考えることにした。


 息子は中央分離帯に落ちた弁当を見ながら

「お父さん、やっぱりダメだと思う」

 と言った。

「いや、あれでいいんだ」

 梟谷犬男は煙草を咥えてから後ろを向いいて

「ああやっておくと、弁当の木が生えるんだよ」

 そう言ってからニヤリと笑ってジッポを擦った。シュ、と言う音がして火が付くと同時に芯に吹き付けた香水が広がるように柔らかい匂いを放つ。

 しかし煙草まで香水臭くなるんだよな、と思っていると

「じゃあおじいちゃんは何で焼いたの?」

 と息子が尋ねた。



 どうしてもこうしても、遺体なんつーのは仕方がないから焼くのだが……あぁ、そうか、こいつはお母さんと比べているんだなと思った梟谷犬男は「おじいちゃんは、あまり良いおじいちゃんじゃなかったろ」と後ろを見ずに言った。


 実際に梟谷犬男の父、梟谷鮫蔵は粗暴で厭な人間だった。

 口は悪いし、大酒飲みで酒癖も悪く、暴力的な人間だった。

 だから犬男は鮫蔵が死んだ時もあまり悲しくは無かったし、墓石の下に骨が投げ込まれた時には解放感で小躍りしそうになった。


 ルームミラーで息子を見ながら訊く。

「まぁお前にはたまにお小遣いくれてたけど、プロレスごっことか厭だったろ」

 すると息子はこくんと頷いた。

 何度止めても「男はこうするのだ」と言って息子をシザーズロックと言うのか蟹ばさみと言うのか、とにかく足で挟んで抵抗を迫っていた。

 俺もそうだった。ヘッドロックとかフェースロックとかをしては、早く抜け出せと迫るのだ。


「それにおじいちゃんが庭の木に成ったって仕方ないだろ」

「じゃあお母さんは?」

「そうだな、今年のお母さんは去年のより良い出来だと思うけど、どうかな」

「うーん、少し小ぶりだけど、でもまぁ一昨年のよりは好きかな」

「言うようになったなぁ、お前も。今年はお前も手伝うか?」

「うん」

 梟谷犬男がルームミラーで後ろを見ると、息子が母親に食らいついているのが見えた。

 渋滞に巻き込まれるだろうと、予備のお母さんを載せておいて正解だったと思った。

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