第4話 大きな壁の一番上のところから
大きな壁の一番上のところから
人の作ったものはどれも面白いからみんな大好き。(古いものがとくに好きだね)でも人と一緒にいるのはちょっとだけ苦手かな。もちろん、冒険の相棒の君のことはのぞいて、だけどね。
「本当にすごい景色だね」
大きな壁の一番上から見る景色はとってもすごかった。
青色の空がいつもよりもずっと近かったし(それでも空はとっても高かったけど)とっても遠くまで黄緑色の平原と緑色の森と小さく見えるまだ雪の残っている白い山々が見えた。
それに半島の横に広がっている海もちょっとだけ見える。
大きな壁の上に吹いている風は、大地の上にいるときよりも寒くて強かった。
思わず感激してしまって、ぼくは目をきらきらとさせていた。
ファニーファニーも感動していた。
はしゃいでいて、(きっと白いローブのしたの白い兎の耳はぴんと立っていたのだと思う)思わず顔を隠しているへんてこな仮面をとって大きな壁の上からの景色を見ようとしたりしていたので、慌ててぼくがファニーファニーの顔を隠したりした。
そんなぼくたちを見て、エリンは楽しそうに口元に手を当てながら笑っている。
本当なら壁の街を守る大きな壁の上にのぼることは大きな壁を守っている壁の街の兵士の人たち以外には禁止されていることだったのだけど、白い翼の聖騎士さまであるエリンが「これもなにかの縁ですから」と言って、ぼくとファニーファニーを大きな壁の上に案内してくれたのだった。
「壁の街にはどれくらいあるつもりなんですか?」
と風にその金色の三つ編みの髪をなびかせながらエリンはぼくに言った。
「一年くらいいるつもりなんです」
とぼくはエリンに言った。
するとエリンはとっても驚いた顔をした。
ぼくはエリンがたぶん驚くだろうなって思っていたから、そのままエリンに大切に荷物の中にしまってある冒険者ギルドからもらった『壁の街 滞在許可証 期間一年 冒険者ギルド発行』を見せた。(正式な冒険者ギルドの大きなはんこのおしてあるもの)
するとエリンはまたとっても驚いた顔をした。
普通、一年間も壁の街に滞在する許可のある滞在許可証なんてめったに発行されないからだ。
それもきっと『幸運の白い月兎であるファニーファニー』のおかげだろうとぼくは思った。(一年間も時間をかけて壁の街の地図をつくるという大きな依頼を冒険者になったばかりのぼくが受けることができたのも、ファニーファニーと一緒に『ある大きなとっても難しいギルドの依頼』を幸運なことに達成することができたからだった)
一緒にいる人に幸運をあたえると言われている伝説の種族白い月兎。
そんなファニーファニーと出会い、一緒に冒険をしていることで、ぼくには幸運があたえられているのかもしれないと思った。(ファニーファニーに聞くと、そんなことはないと思うよ、とくすくすと笑いながら言っていたけど。ファニーファニーはそんなことよりも、その日のお昼ご飯がなんなのか、そっちのほうが気になっていたみたいだった)




