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第2話 壁の街 大城壁の前で

 壁の街 大城壁の前で


 あの、一緒に笑いませんか? とってもいいお天気ですよ。


「『あの人』のことなんてもう知りません」

 子供みたいにほほを膨らませて、怒った顔をしてエリンは言った。

 あの人とはエリンの冒険の相棒の人のことだった。

 その人と些細なことで喧嘩をしてしまい、(エリンにとっては些細なことではないのだけど、あの人にとっては些細なことだったらしい)今はエリンは一人で冒険をしているのだと言った。

 それでエリンは一人で森に出かけて、そして迷子になってしまったみたいだった。

 いつもはエリンの言っているあの人が『エリンをいつも助けてくれる』みたいだったけど、あの人が今日はいなかったから、ぼくとファニーファニーがかわりにエリンと出会って迷子のエリンを壁の街まで連れて帰ることになったのだった。(ぼくとファニーファニーは壁の街の住人ではなくて、エリンは壁の街の住人だったから、なんだか本当ならあべこべのはずなんだけど、エリンは地図を持っていなくて、ぼくとファニーファニーは壁の街までの地図を持っていたのだった)

 エリンは本当に心のそこから怒っているのか、あの人の名前を絶対に言わなかったし、ぼくとファニーファニーにも教えてはくれなかった。

「あの人のことなんてどうでもいいんですよ。どうせ今も壁の街の大図書館で古い本でも読んでいるだけなんですから。一人で森に冒険に行った私のことなんて、忘れてしまっているんですよ。きっとそうに決まっています!」

 ほほを膨らませたままで、歩きながらそんなことをエリンは言った。

 エリンとぼくが壁の街までの道を歩いていると、その後ろではファニーファニーが水晶玉を覗き込みながら(古代の民族の工芸品みたいなへんてこな仮面にはちゃんと目のところに穴が空いていた)なんだか納得のいっていないような動きをしていた。(顔をななめに傾けたり、うーんと悩み込んだような体のポーズをしていた)

「どうしたの? ファニーファニー」

 とぼくは言った。

「占いがうまくできなかったから、どうしてだろうと思って水晶玉を見ていたんだよ」

 とエリンには聞こえないように、ぼくの耳元で囁くようにしてファニーファニーは言った。

「もともと占いなんてできないんだから、占いがうまくいかないのはあまり前だよ」

 とぼくはファニーファニーに言った。

 ファニーファニーのエリンの占いはうまくいかなかったらしい。

 ファニーファニーはわくわくしているエリンに「うーん。うまく『エリンの未来が見えません』。どうしてだろう? 占いはうまくいきませんでした」と正直にそんなことを言った。

 ぼくはもともと嘘の占いなのだから、てきとうにとまでは言わないけど、よくありそうなことを言って仕舞えばいいと思っていたから(実際にそんなことをファニーファニーは言うと思っていた。運命の人に出逢いますよとか。なにか良いものを拾いますよとか)占いがうまくいかないとファニーファニーが言って、なんだか変なところで真面目に嘘の占い師を演じているなと思ったりした。

 エリンはとってもがっかりしていた。(まるで氷菓子が売り切れだったときの小さな子供みたいだった)

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