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58 その誓いは永遠に

金色の光が消え、ゆっくりと崩れ落ちたレオニダスを、アイラはとっさに支えた。


「レオ! レオ、しっかりして!」


その目がゆっくりと開く。

けれど、そこに宿るのは――常世神と同じ、あの柔らかな金色。


「……アイラ? どうしてここに……?」


レオニダスが気まずそうに視線を逸らす。


「もしかして前の常世神から聞いた?オレ……常世神の仕事を引き継ぐことになった」


「聞いたわよ! なに勝手に決めてるのよ! 不死なのよ? どれだけつらいか、あなた分かってるの!?」


「分かってる。でも、それでもなりたかった。

アイラが寂しくなった時、困った時――支えられる存在でいたかったから」


そう言って、レオニダスはアイラの髪をそっと撫でた。


「常世神になったら、この塔から離れられないんだ。だから――ここからお前を見守ってる」


「おあいにくさま。私も前の常世神と“誓い”立ててるから。

『常世神のものになる』って、ちゃんと約束してるのよ」


「……はあ!? なんだそれ!? 初耳なんだが!」


「ふふん、今さらでしょ」


そう言って、アイラはこれまでの顛末をかいつまんで話す。



ーーー


「……それ、オレが誓いたててなかったら、俺の気持ちはなかったことになって、二度と会えなくなるルートじゃん」


「だって私、妖じゃない。魔女だけど人間なの、

ギャランだって、もう立派に独り立ちできるし。

彦や織も一緒に暮らせるように整えてあげたら、私なんて必要ないって思ったのよ」


「……喧嘩売ってる?」


「売ってないもん」


「誰のために常世神になったと思ってんの?」


「……」


「種族が違っても、オレの気持ちが消えると思った?

そんな浅い想いで不死になるわけないだろ?」


「……一時的なものかなって……。

私、時間が止まってるし、見た目は年下だけど、実際は年上だし…。妖の可愛い子と長く過ごしてたら、すぐ気持ちなんて……」


「それ以上言ったら、本気で怒るぞ」


レオニダスが低く、でも静かに睨む。

そしてそのまま、アイラを力強く抱きしめた。


「不死で、片思いでもいいって覚悟決めたのに……

妖の年齢で年上も年下もないだろ

その“前の常世神のものになる”ってお前の話の方が、よっぽど怖かった」


アイラは、ぎゅっとレオニダスにしがみついた。

声が震え、涙が頬を伝う。


「レオ……私、あなたが好き。

妖のかわいい人ともし一緒にいたらって、勝手に嫉妬して……冷たい態度とられると不安で……一緒にいたいし、たくさんキスして欲しいし、抱きしめて欲しいし」


しゃくりあげながら、それでも止まらず言葉を紡いだ。


「それに、それに……!本当は誓いであなたを離せなくしたいの。多分、他の人に比べて人に飢えちゃってるから、きっとたくさん束縛する」


両手でレオニダスの服をぎゅっと握り、涙をいっぱいに浮かべながら――


「じゃあ、束縛してみてよ」


レオニダスがアイラの額に自分の額を当てる



「私は、健やかなる時も、病める時も――

富める時も、貧しき時も――

あなたを愛し、敬い、慰め、助け、

その命ある限り、真心を尽くすことを誓います!」


一瞬、ふわっと金色の光が広がる


「よろしくね、レオ。

これからずっと、そばにいるから。あなたを選んだから」


レオニダスはふっと笑った。

「それ、自分を束縛してるだけじゃん。」


目尻をぬぐって、彼女の額にそっとキスを落とす。


「……はい、誓い、確かに受け取りました。愛する妻殿」


「妻?? だ、だれが妻よ! 今のなし!ただの告白!」


「だめ。神の契約、もう成立しました。取り消し無効です」


「ちょっ……! ずるい! 神権乱用っ!」


「んー? 何のことかな? もう一回、誓ってくれてもいいよ?」


「絶対に言わない!!」


神殿に響いたのは、涙と笑いが混ざった、幸せな声だった。


けれど、ふたりの間にはもう――

あの日までの、不確かで不安定な距離はなかった。


金色の光がそっと収まっていく中、アイラはレオニダスの手を強く握った。


「ずっと一緒よ、レオ。

たとえ神でも、不死でも、私の愛は変わらないから」


「うん。オレも、どんな時でも、お前のそばにいる。

この手を、絶対に離さない」


頬を寄せ合いながら、二人は静かに目を閉じた。

それは、たったひとつの愛の物語が、いま始まるという証だった。



終わり


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