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28 不器用師匠とこじらせ兄と見守る弟

《これまでのあらすじ》

黎凰の死を受け、アイラは仲間全員の武器を作り直すと決意。

素材を求め、レオニダス、ギャラン、彦、織とともに塔ダンジョンに挑むが――待ち受けていたのはヒュドラの大群とミミック地獄。


瀕死になりながらも戦い抜いた一行だったが、疲労困憊の中で、まさかの事故発生。

幻覚胞子の影響で、レオが思わずアイラに「好き」と告白――!


戦闘よりも、こっちのダメージがでかいかもしれない。


「レオがこんな状態だし、みんな疲れてるから、今日はここで野営ね」


アイラがさくっと魔法陣を展開する。

そこに野営用のアイテムをぽんぽん乗せると、ぐんぐん大きくなっていった。

陣はそのまま、部屋全体を包むドーム型の結界に変わる。


室内は一部屋で、気温一定、いつでも快適仕様。

簡素な台所と、小さな机もある。


「これ、いいですね! 師匠、オレこういうの作りたいです!」

ギャランが目を輝かせる。


「材料さえあればそんなに難しくないのよ。バーベラの時、在宅多かったでしょ? あの間に作っておいたの」

「絶対教えてくださいね! 戦いが終わったら!」

「はいはい。約束ね」


――終わる日が来たら、こんなのいらなくなるかも。


アイラはギャランの意欲を微笑ましく思いながら、ちらっとレオを見る。


散々みんなに揶揄われて、

「べ、べつにアイラのことなんて、どーも思ってないし!」

って言われたもんだから、思わず反射で


「私も対象外です」


とか言っちゃったし。

……あーあ、ベタすぎ。自分でも引くわ。


人に好かれるなんて慣れてないんだから、仕方ない。


頭をブンブン振って、気持ちを切り替える。

やることは山ほどある。


彦と織は、アイラが出したアイテムから、スライム牛のミルクとチーズを使ってシチュー作り。

魔法草のサラダも添えるつもりらしい。


ギャランが「サラダ洗います!」と張り切って魔法で水を出してる。

……お、成長してる。


「さっきは悪かったよ」

レオが、いつの間にか隣に座ってきた。

「こういうの、慣れてなくてさ……」


「べ、別に気にしてないし」

アイラも視線をそらす。

「私も、慣れてないし」


あーもう、自分で言ってて顔が熱い。

今時、経験値低すぎ。

妖界の、あのぷりんぷりんボディな女の子たちを思い出す。

レオニダスってこうみえて妖界のプリンス的立場なんだよね


きっとレオは、一時的な吊り橋効果で舞い上がってるだけ。


……たぶん、ね。


「これ、手袋はめて」

アイラは特製手袋を渡す。


「ミミックの粘液から、麻痺薬作るから。できたら、みんなの武器に塗って」

「了解。どこに塗れば効果出るかは、だいたいわかる」


「万が一、手についたら大変だから。私とギャランで解毒できるけど、薬も作っとくね」


作業に集中してると、さっきまでの変な気持ちがスッと消える。

こういう時が、一番落ち着く。


――ただ。


そんな私の横顔を、レオがじっと見つめてることには……

まったく気づいてなかった。


そして、さらにその後ろで。


ギャランと、彦と、織が――


どこか妙に楽しそうに、こっちを見てることにも。


……ぜんっぜん、気づいてなかった。



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