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23 さよならと新しい始まり【アイラ編】

賢者の塔に来て、何年目かの七夕が終わったその日。

彦と織が、揃って深刻そうな顔をして戻ってきた。


「彦様と探してみたのですが……」

織が口を開く。

「黎凰様は、間違いなくお亡くなりになられてます」


言われた瞬間、心臓が小さく跳ねた。


「ただ、黄泉の国は広いので今どちらにいらっしゃるのかは不明です」


……やっぱり。


ああ、これで確定なんだ。


このあいだまで、一緒に血まみれの家を掃除してたのに。

それがもう、全部、過去になった。


アイラは俯き、小さく息を吐く。


「……ごめん。大事な日に、余計なことお願いしてしまって……」


大切な日に、わざわざ探させてしまった。

切羽詰まってたのは、わたしだ。


「そんなことないです!」

織が慌ててかぶせる。

「せっかくなら、直接お会いして亡くなった経緯とか、聞けたらよかったんですが……」

彦が苦笑まじりに言う。


「……ありがとう。ほんとに……」


アイラは二人に頭を下げた。

胸の奥が、じんわり重い。


レオにも、ギャランにも……この話、ちゃんと伝えないと。


でも、二人とももう受け止めてるのかも


……たぶん。


(……受け止めきれてないの、私だけか)


窓の外を見る。


小さく、かすかに光る――灯霞の提灯の明かり。


(バーベラは……あの二人から妖力を切り離した時点で、咲き続ける力はない)


そのはずだ。

時間が経てば、自然に枯れる。


――ただ。


それを仕込んだのは誰か。

あんな魔法陣、使えるやつなんて限られてる


妖界の重鎮の誰か?

黎凰を良く思わない奴?


それとも――。


頭の奥に浮かぶ、あの名前。


闇夜神。

レオとギャランの父

昔、酒の席で黎凰が笑いながら言ってた。


「妖界で一番強い女だったからでしょ? ……契約、だってさ。妖界不可侵の代わりに私を、って。最悪よね」


でも今思うと――嫌な予感しかしない。

考えすぎか



誰が犯人であっても、強敵なことだけは間違いない


このままじゃいけない。


こんなふうに、また誰かを失いたくない。

あんな風に、守れないまま……後悔するのはもう、たくさんだ。


ふと、胸に隠し持っている杖を取り出した

 


「……ほんと、あんたのことも、いつまで使ってんだか」



握りしめると、表面がひやりと冷たかった。


師匠――あの憎たらしい男がくれた、弟子入り初日に渡された杖。

それを、こんなに長いこと持ち続けてるなんて。


 


「……いい加減、区切りつけなききゃね。みんなのも作り直そう」


 


ギャランには魔力伝導がいい。

妖力と魔力、どっちも通せる、相性のいい鉱石。

レオには、硬くて、雷の力を溜め込めるやつ。

オリハルコンか……魔獣骨もいいかも。


 


「そう、私のも……新しくしよう」


この塔なら、素材は山ほどある。

今度は、私の手で作ってやる。


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